さて、ここからは駒の名称・呼び方および、動かし方です。
これを知らない事には、自分で将棋を指せないのはもちろん、他人が指しているのを観戦しても、何をやっているのかさっぱり解りません。
順に解説していきますが、「動かし方を知らないのは銀将だけなんだけど・・・」というよう方は、下のリンクから各駒の解説に飛んで下さい。
さて、ここからは駒の名称・呼び方および、動かし方です。
これを知らない事には、自分で将棋を指せないのはもちろん、他人が指しているのを観戦しても、何をやっているのかさっぱり解りません。
順に解説していきますが、「動かし方を知らないのは銀将だけなんだけど・・・」というよう方は、下のリンクから各駒の解説に飛んで下さい。
略して玉(ぎょく)。出版物等での図面表記や棋譜(きふ・注1)表記の符号では、「玉」を用います。
一組の駒の中に、玉将・王将それぞれ1枚ずつか、玉将2枚があります。これを先手・後手が各々1枚ずつ使用します。
将棋の駒の名称は宝物のそれを由来としており(注2)、元来、「王将」という駒はありませんでした。
そのため、玉将の事を「王様」とか「王」と呼ぶのは正しくないという人もいますが、「王手」という誰でも知っている将棋用語もある事ですし、僕個人としては間違いだとは思っていません。
「王将」という駒がいつ頃出来たかという事は他で調べてもらうとして(すみません、僕は知りません)、現在では対局の際に、基本的には「王将」を上級者または年長者、「玉将」を下級者または年少者が用いる事になっています。
「基本的には」と書いたのは、アマチュアではそれを気にしない人も結構いますし、ゲームソフト相手やネット対局ではあまり関係ないからです。
まあ、誰かと盤を挟んで対局する機会に恵まれたら、明らかに自分のほうが上級者の場合は別にして、「玉将」を選んでおけば間違いないです(笑)。
さて、それでは玉(以下は全て略称を用います)の動かし方について。
玉は前後左右および斜め4方向に各1マス、計8カ所に進める事が出来ます。また、駒を進められる範囲(注3)に入った相手の駒は取る事ができ、取った駒は自分の駒として使えます。これは他の駒についても同様です。
図を見て下さい。盤の4六と6四のマス目(以下、座標を示す場合は数値のみを表記)には、それぞれ先手と後手の玉があります。黄緑で示したのが先手の玉の利き、黄で示したのが後手の玉の利きです。
赤で示した5五には先後両方の玉が利いています。では、ここに玉を進める事は出来るでしょうか?
先手、後手、どちらも玉を進める事が出来ないのは解りますね?
なぜなら、玉を5五に進めると相手の駒の利きに入る事になります。つまり、取られる事になります(注4)。そして第1章の最後で解説した通り、将棋は相手の玉を詰ました方が勝つゲームです。
以上の理由で、図の場合はどちらも玉を5五に進める事は出来ません。
という訳で、玉は将棋で一番大事な駒です。動けるマス目が多いからといって、むやみやたらに駒を進めてはいけません。
注1 将棋や囲碁の対局開始から終了までの指し手の記録。
注2 玉将・金将・銀将・桂馬・香車がそれにあたります。
注3 この範囲を駒の利き(きき)と言います。
注4 実際の対局では玉を取るまでは指さず、相手の駒の利きに玉を動かした時点で反則負けになります。
それぞれ略して飛(ひ・注1)・竜(りゅう)。図面・棋譜表記ではそれぞれ「飛」・「竜」を用います。年配の方の中には飛の事を「しゃぁ」(大体こんな感じの発音)なんて言う人もいます。
飛は一組の駒の中に2枚あります。平手の対局では先手・後手が各々1枚ずつ使用します。
竜は、飛が成った駒です。
それでは飛と竜の動かし方について。
飛は前後左右、遮る駒がなければ盤の端まで進める事が出来ます。強力な駒です。ただし、斜めには利きがないのでそこが弱点になります。
図を見て下さい。4五に先手の飛があります。黄緑で示したマス目がその利きです。では4二に後手の金将がありますが、ここはどうでしょう?
もちろん、ここにも利きがあるので、飛を進めこの金将を取る事が出来ます。ただし、この金将を飛び越えて4一に飛を進める事は出来ません。
7五に先手の歩兵があります。自分の駒を取る事は出来ませんので、この場合、飛を進める事が出来るのは6五までです。
なお、利きの途中に駒がある場合のこのルールは、この後解説する角行(竜馬)と香車にも当てはまります。
竜は飛の動きに加え、斜め4方向に各1マス動かす事が出来ます。飛の弱点が補われ、さらに強力な駒です。
8八に後手の竜があります。黄で示したマス目がその利きです。駒を飛び越えて進める事が出来ないのは、飛の場合と同様です。
赤で示した4八は、先手の飛と後手の竜の利きが重なっています。玉の場合と違い、お互いの飛、竜を進める事が出来ます。進める事は出来ますが、取られてしまいます。飛や竜は強力な駒ですから、それを相手に取らすような手は、何か大きな代償(例えば、その手によって相手の玉が詰む場合など)がない限り、悪い手(注2)です。
将棋は相手から取った駒を自分の駒として使えるゲームです。駒を1枚取られるという事は、自分の駒が1枚減り、相手の駒が1枚増えるという事です。つまり、その前と後では相手との戦力差が駒2枚分違ってくるという事を憶えておきましょう。
注1 棋譜の符号以外で略称で呼ぶ事は少ないです(「ひ」だけでは発音しにくいですからねぇ・・・)。
注2 悪手(あくしゅ)と言います(そのまんま)。反意語は、好手(こうしゅ)。
それぞれ略して角(かく・注1)・馬(うま)。角を生角(なまかく)、馬を成角(なりかく)と言う人もいます(注2)。図面・棋譜表記ではそれぞれ「角」・「馬」を用います。
角は一組の駒の中に2枚あります。平手の対局では先手・後手が各々1枚ずつ使用します。
馬は、角が成った駒です。
なお、飛(竜)と角(馬)を総称して、大駒(おおごま・注3)と言います。
それでは角と馬の動かし方について。
角は斜め4方向、遮る駒がなければ盤の端まで進める事が出来ます。強力な駒です。ただし、前後左右に利きがないのでそこが弱点になります。
図を見て下さい。4五に先手の角があります。黄緑で示したマス目がその利きです。
馬は角の動きに加え、前後左右に各1マス動かす事が出来ます。角の弱点が補われ、さらに強力な駒です。
7五に後手の馬があります。黄で示したマス目がその利きです。
飛車・竜王の項でも触れましたが、角(馬)は駒を飛び越えて進める事は出来ません。進める事が出来るのは、利きの途中に相手の駒があればそのマス目まで、自分の駒があればその1つ前のマス目までになります。
注1 飛の場合と違って、略称で呼ぶ事がほとんど。わざわざ「かくぎょう」と言っているのを聞いた事がないです。
注2 これに対し、「生飛」や「成飛」と言いそうなものだが、やはりこれも聞いた事がないです。
注3 これに対し、金将・銀将・桂馬・香車・歩兵を総称して、小駒(こごま)と言います。
略して金(きん)。図面・棋譜表記では「金」を用います。
金は一組の駒の中に4枚あります。平手の対局では先手・後手が各々2枚ずつ使用します。
なお、金に成り駒はありません。
それでは金の動かし方について。
金は前後左右と斜め前方に各1マス、計6カ所に進める事が出来ます。飛や角のような威力はありませんが、小駒の中では一番安定しています。ただし、斜め後方に利きがないのでそこが弱点になります。
図を見て下さい。4カ所に先手の金があります。それぞれ違う色で利きを示してみました。5八の金は6カ所全ての利きが活きているのに対し、9五の金は4カ所、5一の金は3カ所、1一の金に至っては2カ所しか利きがありません。
ちなみに、5八の金を5九に下がった(注1)場合をイメージしてみて下さい(イメージ出来ないという方は、図にマウスポインターを合わせて下さい)。
後ろの利きはなくなりますが、利きのない斜め後方2カ所もなくなり、周りを全て利きで囲う事が出来ます。
つまり、金はなるべく自陣寄りの中央で活用する(守備重視)のが効率の良い使い方になります。
注1 将棋では後方に駒を進める事を「引く」と言います。
銀将は略して銀(ぎん)。成銀に略称はありません(注1)。図面・棋譜表記ではそれぞれ「銀」・「成銀」を用います。また成銀は、図面上では、「銀」の上にカタカナで小さく「ナリ」と表記したり、「全」という字を用いる場合もあります。
銀は一組の駒の中に4枚あります。平手の対局では先手・後手が各々2枚ずつ使用します。
成銀は銀が成った駒です。念のため。
なお、金と銀を総称して、金駒(かなごま)と言います。また、「持ち駒に金気(かなけ)があれば・・・」などと言った場合、「持ち駒に金か銀があれば・・・」という意味になります。
それでは銀と成銀の動かし方について。
銀は斜め4方向と前に各1マス、計5カ所に進める事が出来ます。機動力のある駒ですが、横と後ろに利きがないのでそこが弱点になります。
ところで、これから将棋を始めようという方の中には、金と銀の動きの違いを覚えられずにそこでつまずく方が意外に多いと聞きます。そこで僕なりに覚え方を考えてみました。
「金は十字に動く駒、銀は斜めに動く駒、どちらも前には隙がない」
七五調で覚えやすいと思うのですがいかがでしょうか。余計にややこしくなったという方、なかった事にして下さい(笑)。
それでは図を見て下さい。1一、5八、9五に先手の銀があります。端や角では利きが減るのは金の場合と同じです。1一の銀に至っては1カ所しか利きがありませんが、では、その唯一の利きである2二に引くとどうなるでしょう?(イメージ出来ないという方は、図にマウスポインターを合わせて下さい)
一手で全ての利きが戻ります。このように銀は敵陣に入っても使い易い(攻撃重視)駒です。
5三に先手の成銀があります。成銀の利きは金と同じです。これはこの後解説する成桂・成香・と金も同様です。ちなみに「成金」という言葉は、この事を由来にしています。
飛・角が成った場合は、成る前の駒が強化されますが、銀・桂馬・香車の場合は全く違う駒(=金)になってしまいます。従って、成れる局面で成らず(注2)に活用した方が有効な場合が多々あります。
注1 「成銀」がすでに略称のような気もしますが、「成銀将」という呼び方を聞いた事がないです。成桂・成香も同様です。
注2 棋譜表記では「不成」と書いて「ならず」と読みます。何だか漢文みたいですね。
桂馬は略して桂(けい)。成桂に略称はありません。図面・棋譜表記ではそれぞれ「桂」・「成桂」を用います。また成桂は、図面上では、「桂」の上にカタカナで小さく「ナリ」と表記したり、「圭」という字を用いる場合もあります。
桂は一組の駒の中に4枚あります。平手の対局では先手・後手が各々2枚ずつ使用します。
成桂は桂が成った駒です。念のため。
それでは桂と成桂の動かし方について。
桂は特殊な駒です。2マス前の左右、計2カ所に進める事が出来ます。この特殊性から、攻めに他の駒にはない威力を発揮します。ただし、後方の利きが一切ないので、一度進めると後戻りは出来ません。また、角と同様にすぐ前のマス目に利きがない(注1)ため、そこが弱点になります。
図を見て下さい。3七、7七に先手の桂があります。それぞれ、黄緑、空色で利きを示しましたが、何か気付きませんか?
そうです、桂は駒を飛び越えて進める事が出来るのです。これは、桂以外の駒にはない能力です。
5三に先手の成桂があります。成桂の利きは金と同じです。
注1 この事を「(駒の)頭がまるい」と言います。そして、角や桂の事を「頭のまるい駒」と言います。
香車は略して香(きょう)。成香に略称はありません。また、香を「きょうす」や「やり」と言う人もいます(注1)。図面・棋譜表記ではそれぞれ「香」・「成香」を用います。また成香は、図面上では、「香」の上にカタカナで小さく「ナリ」と表記したり、「杏」という字を用いる場合もあります。
香は一組の駒の中に4枚あります。平手の対局では先手・後手が各々2枚ずつ使用します。
成香は香が成った駒です。念のため。
なお、飛・角・桂・香を駒の特性から「飛び道具」という事もあります。
それでは香と成香の動かし方について。
香は前方に遮る駒がなければ盤の端まで進める事が出来ます。ただし、一度前に進めると後戻りは出来ません。
図を見て下さい。1九に先手、6六と9一に後手の香があります。それぞれ違う色で利きを示してみました。1九と6六の香の利きの違いは一目瞭然ですね。つまり、香はなるべく自陣から利かすのが効率の良い使い方になります。基本的には駒を取る場合以外、あまり動かさない方が良い駒です。
また、9一の香のように駒に前を遮られていると、飛や角の場合と同様、それを飛び越えて進める事は出来ません。
4三に先手の成香があります。成香の利きは金と同じです。
注1 「やり」は駒の特性をよく表しているので理解出来るのですが、「きょうす」の「す」が何なのか僕は知りません。「きょうしゃ」が訛ったんですかね・・・。
それぞれ略して歩(ふ)・と。図面・棋譜表記ではそれぞれ「歩」・「と」を用います。
歩は一組の駒の中に18枚(注1)あります。駒の中では最大勢力です。平手の対局では先手・後手が各々9枚ずつ使用します。
と金(「と」だけでは判りにくいので、符号表記以外は以下も「と金」を用います)は歩が成った駒です。
それでは歩とと金の動かし方について。
歩は前に1マス進める事が出来ます。というより、前の1マス以外に進める事は出来ません。とても弱い駒です。しかし枚数が一番多いので、必然的に使用頻度も一番高い駒になります。
図を見て下さい。歩とと金の利きをそれぞれ違う色で示してみました。と金の利きの数は歩の6倍になります。これは大きな戦力差です。
将棋は限られた戦力を駆使するゲームです。どこかのプロ野球チームのように、札ビラに物を言わせて戦力(=駒)補強をする訳にはいきません。
将棋で戦力を補強する方法は、
この二つしかありません。