第八章 第一話     真夜中の墓地 (投稿者:愛知県 Y.M.さん)

 5年も前になるのに今でも私の耳から離れない声があります。
 それも夏になると再び、あの時の恐怖を思い出すのです。

 高校2年の夏休み、仲のいい友達から肝試しをやらないかと誘われたのです。
 毎日、暑い日が続いていて刺激もなく退屈で、何より怖がりだと
 思われたくなく、行く事にしたのですが・・・。
 場所は近所の某有名な墓地で夜中の2時に現地に集まる事にしました。
 私は親が寝ているのを見計らって、そっと家を抜け出し、夜中の街を
 自転車を走らせたのです。
 待合せ場所の墓地に着くと、すでに友達3人が来ていました。
 集まったメンバーは4人で、一人ずつ、ロウソクを持って、墓地の
 奥にあらかじめ置いておいた石を取りに行くという本格的なものでした。
 順番は平等にクジで決め、私は3番目のクジを引いたのです。
 私は幽霊なんて、信じてはいなかったのですが、さすがに深夜の
 墓地ともなると、いい感じはせず、怖くなってきました。
 一人目が行くのを見ていると、なんだか不安になってきて口数も減って
 きます。 墓地の中は物音一つせず、シィーンと静まり返り、
 月でも出ていれば、まだ明るいのですが、その日はあいにくの雲空で
 星一つ、見えないのです。 ロウソクだと走ると火が消えてしまうので、
 走るわけにもいかず、参加した事を後悔していると、
 一人目が15分程で戻ってきて、「怖くも何ともないよ。」と顔を
 引き攣りながら、強がりを言っていました。
 二人目が出発し、暫く怖さを紛らわすために、雑談していたのですが、
 出発してから、20分以上、立っているのに、戻って来る気配が
 全くないのです。 私達が心配していると、「うわぁーーー」と言う、
 悲鳴が墓地の奥から響き、私達は顔を見合わせ、懐中電灯を持って、
 墓地の奥へと走りました。 すぐに友人は見付かったのですが、
 腰を抜かしているのか、尻もちをついて動けないように見えました。
 私達は、そんな彼を見て、なんだか、おかしくなり、「おい!
 大丈夫か?」と笑いながら言ったのですが彼はガタガタ震え、
 一点を見つめたまま、こちらを振り向きもせず、「あの煙り・・・」。
 私達は彼の言葉の意味がわからず、彼の視線の先を目で追うと・・・
 墓石から白い煙りが出ているのです。 お香の匂いがしたかと思うと、
 その煙りは除々に吸い寄せられるように集まっていき、やがて、
 中年の男性へと姿を変えました。 私達は驚き、手は汗でびっしょりで、
 ただガタガタ震えていましたが、私の前に現れた男性は表情を険しくして、
 「やめろぉ!!」と一言、言うと私達にゆっくりと近寄ってきます。
 私達の恐怖は頂点に達し、一目散に、その場から逃げ出しました・・・。