花田達朗教授による公共圏について
 2002年3月3日の建築あそび の記録  1−4
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            理性の光によって蒙を開く


さて、その啓蒙主義的教養ですが、それは読み書きそろばんのことではなく、啓蒙的っていうのが重要なんです。啓蒙的っていうのは、啓蒙主義ということでご存知かもしれませんが、ようするに蒙をひらくってことなんですね。蒙っていうのは無知蒙昧の蒙でしょう。啓蒙の蒙っていうのは何のことを指していいるかっていうと、中世の暗黒を指しているんです。

それはカソリック教会の呪術的な・・魔術的な世界です。ようするに中世の地図なんか見れば分かるでしょう。海をドントンドンドン向こうまで行けばね、こういう・・変な怪獣がいてですね・・海におっこっちゃう。

空間として表象されていたわけですね・・世界はこういう風になっているんだと。地球は亀の上に乗っかてる絵がありますね・・そいいう悪魔的世界のビジュアル化なわけですね。

実際にそういうふうに人々は考えていた。それは近代の理性からすれば蒙昧の世界、闇の世界。ようするに野蛮な世界。魔術に支配されている野蛮な世界、闇の世界。これを開くことが啓蒙ですじゃなにによって開くのか・・それが理性ですね。理性の光ってよく言われるのはそのことですね。

理性っていうものの光によって、暗闇の中に光りを照らす。そうすると今で見えなかったものが見えるようになって、魔術じゃない、もっと合理的な世界が始まる。これが啓蒙主義ですね

      

そういうモノの考え方、そういう教養をブルジョア知識層は身につけた。ですからある種の進歩主義ですね。世の中をもっと合理的に考えたいと・・こういう考え方ですね。この啓蒙主義的な教養を彼らは身につけた。この要素とですね・・

それから中世末期の都市。ここはいろいろな・・都市とは人々の集う場所ですから、市場があったりして・・要するに文化的なものが交流していくって場所ですね

当時は大部分は農村だったんですけども、都市という限られた、城郭に囲まれた処があって、その中では自由に物がやりとりされたり・・あるいは・・ある種逃げ込み場でもあったのですね。奴隷なんかが都市に逃げ込めば開放されるとかですね。

だから中世の言い方にありますように・・「都市の空気は人を自由にさせる」。、そういう都市に集まっている文化。

それから中世の宮廷文化ですね。貴族社会の社交術。ある意味でのソーシャル。社交的な会話とかですね。

そいう3つの要素が合わさってそこに出来たのが文芸的公共圏・・或いは文化的なパブリック・スフィアー ですね・・・・そう名付けることが出来るものがここに出来て来るわけです。新しい空間がここに誕生する、受精するわけです。

           
  
 これは具体的にはどんなモノだったかって言うと、コーヒーハウスとか・・ヨーロッパの歴史で面白いものはコーヒーハウス。コーヒーハウスについては、日本語でも沢山本が出ています。翻訳書も含めてです・・いまでもヨーロッパに行かれて、コーヒーハウス巡りっていうの面白いですね・・ロンドン・・ウィーンで行ったでしょう(と、my長女を指さす)・・いまでもいくつも残ってますよね。

              コーヒーハウス

コーヒーハウスってどういうもんか・・これも新しい空間ですね、新しい場所ですね。それ以前には無かった。アラブから茶色い液体が入ってきた。それを飲み始めたときに、いろんなことがヨーロッパで起きたんですが・・それ以前はヨーロッパ人はコーヒー知りませんから・・いろいろケンケンがくがくあって、これは体に悪いとか、これは頭を良くするんだとか・・精神を活性化させるらしい・・とかいろいろな受けとめかたがあって、ある種特殊な飲み物。

薬になるっていう説だとか、寿命を縮めるとか・・いろいろある。それを飲む場所として発達したのがコーヒーハウスです。で、そこに行って人々がコーヒーをのむ。これは不思議な空間です。これは建築家にとっても面白い話だと思います。

コーヒーハウスっていうのは出入り自由人々が集まるから情報交換がおきます。うわさ話が飛び交うとか・・ある時は・・遠くの商品が今いくらしてるかとか、明日船が入るらしいとか、商い上必要な情報をやり取りされるでしょうし、宮廷のうわさ話・・ゴシップもやりとりされる。

つまり路上に面してる。家じゃないですね。家っていうのはクローズ。ストリートはオープン。コーヒーハウスは中間にある。ある意味で言えばストリートの延長でもある。

結局そこは出入り自由だから怪しげな場所だったんですよ。だから弾圧もされるんですよ。一時期はロンドンなんかのコーヒーハウスでは王様から閉鎖命じられてね・・危険な場所だということで・・。

            

それはそうなんで世の常で、権力者っていうのはですね、情報が自由に交換されるっていうことに恐れをもつんですよ。それはいまのインターネットの世界についても言えるかもしれない・・

ロンドンならコーヒーハウス。パリやベルリンやウィーンならカフェ中世末期、近代初頭にある種の情報交換の場所として活性化した場所、自由で独特な文化の舞台となってき場所、その名称が今再び使われてサイバーカフェ、インターネツトカフェと呼ばれる。それは面白いことですよね。その言葉になにか感じることがあるからですよ

そういうクラブサロンカフェコーヒーハウス・・そいういう場所が成立します。それはどんな場所、どんな特色をもったもの・・どんな社会空間か・・

それは特異な空間です。ある種の島ですね。例えばモーツアルト映画・・ああいう映画を観ると当時のサロンがどんなふうか分かりますね。そこはですね、一つの特色は身分を越えている。身分を越えて出入りしているということですね。

  サロンやコーヒーハウスっていうのは身分を越えて交流が出来る
   文芸的公共圏 一個だけ条件がある・・それは教養 


中世は身分社会ですから、身分を越えて行き来するっていうのは難しい、或いは禁じられている。ところがサロンやコーヒーハウスっていうのは身分を越えて人々が出入り出来る。交流が出来る。

サロンなんかは何が行われていたかというと、例えば室内楽・モーツアルトなんか呼んで・・それを批評するわけですね。音楽批評・・チョツト知的なコメントを言わなきゃいけなんですね。

あるいは絵画を持ってきて批評して・・お茶飲みながら・・たしかにそこは、王様であれ、貴族であれ、庶民であれ、極端に言えば身をもちくずした乞食であれ、身分を越えて入ることができるんだけど、ただし一個だけ条件がある。それは教養

教養がないと入れない。教養というパスポートさえ有れば入れる。これは決定的に中世社会の秩序と違う。身分越えてる。これが文芸的公共圏ですね。ここにパブリックなスフィアーというものが、文芸的なかたちで・・リテラルチャルなものとして・・素人による芸術批評の場として、成立する。


これがやがて変容して行く。どう変容して行くのかというと、政治的なものに変わっていくんです。それのモーメントになったものが、それの切っ掛けになったものが新聞です。

         

新聞というもの、プレスというものは歴史的に大変重要な役割を果たしました・・。サロンやコーヒーハウスは物理的空間です。ここもそうです。ここはいまサロンです、名付ければ・・。我々は今日知り合ったばかりの仲である。

       会場 笑い

どういう仕事をしているかとか、年齢がどうであるかとか、男であるとか女であるとか、そういう社会的属性っていうモノをここの場では、棚上げにしています。無視している。そして議論しようとしている。

だからその意味においてもここは一つの公共圏。ただし今から我々は政治的な議論をしようとはしていない。

       会場    わらい

ここはある意味で文芸的なものなんだ・・ここはね。さらにここはあくまでも物理的空間。我々は面と向かっている。

 新聞は・・バラバラに存在していてもいい状態をつくりだした
       ・・・言論のはじまり


ところが新聞っていうものはですね、いろんな複雑な性格をもっていますけど、商業活動の情報媒体であったり、言論闘争の武器であったり、官報的な性格をもっていたり、あるいは噂話の媒体であったり、そしてサロンで行われていたような文芸的批評などが新聞に載っかるというふうなことも行われていくわけです。

新聞というものは、そのサロンの制約条件を変えてしまうわけです、物理的に一緒にいなくても・・なんていうかな・・物理的にバラバラに存在していてもいいという状態をつくるパブリックへの参加者が散在した状態で公共圏が作られる可能性を新聞というのは作りだす

メディア化された公共圏っていうものを作りだした最初の出発点。メデイア化されたということは新聞っていう媒介物を通じて公共圏っていうものが成立をするということ。

ここ(建築あそび)はなんの媒介物もない、何にもメディアを必要としていないですね。確かに私は言葉っていうメディアを使っているけれども、ほかに通信手段とか使っていませんね。

新聞はメディア化された公共圏、人々が散在していても公共圏っていうモノが作られ得るという状態を作りだすわけです。新聞でなくてもいい、パンフレットでもいい。

これが近代の言論というものの始まりですね。公共圏を言論のために使う。芸的な性格をもっていた公共圏が言論というモーメント、言論という契機を経ることによって政治的な性格へと転換していくわけです。ここにいわゆる言論市場が登場してくる。

モノのやりとりの市場ではなくて、言論のやりとりの市場っていうものが登場してくる。これが政治的公共圏ですね。


 なぜ・・文芸的なものからなぜポリティカルなもへ変容するか

じゃ、なぜ政治的公共圏・・文芸的なものからなぜ政治的なものへ・・なぜリテラチャラルなものからポリティカルなもへ変更していくのかということですけども

これはじつはブルジョアジーの二面的な性格に関わっています。ブルジョアジーは一面では図の左の流れ、経済的活動をする人間、市場のアクター。交易をして、金儲けをする

金儲けのことだけを考えているわけじゃないけど、とにかく経済活動をする人間として、ブルジョアジーは存在する。彼らはそっちでドンドン拡大していき、図の左側の空間をドンドン拡張して行くわけですね。世界的な貿易も進めるわけですね。自由貿易、自由に商品を取引することによって利益を得る。そういう活動をする。




ところが彼らはもう一面では教養人ですね啓蒙主義的教養の持ち主。教養人です。芸術品を慕い・室内楽を楽しんだり、「野蛮な」人間じゃなくて教養

ブルジョアジーは二つの顔をもっている。経済人文化人の二つの顔を持って、それを一身に担ってる。経済人としては自由にものの取引をしたい。

          

ところが当時の政治的な権力・王様であるとか、教会であるとかが、経済活動に対して様々な規制をかけて・・高い税金をかけるとかですね

例えばライン下りしても、いっぱいお城があるでしょう、あれは税金取り立てのために領主が作ったんですってね。

例えばライン川を下ってですね、スイスのバーゼルからアムステルダムまで物を動かして金儲けをしようとしてるブルジョアが、行く度にその土地・・その土地の領主が、船止めて税金を取る。

 非常に経済活動やりにくいですね。

そうすると経済人としてのブルジョアジーはどうしたかというと、政治的なオーソリティ公権力に対して闘い始める。「関税安くしろ」とか・・

だんだんこっちの政治権力は、絶対主義とか・・フランスで言えばルイ14世とか絶対主義国家も装置化して、大きくなってくるわけです。ブルジョアジーを圧迫する。そうするとブルジョアジーはそれに対して闘う。

その時に彼らは鉄砲を使ってドンパチもやったです。しかし彼らはもう一個の武器を発明した。


 ブルジュアジーは言論という武器を発明し・・自由を得るために闘った

それは言論っていう武器です。言論という武器は鉄砲の代わりなんです。大砲の代わりなんです。彼らは言論という武器で、領主とか絶対主義の王様とか公権力と闘った。なんのために闘ったかというと自由のために

その自由っていうのは、一つは確かに経済的な活動の自由でした。自由に商取引が出来る、自由に職業の選択が出来る、そういう自由を要求する。でも、彼らははさっき言った二面性をもっている。一つは経済人の顔。一つは文化人の顔。

そこでもう一つの自由・・文化人としては精神的な自由を要求する。さっき言った自由・平等・友愛の精神。それが理論化されて行きます。これもだから発明品です。

この発明品、つまり自由っていう観念。ブルジョアジーのためにこの発明のために頭を使ったのが、近代初頭の哲学者です。ミルトンとかロックとか、或いはその後のミルだとか、そいう人達ですね。




そういう人達はそれまで無かった自由っていう観念を理論化して、自由っていう観念を正当性の論理の論拠として、・・当時の公権力に対して・・例えば検閲を止めろとか、言論の自由っていうのは神様から与えれた権利としてあるんだと・・主張した。


言論の自由って皆さん当たり前のものだと思ってるけれども、確かに日本国憲法にも書いてある。あるいは私が今言論の自由だと言うけれども、元々の発生はここにある。

         

元々の発生は、ブルジョアジーがですね、経済的、政治的主張を当時の王権や教会権力に対して言うとですね・・。彼らがパンフレットや新聞出して主張すれば、王権や教会権力は検閲をしてくるわけですね。弾圧するわけです。

そのときに、いや検閲や弾圧はいけないんだ、なぜいけないかと言うと、言論の自由は天賦不可侵の自由」だからだということなんですね。神様がだれにでも平等に与えた権利として、言論の自由というものがあるんだと主張したわけです。

どこにあるの・・・見せてみて・・・言論の自由ってどこにある、見せてごらん・・」だれにも見せられない。これはあくまで頭の発明品。こいういものがある。これは神様が与えたものだと主張してるわけですね、理論家が・・それがとにかく言論の自由の出発点なんです


彼らが血であがなったんですよ。ドンパチやって・・血であがなった・・何人も火あぶりになったり島流しになったり、そういう言論の自由を今我々は21世紀になって、遠い極東の島国で、恩恵にあずかっている、空気のように

  
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