是川縄文館再訪―入組三叉文土器を作る―

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 8月8日土曜日、昨年も訪れた「八戸市埋蔵文化財センター 是川縄文館」に妹と一緒に行きました。
 昨年は「夏休み縄文体験コーナー」で遮光器土偶をボランティアの指導で作りました(遮光器土偶を作る―是川縄文館―)。今年も、いろいろある体験メニューの中から、土器作りを事前に申し込みました。
 是川縄文館には、12時半ころ到着。すでに体験の用意はできているとのことで、早速部屋に行きました。指導してくださるのは、昨年も担当してくださったKさんでした。(一緒に行った妹も、私が土器を作っている間に、土製耳飾を2つ作っていました。)
 体験の土器作りにも、粘土の量で500g、1kg、1.5kgの3種があり、さらにそれぞれに数種類の土器があるのですが、私は500gを使って「入組三叉文土器」を作りました。全体の形は、外側に少しふわあっと広がった深鉢のような感じで、文様もそんなに複雑そうではなく、とてもシンプルでいい感じです。この土器は、是川中居遺跡(是川遺跡と言えば、ふつうはこの遺跡を指しているようです)出土で、縄文晩期初頭(約3000年前)のものだそうです。是川中居遺跡の出土品のうち963点が重要文化財で、この土器もその1つだそうです。
 体験の土器の大きさは、下の直径が6cmくらい、上の直径が10cmくらい、高さが11〜12cmくらいで、厚さは6mmくらいで薄めの感じです(実物の大きさはこれより一回り小さいそうです)。そして、土器の外面の下半分には縄文が、上半分には入組三叉文が付けられています。
 まず初めに、底の部分を作ります。直径6cm、高さ1cm余の台のようなものです。それから、長さ20cmくらい、太さ1.5cmくらいの粘土の棒を作り、それを輪状にして、初めの底の上に順に積み重ねてゆきます。そのさい、各粘土紐のつなぎ目をなくすために、外側は下から上に粘土をこするようにして引き上げ、内側では上から下にこするようにして粘土を引き下げます(これがけっこう難しかったです)。とくに、底の部分と最初の輪の部分は、焼いた時に離れてしまいやすいとのことで、丁寧にしなければなりません。(縄文土器の破片の断面を見ると、水平ではなく、外側から内側に斜めになっていることが多く、縄文の人たちもこのような手法を使っていたのではということです。)
 この作業を粘土を使い切るまでします(10回近くしたように思います)。そのさい、器全体の形を、下のほうはゆっくり外に広がり、上のほうは垂直に近くなるように整えます(これもけっこう難しい)。全体の形が整ったら、竹べらを使って、外面の中央に、5mmくらいの間隔で水平に2本線を入れます。私は、土器の上から内側面に沿って指を入れて上からの距離を確認しながら線を引きました。また、底から1.5cmくらいの所にも水平な線を引きます。
 それから、文様付けです。まず、中央の線の上に「入組三叉文「を2段付けます。「三叉」というのは、小学校の理科の授業とかで音の共鳴実験の時に使った音叉と同じような形です。この三叉のU字形の部分を互いに向い合わせにして中に入り込ませた形が「入組三叉文「です。直接文様を付けるのはとても無理そうなので、Kさんが一緒に作っていた見本品を使って少し練習をしました。そして、Kさんに各入組三叉文の描き始めの位置を教えてもらいながら、なんとかそれなりに描くことができました。その後は、下半分の縄文付けです。細い縄の端を、中央の線の下に合わせて転がし、それから、底のすぐ上に引いた線の上の所に合わせて転がします。この時に、細い縄を垂直に保ったまま転がすのが難しかったです。
 全体の形はシンプルで、一見簡単そうにも思っていましたが、やってみるとかなり難しかったです。それでもKさんに細かく説明してもらい、やり方を工夫したり、また、細かいひび割れなどはKさんに少し調整してもらったりしながら、なんとかそれなりに出来上がりました。うまく焼きあがって、届くのを楽しみにしています。
 
 2時過ぎには体験は終わりました。それから、夏季特別展「漆と縄文人」のギャラリートークが開かれていたので、途中からですが参加しました。漆はすでに9000年前から使われていたこと、最初は接着剤として使われ、後に塗料として使われるようになったこと(接着材としてはアスファルトがよく使われた)、現在の漆工技術のほとんどすべての工程に対応するものが縄文時代にすでに行われていたこと、漆を使った櫛には刻歯式(木などに櫛の歯を刻む)と結歯式(まず1本1本櫛の歯を作りそれを紐などで束ねる)があり、これまでは刻歯式のほうが古いと思われていたが、結歯式もかなり古いものが見つかっているとか、その他X線などを使った最新の研究で、漆の使われ方や顔料などについていろいろなことが分かってきている、というような話を聞きました。参加者は十数人のようでしたが、皆さん熱心で、ギャラリートーク後ちょっとお話をうかがおうかと思っていましたが、なかなか順が回ってきそうにありません。常設展を回って、昨年触ったいろいろな物を確認して、帰途に着きました。
 
 *半月ほどして、思っていたよりもずっと早く、是川縄文館より入組三叉文土器が届きました。厚さが薄かったので心配していましたが、なんとかうまく焼きあがっていました。写真はこちらです。
 以下、写真を撮ってくれた方のコメントです。
 まず、入組三叉文について、次のように書いてくださいました。
「土器に描かれている曲線は、音叉のような人工的な曲線というより、自然が描く自由な曲線です。昔、生け花を習っていた頃、度々花材として使用したミツマタを思い出しました。シンプルな曲線が印象的な花材でした。」
 そして、作品の印象として、
「穏やかな曲線が施され、素朴で柔らかな感じです。入組三叉と縄文のバランスがよく、落ち着いた雰囲気が出ています。」
 私などよりずっと優れた鑑賞眼のある方からのコメントによって、作品が本当に生きてくるような感じがします。ありがとうございました。
 
(2015年8月18日、2015年9月6日更新)