第八章 第二話   高架下のトンネル (投稿者:高知県 M.E.さん)

 私が会社に通勤している道に心霊スポットと呼ばれている所があります。
 噂ばかりが先走りしていて本当に霊を見た人はいず、その日も会社では、
 3〜4人の女の子が怖い話をしており、一人の女の子が
 「今夜、例のトンネル、皆で行ってみない? 明日、休みだしさ!」と
 言い出したのです。 私はその道を通って帰るという事を知っている
 女の子が「あなたも一緒に行かない?」と声を掛けてきました。
 私自身も、その噂は気になっていたのですが、毎日、通る道だったので
 別に怖くもなく、軽い気持ちで行くことにしたのです。
 待ち合わせは、深夜0時、私が着くと、まだ、誰も来ていませんでした。 
 その場所というのは電車の高架下が小さなトンネルになっており、
 トンネルの内側の壁にはスプレー等を使って、ひどく落書きをされており、
 壁の染みも今、一人で見ると人の形に見えたりと無気味で怖くなって
 きました。 街灯はあったのですが、チカチカと点滅しており、怖さを
 一層、引き立てられます。 暫くすると、会社の女の子も来て、ほっと、
 一安心し、私達は少しの間、雑談していたのですが、1時間、立っても
 何も起こる気配もなく、疲れてきて「噂はたんなる噂だね。 
 もう帰ろっか?」という話になったのです。 私も単なる噂だと思い
 帰ろうとしていると、いきなり、ガシャーンという大きな音がトンネルの
 中を響かせ、私達は、何が何だかわからず、辺りの様子を伺っていると、
 トンネルの中に、すぅーと音もなく人陰が現れ、こちらに歩いてきます。
 私達は怖くて声も出ず、お互いの腕を掴み、固唾をのんで見ていました。
 その人陰はゆっくりとトンネルの中から出てくると、私達の方に真直ぐ、
 歩いてくるのです。 顔が青白く口から血を流した無表情な中年の男性で、
 とても、生きてる人間とは思えず、怖くてどうしもうもなく、私は
 逃げ出そうとしたのですが、会社の女の子は腰を抜かしたのか、
 しゃがみ込んで私の腕をしっかりと掴み離そうとしないのです。
 男性は、もう目の前まで来ており、女の子も悲鳴を上げながら、泣き
 出していまい、私も怖くて目を閉じ必死で見ないようにしていました。
 暫くして、「おい! どうした?」と言う声がかすかに聞こえ、私は、
 恐る恐る顔を上げたのです。 そこには、自転車に乗った、おじさんが、
 心配そうにこちらを見ていました。 何とか、立ち上がり、おじさんに
 今、見た事を言うと、笑いながら「そんな話、ある訳ない。」と全く
 信用してもらえません。 でも私達3人ははっきりと見たのです・・・。
 噂がある所には何かあると私はそう思いました・・・。