風物詩     

 春と言へば花、花と言へば櫻と言ふ事に成ります。陳腐の謗りを免れませんが、櫻を中心に取上てみました。

 当庵の庭の河津櫻ですが、実生の為、本家本元のものとは若干異なります。御覧のやうに色がやや白っぽく、芳香が漂ひます。そこで、浮んだ駄句がこれです。

      庭の朝 香仄かに 照る河津   孚

 深奥山方廣寺の『合掌櫻』で、勅使門の脇に在る染井吉野です。樹齢八、九十年でせうか、この下の奥山公園の櫻よりも早く開花します。これを撮影してから数日後の駄句です。

      境内に 名残の花見や 雨もよひ   孚

 かれこれ十年になるでせうか、浜松市天竜区の熊の郷から御持戴き、植栽した紅白枝垂桃です。高さ1.5m程、僅かな裸根で、付くかどうか心配でしたが、御覧の通りに育ちました。これまた駄句。

      紅白に 枝垂れし桃も 眠げかな   孚

 で、今年の櫻も今振返ってみると、慌しく過ぎて仕舞ったとの思ひが残りますが、そこで花への惜別の駄句。

      鐘楼に 櫻まひおり 風覚ゆ   孚 

 間近に櫻の木があるわけでもない鐘楼に、櫻の花びらが舞って来て、本堂の軒下から見ると、歌舞伎の舞台に舞落ちて来る僅かな雪の片々のやうで、無いやうでも風があるのかと気付いた時のものです。  




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