平成21年 9月
9月30日 はれ
今日は、僕たちの地区の初出荷である。何を?って・・・僕たちの地方で秋の「収穫」、「出荷」、と言えば言わずとしれたお米である。我が家は、まだ稲刈りをしていないけれど、御主人は毎年農協の倉庫へ米運びを頼まれるので今日は「初出荷」と言うことで張り切って出かけていった。そして、今日は「全国秋の交通安全運動」の最終日である。6時半から7時半頃まで交差点に立っていた御主人は朝ご飯を食べないで出かけなければならないのであった。何しろ集合時間が7時40分なのだから忙しいことこの上ない。でも、朝ご飯を食べない飼い犬の僕の立場に立って、飼い主が朝ご飯を食べないと言うことがどういう事なのかを知るのも飼い主としては勉強になることだろうと思う・・・
9月29日 くもり
今日は夕焼けがとても美しかったよ。御主人はカメラを持ってこなかったことを悔やんでいた。携帯電話は持ってきていたので、仕方なくそれで夕焼けの写真を撮った。だけど、「画像が低画質の携帯電話カメラなので、はぁぁ〜残念だ!!」と、言っているように僕には思えた。ところで、その散歩の途中で御主人は知り合いの人と出会ったので、しばし立ち話をした。僕は、よその人を交えた会話は出来ないのでおとなしくオスワリをして待っていたんだ。御主人との会話は別にしても人間の会話の中には入れない。けれど会話の内容はある程度わかる。何しろ人間の飼い犬になってほぼ10年だからね。まず、今年の稲の作柄のから始まり、僕のことが話題に出た。「大きい犬だから一日の食事量はたいしたものだろうなぁ」、「一日一食だから、それほどでもない。それに年寄り犬だから」と、言う御主人の言葉に「かちん!」と来て、知り合いとの会話が終わり、「さぁ、帰るぞ」と言われても、オスワリのまま動かなかった。たしかに僕は満9歳、数え年で言うなら10歳で、歳はそれなりにいってはいると自分自身では認識はしているけれど、飼い主からあからさまに言われると腹が立つ。と、言うわけで、しばしその場で抵抗を続けたのだけれど、お腹が空いてきたので、無理矢理散歩紐を引っ張る御主人に負けたような形で家路をたどったのであった。所詮、僕は飼い犬なのであった・・・・
9月28日 くもりのちあめ
雨が降った。御主人が小屋の中でお仕事をしながら「今日の夕方散歩は雨でいけないなぁ〜」と言った。僕は散歩に行けないことが腹立たしかったので、唸り声を上げながら自分の尻尾に噛みつこうとしてぐるぐると何度もお回りをした。「まぁまぁ、押さえて、押さえて」と僕をなだめる御主人の声も耳に入らず、そんなことを繰り返したのであった。そして、ついに御主人に襲いかかったのだった。もちろん冗談でしているのだけれど、一応唸り声を上げて口を大きく開けながら御主人を咬むようなまねをしてみた。御主人も僕を挑発するので僕はますます興奮してきたのだった。御主人の挑発は僕の鼻先を捕まえようと自分の左手を僕の目の前に繰り出す。僕は口を開けてそれに噛みつこうとするのだけれど、噛みつく寸前で口をそらす。何のことはない、時代劇で本当に刀で切られているように見せているのと同じで、いってみれば飼い犬と飼い主のじゃれ合いなので、別に危険なことは何もない。飼い犬にしてみれば散歩に行けないストレスを発散しているだけだし、飼い主は飼い犬相手に遊んでいるだけなのである。結局、夕方になって雨が小やみになったので、少しばかりの散歩には行けたんだけれどね。
9月27日 はれ
今日もさわやかな良い一日だったよ。幸いなことに御主人も僕のところへは近づいてこなかったので、僕はぐっすりとお昼寝をすることが出来た。ただ、ぐっすり眠っているときが一番危ないのだ。御主人は忍び足で近づいてきて、鼻先や頭を「つんつん」と突っつくからだ。当然、僕はびっくりして飛び起きる。それが御主人には面白いらしい。人の悪い飼い主である。でも、今日ばかりはしばらくの間安心なのである。なぜなら、御主人が家の中にたまった紙類を集めて縛ったり分別したりして汗を流しているのをしっかりと見てしまったからだ。御主人が他のことで忙しい間は僕のところへはちょっかいを出しにやってこないのだ。と、言うわけで「さわやかな秋」を満喫した今日の僕なのであった。
9月26日 はれ
秋らしいさわやかな風が吹いて、僕は気持ち良く外に寝ころんでいられたはずなんだ。ところが・・・・御主人が外に寝ている僕をいじりにやってくる。どうやら暇なようだ。頭や顔をなでたり、口を無理矢理開けられたり、鼻先をいじられたり、その他色々と僕の身体を触るものだから、うるさくてしょうがない。逃げると追いかけてきて同じようなことをする。とうとう、僕は田植機の下に潜り込んだのだ。農機具の下は外敵から逃れるのに恰好の場所である。飼い犬の場合は外敵というのはほとんどいない。唯一の外敵をあえて上げるなら「飼い主」と言うことになる。家の御主人も、これさえなければよい人なのになぁ・・・・ハァァァ〜・・・
9月25日 はれ
今日も昨日と同じ天気で、日中の日射しは厳しいものだった。今日の行動は昨日と同じ、・・・・もっとも飼い犬の行動など、何処の犬も似たり寄ったりなものだ。・・・・と思う。よその犬と交流がないので実態は知らないけれど、みんなそんなものなのだろう。ところで、御主人が動物病院でもらってくる薬の袋には「ムツ殿」と書かれているらしい。最近はお役所でも「○○様」というのが一般的になってきているのだけれど、僕のひいきである動物病院は「殿」なのである。さて?「殿」が偉いのか「様」が偉いのか、考え込んでしまって今夜は寝られそうにない。だけれど、家では「むっちゃん」とか「むっつん」、「むっくん」、「むつ」などと呼ばれているので、薬の袋に書かれている敬称などどうでも良いと思っている僕なのであった。
9月24日 はれ
今日は暑い日だった。気温が25度「夏日」である。あまりに暑いのでトラクターや田植機の下に潜り込んだりしたのだけれど、何せ御主人が稲刈り準備のために作業小屋の掃除や整理をしている。落ち着いて農機具の下では眠ることが出来ない環境である。幸い真夏とは違って風がさわやかなので外に出て日陰を選んで寝ころんでみたけれど、午前中は彼方此方に日陰があるのだけれど、午後になるとまるで日陰がない状態になってしまった。「ええ〜い!どうにでもなれ!」と思って日向に寝ころんでみたんだ。「犬のカラ元気」を見せたつもりだけれど、とてもじゃないが日向には寝ころんではいられない。と、言うわけで又農機具のお世話になる僕なのであった。値段が高い割に田んぼや畑での使用期間の短い農機具なのだけれど、田んぼや畑で使わないときは、僕が避暑のために下に潜り込み役立っているのであった。
9月23日 あめがふったりやんだり
この連休最後の日は一日中雨になってしまった。もっとも我が家では行楽と言うことでは何処にも出かけないので関係はない。だだ、今日は「お彼岸の中日」と言うことでお墓参りに出かけなければならない。墓地は、いつも僕たちが散歩に行くぐらい近いので歩いてもいける。それをクルマで行った御主人とお母さんなのであった。ところで、夕方散歩は久し振りの歩き散歩だった。いつもは僕が御主人の乗った自転車を引っ張るのだけれど、どうやら今日は、のんびりと歩きたいらしかった。計画では山の下の溜め池まで往復2キロのコースを考えているらしかったが、家から500メートルほど歩いたとき、僕は突然立ち止まり空を見上げ、足を大地に踏ん張って動かなくなった。変な予感がしたのだ。そう「雨が降ってくる!!」・・・と。御主人は計画通り歩きたかったらしいけれど、僕の勘は当たる。御主人も僕の予感の鋭さを普段から認めているので「それじぁ、帰ろうか」と言うことになって足を家の方に向けたのだった。家に近づくに連れて雨がポツポツ降り始め、帰り着いたとたんに雨が本降りになったのであった。このまま計画通り東の山の下にある溜め池まで歩いていたら、ずぶ濡れになって帰らなければならなくなっていたのだった。普段は飼い犬を誉めない御主人も「おりこう犬!!」と誉めてくれたので、飼い犬である僕は自分自身を誇らしく思ったのであった。
9月22日 あめのちくもり
久し振りに雨が降った。午後からは止んでお日様も時々顔を出してくれた。濡れたアスファルトの上はひんやりとして気持ちがよい。一日中寝転んでいて飽きない。御主人とお母さんが買い物へ行って帰ってきてクルマが側までやって来ても動きたくない。「どきなさい」と、お母さんに言われて、イヤイヤながら起きあがり、ほんの少し車が通れるぐらいだけ移動してやった。クルマが車庫にはいると、又地面の上に寝転がるのだ。この恰好で夕方散歩までいた僕なのであった。はぁぁぁ〜、今日は本当に気持ちの良い一日だったよ。晴れてさわやかな風が吹いた一日も気持ちがよいけれど、雨が降ってしっとりと濡れた地面で過ごす一日も中々良いものである。もっとも、これからは日射しがだんだん弱まっていくので、お日様が顔を出していても、一日中外で寝転がることが出来るようになると思うよ。
9月21日 はれたりくもったり
夕方、家の前を女の人が連れたラブラドール犬を発見した。いつか墓地の前で出会った犬である。まだ若犬のメス犬とのことである。僕は「わんわんわん」と吠えてメス犬の注意を引こうとしたが、相手は「ちらり」と、こっちを見ただけで通り過ぎてしまった。その後、しばらくしてから御主人が僕を散歩に連れ出してくれた。僕は、もうメス犬の跡を追いたくてうずうずしていたので、御主人の乗った自転車を引っ張りメス犬の匂いを追って走り始めたのだった。これを称して「ひさしぶりな女の子追跡大作戦」という。僕も一応雄犬だから、若いメス犬は気になる。僕は御主人が居ることを忘れたかのように全速力で走っては、草むらの匂いを嗅ぎ、辺りを見回してメス犬の姿を探したのだけれど影も形も見えなかった。だけど、若いメス犬の匂いを満喫した僕なのであった。これもそれも、雄犬の哀しき性なのであった。・・・・・
9月20日 はれ
今日はお祭りである。と、行っても川向こうの城下町のお祭りである。大名行列や山車がたくさん出てにぎやかなのである。と言っても見たことがないのだけれど、笛や太鼓の音が我が家にまで聞こえてくるのだ。いつ頃から始まったお祭りなのかは知らないけれど、お城の廻りの○○町と名前の付く所から工夫を凝らし山車などが出てくる。我が家は、元○○村だったのでお祭りとは関係がない。江戸で言えば、神田や日本橋が城下町だったように、渋谷とか、目黒なんて言う所は村だったのと同じようなものである。と、言うわけで御主人はお祭りの交通警備に出かけて行ってしまったので、祭り囃子を遠くに聴きながら一日中寝そべっていた僕なのであった。
9月19日 はれ
毎日毎日、さわやかな風が吹いて、赤とんぼたちはお互いに相方を見つけて卵を産む準備をしているようだ。僕はと言えば、涼しい所を彼方此方と移り、寝ては夢、さめてはうつつ幻の・・・と、犬小屋の廻りをうろついていたのだった。今日から日本の暦では5連休なのだという。お盆休みより長い「何とか連休」我が家ではどうやって過ごすのだろうか?、まぁ稲刈り前の一休みと言った所なのだろう。行事も色々あるようだしね。えっ?僕はいつもの通りだよ。「本日は前日と変わらず異常なし!。以上報告終わり!!」って番犬の業務報告を御主人にすることになると思うよ。たぶん・・・・
9月18日 はれ
御主人が夕方から会議だというので出かけてしまった。おかげで散歩に行けなくなったし、ご飯ももらうことが出来なかった。でも、まもなくお母さんが帰ってきたので何とかご飯だけはもらうことが出来たよ。御飯を食べて、又しばらくすると御主人が帰ってきた。その時、僕の心によこしまな考えがむくむくと入道雲のようにわき上がったのだった。さもうれしそうに御主人に身体をすり寄せて、「まだご飯をもらってないんだ〜・・・」と哀れな顔で御主人を見上げる。すると御主人は食器を取り上げて家の台所へ持っていって、ご飯を持ってきてくれることだろう。・・・・と考えたのだった。これを称して「ご飯ダブルいただき作戦」。だが、家にはお母さんがいる。ご飯はすでに食べ終えているので、僕の作戦はたちまち失敗するであろう事は飼い犬の頭の中にはぜんぜん無かったのである。「犬の浅知恵」がなせる業であった・・・・
9月17日 はれ
穏やかに晴れて、雲一つ無い快晴の一日だった。そして穏やかに黄昏れていった・・・・以上報告終わり
こんな文章では、日記にならないのでもう少しくわしく書くと、すすきの穂が「すーっと」背伸びするように伸びて、遠くの霊峰鳥海山を背景にすると絵になる。こんなさわやかで、気持ちの良い風景なのに、田植機の下に潜り込んで寝ていた僕なのであった・・・・だって、日中の日射しが犬にとっては厳しかったから・・・
9月16日 あめのちはれ
今日は午前中いっぱい、雨が降った。午後からはすっきりと晴れて綿菓子のような雲が浮かんで見えた。はぁぁ〜「犬の記憶と秋の空」という位に、ことわざにもなっている今日この頃の天気である。毎年恒例の天気と言ってしまえばあきらめも付くのかも知れないが、それにしても降りすぎる。梅雨の時期もいっぱい降ったけれど、今もいっぱい降っている。何しろ「梅雨明け宣言」がなされていないので、いまだに梅雨が続いているのかも知れない。そう言えば、今頃の季節にだらだらと降り続く雨のことを「秋霖(しゅうりん)」といって、秋雨前線が梅雨前線のように日本列島に停滞するのだそうだ。お客さんでも、訪問販売でも、またまた停滞前線でも長々と居座られると迷惑なことに代わりはないのであった。
9月15日 はれ
「秋風や 僕の尻尾と 尾花かな」・・・禄食
ちなみに、尾花とはススキの別名で秋風に揺れている僕の尻尾とすすきのどちらが立派に見えるかを競っていることを俳句にしてみたよ。昼前になったらさわやかな風が吹いてきたので詠んでみたんだ。昨日までの雨が嘘のようなさわやかな一日だったよ。でも・・・・夜になると又、雨が降ってくるらしい・・・
9月14日 きのうとおなじだけれど、ややまし・・・
午後になってしばらくすると御主人が帰ってきた。ずいぶん早いお帰りで、誰もいないのでのんびりしていた僕はガッカリしたのだけれど一応、飼い犬としてするべき事はした。つまり、飼い主が帰ってきて「わぁ〜い!うれしいなぁ!」という態度を取り、はしゃぎ廻ったのである。これをしないと御主人のご機嫌が悪くなり、散歩や御飯の量などに影響があるので必ず実行することにしている。僕がそうすることによって御主人は喜び、飼い犬は実利を得ることが出来る。このようにして飼い犬というものは計算高い生き物なのであった・・・
9月13日 あめ、くもり、はれ、などなど・・・
今日の御主人はこぎれいな服を着て、どこかへお出かけのようだ。「何処へ行くんだ?」と聞くと、「小旅行で岩手県の鶯宿温泉という所へ一泊で」行くのだそうだ。犬には温泉など関係がないけれど、なにやらおいしいものでも食べてお湯につかってのんびりしてくるのだろう。と、言うわけで集合場所までトラックで出かけていった。あとは、一番上に書いた通りの天気に振り回された僕なのであった。
9月12日 こさめ
べつに小さな鮫が降ってきたわけではない・・・・・ところで、今日は雨が降っているというのに夕方散歩に連れて行ってもらったんだよ。「こさめ」っていうぐらいだからジトジトと降り続いていたんだけれど、その中を行ってきた。御主人も僕もそんなには濡れなかったよ。雨の日の散歩を嫌う御主人にしては、こんなに日僕を連れ出すなんて信じられないけれど、よほど散歩をしたかったに違いない。但し、「ちょっとそこまで」程度の距離だったけれどね。今度は豪雨の時に散歩に連れ出して、ついでにシャンプーもしてもらいたいなって思う僕なのであった。
9月11日 はれのちあめのちはれ
今日もにぎやかな天気だったよ。今日の僕も廻りがにぎやかだったものだから、あっちへ行ったり、こっちへ来たりと忙しかったんだ。と、言うのも御主人が稲刈りの準備をするために作業小屋の整理や掃除を始めたからなんだ。田植機の下に寝ていたら「動かすのであっちへ行け」と言われ、トラクターの下に潜り込んだら、今度は「動かすからあっちへ行け」と言われ、元の田植機の下に潜り込もうとしたら、その前に障害物が置かれていた。「どうやったら田植機の下に潜り込めるのか?」と田植機の前でしばらく考えてみたり、田植機の廻りを眺めて少しの隙間を見つけては潜り込もうとしては見たのだが、どうしても潜り込むことが出来なかった僕なのであった。あまりに、忙しないので「安眠妨害で訴えてる」と、言ったら、逆に「営業妨害だ!!」と言われてしまった僕なのであった。
9月10日 あめのちはれのちあめのちはれ
今日の天気はめまぐるしく変わったよ。今まで晴れていたかと思うとものすごい雨が降った降ったりする。まさに秋の空だね。宮沢賢治の童話に「風の又三郎」というのがある。この冒頭の部分と今日の天気は似ていると思うな。風もすこぶる強かったしね。今年は夏と秋のせめぎ合いもなかったから、寂しい季節の移り変わりだったよ。あとは秋が深まって、どれだけおいしい物が食べられるのかだけが楽しみな飼い犬の僕なのであった。
9月9日 はれのちくもりいちじあめ
昔で言えば、今日は「重陽の節句」または「菊の節句」とも言う。もちろん旧暦だから、今の9月9日には季節としては会わない。それより。、昔から言われていることわざに「6日の菖蒲、10日の菊」というのがある。5月5日は「菖蒲の節句」、9月9日は「菊の節句」、どちらも一日遅れの6日と10日だから「間に合わない、役に立たない」の意味を持たせている。・・・・そんなことはどうでも良いのだけれど、人間は節句毎に何かを食べたり呑んだりする楽しみがあるけれど、飼い犬にはそんなものはヒトカケラもないのである。そもそも犬には暦なんて無いんだからね。
9月8日 くものちはれいちじあめ
人間の世界では「秋に3日の晴れ間無し」とよく言われるけれど、犬の世界では「犬に3日の記憶無し」という言葉がある。ニワトリは3歩、歩くと覚えていることを忘れる、と、言われているけれど、犬の記憶は欲もって3日である。と言う意味である。ただ、犬は自分にとって都合の悪いことは直ちに忘れるようになっているので、この言葉は当てはまらない。それとは逆に「犬は3日飼えばその恩を忘れず」という言葉もある。いずれにしても、3日が勝負の犬の脳みそなのであった・・・・
9月7日 はれのちくもり
春先から梅雨の頃にかけて僕は「メタボ犬」だの「ボテボテ犬」、「ぽにょ犬(お腹がぽにょっと出ているから)」だのと言われ続けてきたのだったけれど、この夏を越していくらか体型がほっそりしてきたようだ。しかし、季節はもう秋。犬の世界では「天高く犬肥ゆる秋」ということわざ在るぐらい犬の食欲は旺盛になり、身体に脂肪がたまってくる季節である。だが、これは仕方のないことなのである。秋が過ぎると冬になる。冬は寒いので身体に脂肪をためて「メタボ犬」にならざるをえないのである。でも、少しの間だけでも痩せて見えるのはうれしい。
9月6日 はれ
今日は午前中、お寺さんがやってきた。毎年今頃になると先祖供養というのでお寺に和尚さんがやってきてお経を仏壇に上げてくれる。僕は「わんわんわん」とは吠えなかった。いくら1年に一度か二度のお客様であっても、和尚さんには吠えられない。吠えたくて口の周りがうずうずしたけれど我慢をした。そんなわけだったので、その後にいつもやってくる人に「わんわんわんわんわん」と、思いっきり吠えてしまった僕なのであった。それにしても、今日は暑い一日だったよ。雲も綿菓子のように彼方此方にモッコリ、モッコリと浮かんでいる。でも、暑いながらも気持ちの良い一日だったんだよ。
9月5日 はれ
「上を向いて歩こう」という歌がある。実際に上を向いて流れる雲や青空を見ながら道を歩くのはとても気持ちがよい。しかし、実際、ほとんどの場合は上を見続けながら道路を歩くことなど出来ない交通状況なのである。たんぼ道や山道などの人通りがほとんど無い道路でなければ出来ないことなのだ。でも、これって考えてみると、ものすごく贅沢なことのような気がする。ただ・・・犬の僕としては御主人のように首を上げながら空を見続けるのは肉体的構造上、疲れるのである。出来ることなら、涼風が「そよっ」と吹いてきたときに足を止めて、高く青い空を「うわぁ〜、きれい!」と見上げてから又、虫の音に誘われるように視線を戻して歩き始める。そんな程度で良いのではないかと思う僕なのであった。
9月4日 あめのちくもり
僕の夕方散歩は6時前後である。夏の頃から比べたらずいぶん日の入りが早くなったなと思う。夏の頃は「えっ!、まだお日様がギラギラと地上を照らしている」と言った感じだった。それだけで、楽しみだった夕方散歩へ行くのが嫌になってしまう。ところが今は、お日様は新山神社のある山に姿を隠し、辺りはひんやりとした空気に包まれる。虫の声が聞こえ、夏には見られなかった雲が浮かび、のんびりと散歩が楽しめる季節になったのだと、身体で感じる。この前までは、かすかな気配として感じていた秋が、今は身体中で感じられるようになった僕なのであった。
9月3日 はれたりくもったり
やはり、今日も秋の風である。どういう訳か昨日から、やや強い風が吹き続けている。野分の名残と言うには時間が立ちすぎているし、暦の上では秋になったというので、急に涼しくなるのもおかしい・・・?。もっとも、今年の夏は「暑い、焼け死ぬ!!」というような日は昼も夜もなかったから、こんな感じで季節は移ろっていくのかなって思うだけで、去年のあの暑さは犬にとっては記憶外の出来事で、「去年は暑かった」という御主人の言葉をそのまま言っているだけなのである。とにかく今年は緊張感に欠け、メリハリのない季節の移り変わりだった。「梅雨入り宣言」は宣言日のだいぶ前に入っていたと修正されるし、「梅雨明け宣言」は「いつ梅雨が明けたのかわからない」という発表になるし・・・・もっとはっきりした世の中になって欲しいものである。
9月2日 はれ
昨日とは打って変わり、気温は上昇したものの、さわやかな風が吹いて気持ちが良かったよ。御主人は田んぼの草刈りに出かけていったのだけれど、汗が流れると、さわやかな乾いた風が吹き付けてたちまち汗を乾かしてしまうので、逆に身体が冷えてしまうといっていた。夕方になって、一段と涼しくなってくると「涼しすぎてくしゃみが止まらなくなった」と言って家に帰ってきた。そして、僕の夕方散歩中も、くしゃみをしながらなのであった、。御主人がくしゃみをする度に、僕は驚いて身体をびくんびくんと震わせながら御主人を見つめるのであった。
9月1日 あめのちはれ
「台風一過」というわけで朝に細かい雨が降っていたのだけれど、お昼前には晴れた。「台風一過」とはいうものの、台風の影響などはみじんもなく、ただ雨が少々降ったぐらいなものだったのだ。さて、9月1日と言えば全国的に「防災の日」なのだそうだけれど、僕たちの住んでいる市では「県の総合防災訓練」があって、朝から御主人は交通警備にかり出されて出かけていったのだった。さぞかしにぎやかだろうと思っていたのだけれど、何の音もなく普段と変わりない今日一日だったのだ。9月の中頃に行われる「本荘祭り」の方がにぎやかなぐらいだ。そんなわけで、僕は雨降り後の湿気に悩みながらも田植機の下に潜り込み、御主人は汗びっしょりになりながら「県防災訓練」の任務を無事終えたのであった。