―オリジナルアルバム、下編―




はじめての氷室京介、其の三

今回のアルバム紹介は、氷室さんのCDの中でもコアなものを選びました。「其の一」「其のニ」では比較的一般受けしやすいものを紹介してたのですが、さすがに全部が全部そういうものではないので、ディープな世界を垣間見てみたいという方にお勧めです。

  • NEO FASCIO
  • Higher Self
  • Memories Of Blue
  • SHAKE THE FAKE
  • beat haze odyssey
以上のラインナップで進めていきたいと思います。「これがコアなのか?」という意見もあるでしょうが、それは作者による独断と偏見で決めたことなので、グっと堪えて貰えれば幸いです。


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NEO FASCIO (89/09/27発売)

タイトルから見てわかるように「ファシズム」をコンセプトにしたアルバムです。歌詞の中に「カリスマ」「レジスタンス」「マルクス」といった単語が出てきており、最終的には「愛」にいきつくというものに仕上がっております。それほど過激なものではないのですが、実際は好きな人と嫌いな人に分かれてしまうでしょう。

サウンドは最初の一曲目がインストで始めているだけあって(?)、それなりに雰囲気が出ていますし、ある意味完成度は高いものになってます。なかでも「CALLING」という曲はファンの中でも人気があります。反戦めいた曲なのですが、歌詞・メロディーともに優れたもので私も好きです。

余談ですがこのアルバムが発売された時には「冷戦」が終結し、ベルリンの壁崩壊、天安門事件といったものが起きた時期です。それを狙って製作したわけじゃないでしょうが、氷室さんの社会的な考え方というものが少しは理解できる代物でもあると思います。



Higher Self (91/06/04発売)

キワモノ系の曲があるアルバムです。どういうのがキワモノなのかといえば説明しにくいのですけど、個人的には気だるい雰囲気の「CLIMAX」や軽薄な声の「CABARET IN THE HEAVEN」がそれに当たると思います。それは聴くに値しない曲という事ではなく・・・一般受けしにくいというか・・・変わった曲というか・・・まあそんな感じです。

それは好みの問題なので私がどうのこうの言うべきではないのですが、それでも氷室さんを聴いた事ない初心者にはあまり受けないとは思うのです。変わった曲が好みの人ならば気に入るとは思いますが。他の曲をみてみると、バンドサウンドを重視したアルバムというだけあってギターがかなり効かせてあります。

ただ音の歪みがあまり効かせてないので、個人的にはギターのシャカシャカ音が多いだけじゃないかなあと思ってみたり。正統派ロックが好きじゃない方・変わった曲が好きな方は聴いて見ては如何でしょうか。



Memories Of Blue  (93/07/01発売)

これはミリオン突破したものです。ヒット曲「KISS ME」が売れた効果もあったでしょう。売れすぎた結果、現在では中古屋で百円で買えるものになってしまいましたが。ともかく、アルバムとしてはアップテンポ、バラード、ブルースっぽいのまでバランス良く仕上げた一品です。

「KISS ME」もいいですが、このアルバムで注目すべきは氷室さんの声を存分に生かしたバラード曲にあると思います。このアルバムでは中盤までバラード色が強く、それがこのアルバムの主な持ち味になってると思ってます。この頃の氷室さんの声は、初期に見られるようなハスキーヴォイスでなくなっていますが、かえってそれらとうまくあっております。

個人的にプッシュしたいのは「Decadent」。歌詞がすごいんですよ。出だしから『UWASAのまなざしで 摂氏100℃のMAKIN’ LOVE♪』と歌うのですよ。十年以上前とはいえ、アイドルでも歌ってなさそうな曲です。そりゃ噂もローマ字に変換されますよ。曲調もなんか古いし。でもあえてそんな曲をアルバムに収録するのがロック・・・氷室京介。シビれるぜ!



SHAKE THE FAKE (94/09/26発売)

有名な曲としては「VIRGIN BEAT」しかなく、初めて氷室さんを聴こうとする人にとっては癖が強いアルバムになってます。でも、ある程度音楽を聴きこんでいる人や渋い感じの曲が好きな人にとっては結構良いんじゃないかと思います。日本人が好みそうなメロディー重視ではありませんし、歌詞とかも古い感じなので、年配の方向けなのかなっと。

今まで「バラードが良い」とどのアルバムでも言ってきましたが、今回はちょっとあてはまりません。珍しくバラード関係が少なく、氷室さんらしいロックが多くなっております。氷室さんらしいロックと言うと、うまく表現することができないのですが・・・具体的に言えば「LOST IN THE DARK」「FOREVER RAIN」「LONESOME DUMMY」でしょうか。 これらは氷室さんの曲を聴きこんでいないとなじめない雰囲気があると思うのです。

そこらへんはファンのなかでも好き嫌いが出てくる線なので、初心者の方はあまり気にせず適当に聴き流すのが吉かと(笑)。ちなみに、ベースでは暴威の松井常松さんがやってくれてます。そこらへんも気にしつつ、聴いてみては如何でしょうか。



beat haze odyssey( 00/10/18発売)

七曲だけのミニアルバムです。反町隆史さんに提供した「ONE」という曲のセルフカバーもしており、アルバムというより企画モノ・・・こういうものもやってみようかといった感じの曲で構成されております。ファンとしては曲数が少ないので物足りない感じがしますが、ちょっと聴いてみようかと思ってる人にはちょうどいいのではないでしょうか。

曲としては、ビート系(「KISS ME」とかああいう感じの)といわれる氷室さんお家芸のものがありますし、「Julia」といった甘ったるいラブソングまでありますので、比較的聴きやすいと思います。あと、おまけ・・・初回限定として「魂を抱いてくれ」「Believe」「Still The One」のアコースティック・リミックス版がもう一枚ついております。

リミックス版と聴けば、初心者の方には興味ないかと思われますが、これらは原曲と比べても遜色ありません。スティーヴ・スティーブンスが演奏してくれてるので、非常に聴き応えあります。「Believe」のギターソロは必見です。なので、レンタル・中古で買われる方は、それがついてるものを選択されることをお勧めします。初回版は案外売れ残ってるので大丈夫ですよ。


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以上より、ここでオリジナルアルバムについてまとめてみますと、
  • 社会派の貴方⇒NEO FASCIO
  • キワモノ好きな人⇒Higher Self
  • ハスキーボイスを卒業したい人⇒Memories Of Blue
  • 渋い曲が好きな人⇒SHAKE THE FAKE
  • 時間がなくて軽く聴きたい人⇒beat haze odyssey
といった感じになっております。この中から貴方好みのものを選んで下さいませ。私ならば、「beat haze odyssey(初回版)」をお勧めします。軽く聴けますし、おまけCDもなかなかなので結構良いと思うのです。


さ、如何でしたか。とりあえず氷室さんの曲を聴いてみようかと思う人は参考になったでしょうか。今回はマニアな氷室京介を出したので、初心者の方には辛かったのではないかと思います。でも、どのアーティストでもディープな部分はありますし、少しなりとも自分の好みにあったアルバムを中古やレンタルで一度これらを手にとってみては如何でしょうか。それでは「オリジナルアルバム編」はここらで終わります。最後まで読んでくれた人、多謝!