第一章 第一話     深夜の足音  (投稿者:大阪府 S.T.さん)

 私が深夜、一人で、このホームページを編集していた時の話です。
 その日は雨、風が共に強く、時々、突風が吹いて家が揺れる程の暴風雨でした。
 雨の音が煩わしく、編集作業に全く集中できず、諦めて席を立った時の事です。
 みしっ、みしっと廊下をきしませながら、歩く足音が聞こえてきました。
 家内がトイレに起きてきたなと気にも止めず、私はテレビを見ながら、
 コーヒーを飲んで、くつろいでいましたが、また、暫くして、みしっ、みしっと
 廊下をきしませて歩く足音が聞こえてくるのです。
 私は雨の音を、少しでも、ごまかすために、テレビのボリュームを上げていたのですが、
 どの音よりも廊下をきしませながら歩く足音が大きく、私は不思議な感覚を覚え、
 テレビの音を消して、足音に耳を集中させました。 明らかに、妻とは違う足音で、
 よく聞いてみると、廊下を往復しているようなのです。
 この家には、私と家内の二人で住んでおり、ペットもいないのです。
 私と家内でないとすると、いったい、誰の足音なのか・・・
 まさか、電気もテレビも付いているのに、泥棒が入ってくるなんて、
 考えられなかったのですが・・・
 はっきりと足音は聞こえてくる以上、確認せざる追えなくなり、私は部屋の中を見て、
 何か武器になりそうな物を探したのですが、何もなく、とりあえず、
 何もないよりはましかと思い、懐中電灯を持って、部屋のドアを開けたのです。
 そこには誰もいず、廊下の電気を付け、玄関、トイレ、台所と全てを見て回ったのですが、
 異常な所は全くありません。 納得はできなかったのですが、雨の音だと自分に言い聞かせ、
 部屋に戻り、また、テレビを見ていました。 すると、また、みしっ、みしっと聞こえてくるのです。
 私は、どうしても、その音が気になり、もう一度、ドアをそっと開け、覗いてみたのです。 
 すると暗がりの廊下を足だけがゆっくりと、みしっ、みしっと廊下をきしませながら、
 歩いているのです。 その足は太股より上がすっーと消えており、廊下の突き当たりまで、
 歩いて行くと、ピタッと止まりました。 
 私は生唾を飲み込み、どうしていいか分からず、ただ、足を見ていたのですが、ふと視線を
 上げると30代くらいの男性の顔だけがこちらを振り返り、じっと、私の方を見ているのです。
 私は思わず、「うわぁ!」と悲鳴を上げ、ドアを閉め、一人、部屋でガタガタ、
 震えていました。 テレビのボリュームを上げたのですが、どうしても足音を掻き消す事は
 できず、足音は一晩中、続き、私は一睡もできず、夜を明かしました。

 次の日、御祓いをしてもらい、足音はなくなりましたが・・・
 あの足の正体は、分からず終いです。