石積みウンチク
現在、法面や崖に擁壁を施工する時、いろいろな工法が取られております。
代表的な工法として、コンクリート擁壁や二次製品のL型擁壁・ブロック積みによるもの
等が施工されております。
昔から施工されている擁壁として、石積みが挙げられます。古くから各地でいろいろな石を
利用し、いろいろな積み方で施工されて来ましたが、私なりに考える石積みに関する事柄を述べてみたいと思います。
〔石積みの基本〕
石積みの基本形は、一つの石がその周り六つの石とそれぞれかみ合っている事です。
そうすれば、石がそれぞれ安定し、石積み(石垣)そのものが安定して見えます。古い石垣が、ハラミ(途中で膨れている事)を生じ、
今にも崩れそうに見えても、何十年と崩れないのは、基本に忠実に石を使い、基本に忠実に石積みが施工されているからです。
基本に忠実に施工された石積みは、安定感を感じますが、基本が出来ていない石積みは、圧迫感すら感じます。
石には、7つ〜8つの顔があると言われます。
石を使う場所(石の目)にあわせ、その石が最も安定する顔をつかって積んでいくことが大切です。
〔石積みにおける禁止事項〕
次に、石積みにおいて、やってはいけないことを述べてみたいと思います。次に述べるような石の使い方がしてあると、その場所
が、ウィークポイントとなり、そこから崩壊が始まる可能性がないとは言えません。名前は、いろいろと附けられていますが、石屋なら
分かっていなければいけない基本中の基本です。ここでは、玉石積みを例に挙げてみます。
四つ巻き
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一つの石を四つの石で巻いて あるつみ方。石が飛び出す可能性大。 |
八つ巻
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一つの石を八つの石で巻いてあるつみ方。 特に7の石の安定が悪い。 |
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四つ目地
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目地が四つの石によって出来 上がっている。(赤印) 上の石が、下の石の目に比べ 大きすぎるのが原因。 |
縦石
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真縦に石を使う事。 | ||
芋串
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芋を串にさしたごとく、縦に重ね てしまうつみ方。石と石が全くか み合っていない。 |
重ね石
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石の上に石を重ねてしまう事。石がかみ合っていない。 | ||
拝み石
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右向きと左向きに石を倒す事。 その上の段の目の幅がおかし くなる。 |
逆石
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石はその重みで安定するが、下側より、上が重くなるような石の使い方。 上から重みがかかると、 |
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鏡石
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石積みは控えが重要だが、 一番大きな顔を使い、控え がない石野使い方。 当然、石が飛び出してしまう。 |
縁切り
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縦、もしくは斜めに縁が切れてしまっているようなつみ方。そこで石がかみ合っていない。 |
素人さんや、造園屋さんが施工される石積みでは、特に 《逆石》 を使われることが多く、
石積みの安定感がないことが多いですね。
よその業者さんが施工された石積みを、非難はしたくありませんが、ある神社で見つけてしまいましたので見本として、解説します。
逆石といっていいでしょう。茶色のところで小バールで、 こじたら矢印の方向に石が飛び出してしまいますよ。 |
芋串、もしくは重ね石の典型。1〜3の石が重なり あってしまってます。角にも力が無く、今にも飛び出し そうです。 |
石積みの勾配がおかしいです。全体に石がねてしまっていますので、途中で膨らんで見えますね。典型的な 造園屋さんの石積みの施工です。どの角にも力つよさが感じられません。 |
※ 石積みを見るとき、角を見てください。昔から、「石屋は角で泣く。」なんていわれたもので、一番の腕の見せ所は、ずばり角。 素人さんや、造園屋さんが積まれた石積みの角には、全く力が見られません。角はやっぱり力強くみせたいものです。 |
石の質・色は違いますが、角の力つよさが、上の画像と違うのが分かっていただけると思います。
〔石積みの長所・短所〕
次に私が、今までの経験上感じ得る、石積みにおける長所と短所を述べてみたいと思います。
(長所)
コンクリート擁壁と比べ割と安価である。(丸石積み)特に、高さが高くなるほど、石積みの方が安く施工可能です。
工期的に早く仕上がる。
コンクリート擁壁に比べ、見た目に風情があるし、自然に調和する。コンクリートは、味けが全くない。
長年経過した場合、石の黒ずみ水垢は自然的で風情があるが、コンクリートの黒ずみは嫌な黒さである。
石の黒さは塩酸などで洗えば綺麗になりますが、コンクリートは綺麗にはなりません。
コンクリートの表面は風化し、表面がぼろぼろになるが、石はそれ程風化しない。
コンクリート擁壁は、基礎にかかる土圧と壁への土圧とのバランスで持ちこたえており、幅の広い基礎を施工しなければいけない。 ↓
掘削が大きく必要な為、現場が荒れる。石積みは全体で持ちこたえる為、それ程幅広い基礎は必要が無い。
なんと言っても、昔ながらの工法であり、家の造成工事において石積みをされると、値段の割に家全体が立派にみえる。
石積みの上には、板塀・ブロック塀・植栽・フェンス等なんでも乗せることができ、どれとの兼ね合いも良い。
仮にコンクリートの縮みによりクラックが入っても、擁壁ほど目立たなく、大きくずれる事は無い。
コンクリートブロックでは出せない縄たるみ勾配が出せる為、見た目が良い。
和風建築はもちろん、ハウスメーカーの家まで、どんなタイプにも合わせることができる。
(短所)
これといって思い浮かばないが、強いて言えば敷地の関係。石積みは勾配がつくため、下に比べ上では敷地が狭くなる。
勾配にもよるが、高さ1mに対し、水平で、50Cm程度さがってくる。
そのため、敷地が狭く、家をできるだけ大きく建てたい場合には、不向きかも知れません。
以上のような特徴が思いつきます。ただし、あくまで、私の経験上の意見であり、強度計算等に
基づいておりませんので、御了承ください。
ただ、昔から行われてきた工法であり、皆さんも想像がお付だと思います。