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Message From Tokuda
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年末年始の10冊 |
Date: 2006-01-28 (Sat) |
先月12月も半ば頃、
「年末年始休みに読む!」
と気合入れて選んで、机に積んだ本10冊がどれもエエ塩梅だったのでご報告したい。
秋から引き続き、いい流れだ。
ということで以下読んだ順、ネタばれも十分ありえるので、ご注意いただきたい。
『葉桜の季節に君を想うということ』歌野晶午
リベンジである。
歌野作品に俺へのリベンジを機会を与えたのです。
「新本格」の流れで便乗デビューした彼の『長い家の殺人』は、激しくひどかった。
文章が幼くって、本開けて舞台見取り図見た瞬間トリックが割れて(1行目読み出す前だぞ)、
巻末の島田荘司(歌野デビューに奔走したとのこと)とのやりとりにもツノが生えました。
内容もね、書くけどね、
巻頭に犯人のモノローグとして、
「マリ、おまえのために俺は犯罪をする」とかっこ悪い巻頭句がまずあって、
ほいで舞台は大学の音楽サークルで紅一点マリちゃんがいて、痴情のもつれをベタに描いておいて、殺人が起きる。
でも実はマリちゃんは関係なく、犯人は自らの「マリファナ常用」をチクられそうになったことを防ぐための犯行だった。
だとよ。
犯人はいつもこころのなかで、愛を込めてマリファナの事を「マリ」と呼んでたと。
サークルのマリちゃんのことじゃなかったのだ!…ってそんなの驚くか?
でもまぁ誰だって好不調はある。
これいっこで作者をぶったぎっては悪いので、5年以上経過した今、当作品を手に取った次第。
で、『葉桜〜』、面白かったのです。リベンジなった。
<ラストに大オチが決まる!>との噂通りであったが、俺的にはあんなのはなくても十分。
最初からグイグイだが、特に、主人公の過去のエピソードが読ませる。
トリックとか大オチとかでなく、ユーモアと哀しさが断然効いた物語と、素晴らしくテンポの良い文章をぜひ楽しんでいただきたい。
『長い家〜』のデビューから15年だそうだ。
同じ人物と思えない出来映えでした。そのあたりが15年か。
『生首に聞いてみろ』法月綸太郎
実はこれも上記と同様リベンジもの。
6年ほど前読んだ、『二の悲劇』が最高にゲロかった。
物語が、文章が、トリックが、でなく、
作者を投影した主人公に吐き気がした。
村上春樹の主人公をコピペしたとしか思えない、スマートナイーブキャラ(作者と同名、という趣向)は、
作者が「俺はこうなりたかった」というか「いやこういう自分だよ?」みたいなアンビバレンツなエロい本音を見せられたようで、たいへん辛い。
同じような最悪の自意識を別の作家だが、『テロリストのパラソル』という作品で読まされた記憶がある。
さて当作品は「本格の王道をいく、綿密なロジック」という評判。
で、その感想なのだが、なるほどその通り!…とまでいかんが、十分堪能できた。
ただ、グイグイ読ませないし、中だるみするし、ドンデン返しもない。
しかし、、、エキセントリックな舞台を排し、淡々と謎を提示し、そして順番に攻略するストイックな志にうたれた。
なんといっても、シリーズ主人公が、キモくなくなってた。
作中何度もミスをし、後手に回り、自身の推理を修正し、人付き合いにシンプルに傷ついたりしてゆく中で、
解決を手にする人間像がよかった。
法月氏は作家以上に評論活動に力を入れている。
当然創作においてイロイロなしばりが出てくるだろうが、今後もイロイロしばられて頑張ってほしい。
『狐罠』北森鴻
前作の素晴らしさにひかれ、我慢できず拝読。
これも最高!!
冬狐堂シリーズ第2作だが、このシリーズはもう追うしかない。
さてこの作品で、北森氏は<他の自作品のキャラクターを何人も登場させる>という、きわめてオタク寄りの手口を使った。
特撮とか、アニメとか漫画、好きなんだろうな。
『写楽・考』北森鴻
こちらは蓮城那智シリーズ第3弾。
前作が面白すぎたので、人に勧めたら、
「主人公達のキャラ設定が同人ぽすぎて、キモくて読めない」
と一喝された。。。
国内ミステリーの多数がライトノベル化してる点については、俺も思うところがなくはない。
しかし、このシリーズもそう見られてしまうか。
ズバリ言って俺はオタク道だ。
お嫌いでない。
確かに俺らには共通する、萌える展開…ってのがある。
でもこのシリーズはそこまでいってない、ごく一般の範疇と思ってたが、いや、自分のことって案外分かんないっすね。
助教授蓮城と助手のミクニ、皆さんはどう見ますか?
『砂の女』安倍公房
鈴木茂じゃないよ!
世界20カ国以上で翻訳されてるという、我が国が誇る不条理(状況)小説の代表作だ。
といっても、そんなにお固い物でなく、また前衛ものでもない。
ミステリーとしても読めるし、人生の比喩としても読める。
また不条理状況を描いているのに、おそらく読者は誰もがそれぞれどこかで必ず共感させられてしまう。
つまり、ほんとに良く出来た小説って、幾通りもの読み方が出来る…ってことなのかな。
実はこれが2005年最後に読んだ作品。
「最後はいっちょ、文豪系いってみますか」
と思って手を出しましたが、、、まぁ感銘を受けましたよ。
これが色々な作品の元ネタになってることも分かった。
読み終えたあとの余韻も半端じゃない。
『硝子のハンマー』貴志祐介
新年一発目は、一転、一級のエンタテイメントもの。
と、いうより<あの貴志祐介、本格に挑戦!>と話題になった一作。
防犯セキュリティ探偵ってのも時代が呼んだ新設定。
これだけで読む気になった。
第1部で犯行一部始終、第2部で犯人側の物語、という構成も予想できずグー。
トリックはひねくりまわした物理系だったけど、
なにせよ、この人は文章うまいから!
本格やってもそれはまったく変わらなかった。
これで、「黒い家」「天使の囀り」に続き3連続ハズレなし。
ハズレなしなんて言い方はやらしいな、3連続大当たり!
俺はこの人のは全部読むことにしますわ。
『魔術師』ジェフリー・ディーヴァー
きたきたきた!
リンカーン・ライムシリーズ第5作!
かならず水準以上、専門ネタびっしり、どんでん返しの大連発…を豪快に決めてくれる人気シリーズだ。
あえて苦言を呈せば、第3、4作目で上記の長所が、長所ゆえに短所になってしまったのだが、
今回は文句なし。
ムード満点。
世界中の書評でも、のきなみ大好評のようだ。
冒頭の、いにしえのマジックショーの口上がそのまま殺人事件につながるあたりから、
もう他の追随を許さん。
エンタメ作家の真髄だ。
とくに今回の犯人は手品師。
ここんとこ我がニッポンでもカードマジック・テーブルマジックが大人気ゆえ、
ほとんどの人が、親近感たっぷりに引き込まれるだろう。
ところですっかり、ライトノベルよろしく「リンカーンファミリー」が定着した。
立派なキャラものになったよ。
ついに昨年は「キャラもの」作品常套の<サービス短編>まで発表した。番外風のね。
そいで今作はななんと「他作品の登場人物」をゲスト登場させもした。
冬狐堂シリーズや、京極堂シリーズみたいよ。
ところがなんつーか、やっかみ半分の悪口すら許さん王道っぷりがここにはある。
このシリーズを読むなら、ぜひ第1作目の「ボーンコレクター」から。
映画じゃ駄目よ。
それとディーヴァーは、ブレイク前の大大傑作「静寂の叫び」を強く薦めたいですね。
『月の扉』石持浅海
ハイジャックされた飛行機のトイレの中で死体が発見。
驚くハイジャック犯はひとりの乗客を探偵に指名し、犯人を捜させる(ハイジャック犯はそれどころじゃねーからさ)。
…という、設定紹介の2行だけで、
「面白そう!!」って思いません?
俺はストライクど真ん中よ。
この作者の名前は今まで知りませんでしたが、以後、必ず全作品を読む事にします。
聞けば、最新作はあちこちの年間ベストテンで相当な評価らしいね。
文章がとにかく読みやすく、こけおどしもなく、引っ張られっぱなし。
何より、ありそうでなかった好設定!
それだけにとどまらず、<ハイジャック犯たちの目的>が伏せられたまま物語が進行する。
最後に意外な形で<月の扉>が開き、物語は終了。
スーパーナチュラル感も味付けにすぎず、本質は人間の心の闇とあさはかさにあることを突きつけられ、
読後の余韻も十分。
素晴らしい作家を見つけました。
『FAKE』五十嵐貴久
<スティングのようなコンゲームの傑作!>
というコピーにひかれ、手に取った。
コンゲームもの、大好きっす。
でもなかなかないのよ。
コンゲームものと山岳小説は、いつも探してるので、なにかあれば教えてください。
数が少ないんですよね。
さて今作は作者が、
「マジでスティングってタイトルに決めかかっていた」
というほど、かの名画への気合いのオマージュに満ちた一作。
魂込めて、コンゲームの王道をどっしりと書ききった。
うんうん、これまた読む手が止まりません。
「こうでなきゃ」という必殺の展開。
しかし!
大事な大事な<最後のスティング>は、、、もう一歩いや二歩。
明らかに、後付け逆行してキャラクターを組んだな…って見えすぎる。
ロマンスの味付けで物語を〆るのも、いかがなものか。
コンゲームものにおいては、ロマンス途中でやっちゃうのがいいと思うんだよね。
とはいえ、この五十嵐貴久、志し最高!彼も全部読むよ!
これで二つ目の出会いですわ。
ところで、コンゲームものの国内最高峰作品は、
真保裕一の『奪取』です。
間違いなく。
『奪取』が真保作品との出会いだったのですが、それは心底びっくりしました。
こんな才能がアニメ業界にいたとは。。。
その後発表された雪山ダム版ダイハード『ホワイトアウト』で、てっぺん攫みましたが、
『奪取』の方は、、、あ、また読み返したくなった。
実はもう何度も読み返してますです。
『疾走』重松清
積んだ10冊中最後になったのがこれ。
そりゃそうだ。
03年の刊行時から「14歳の主人公にふりかかるあまりにも過酷すぎる運命」、
と太鼓判の本だから。
やっぱ、、、分かっててあえてヘヴィな年末年始にはしたくないス。
俺知らない間に、実は映画化が決まってて、というか、もう公開なんだってね。
監督SABUで主役はジャニーズだとか。
この作品最大の特徴である、「おまえ」と語りかける三人称をどう表現してるんだろう。。。
これこそ、作者と読者がつながる要旨だから。
さて内容。評判通り、キツいです。
まず表紙のデザインがキツいです。
でも内容はこの通りなんですわ。
差別いじめ兄の精神崩壊父の転落母の失踪ときて地元から逃げ出したものの、
激しい暴力とレイプ、救いを求めた大阪・東京での再会はより苦い結果にしかならんという。。。
「だれかいっしょに生きてください」
とただそれだけが望みというはかない疾走。
読み終えたとき、自分にはいっしょに生きる人がいるのだと感じたときの気持ちはたとえようもないものです。
正直<作者がなにを伝えたかったのか>は明確にはされないが、
読んだ人それぞれが、それぞれの立場でなにかを感じる…そういった作品でしょう。
以上、徳田冬休みの10冊でした。
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