木ずゑには残る錦もとまりけり庭にぞ秋の色はたちける
新古今集・冬
見るままに冬は来にけり鴨のゐる入江の汀薄氷しつ
時雨つつ四方の紅葉葉散はてて霰ぞ落つる庭の木かげに
荒れ暮す冬の空かなかき曇りみぞれ横ぎる風きほひつつ
葦鴨の払ひもあへぬ霜の上に砕けてかかる薄氷かな
霰ふる野路の笹原ふしわびてさらに都を夢にだに見ず
新古今集・冬
さむしろの夜半の衣手さえさえて初雪白し岡のべの松
群れて立つ空も雪げに冴えくれて氷の閨におしぞ鳴なる
身にしむは庭火のかげに冴えのぼる霜夜の星の明方の空
新勅撰集・雑歌
天つ風氷をわたる冬の夜の乙女の袖をみがく月影
新古今集・冬
日數ふる雪げにまさる炭竃のけぶりもさびし大原の里
わだの原深くや冬のなりぬらん氷ぞつなぐあまの釣船
をのづから長らへばなを幾度かおひを迎へて哀に思はん