西洋館

 西洋館は明治政府によってお雇い外国人として招聘されたジョサイア・コンドルの晩年の作品です。コンドルの作品はほとんどが東京都区内に集中しており、地方に建てられたのはここと長崎ホテルくらいです。しかし長崎ホテルはもう現存していません。

 当時の建築は今と違って様式に従って設計するのが常識でした。この建物は様式的にはルネサンスとビクトリアの折衷的なスタイルの木造二階建て寄棟で、東北の隅に四階建ての塔屋(とうおく)を持ち、木造二階建ての和風邸宅と連続配置されています。外壁はモルタル塗目地切仕上で、屋根は天然スレート葺き、一、二階ともベランダが設けられています。各部屋に暖炉が付き、塔屋の窓には当時としては珍しいカーブガラスが使われています。

西洋館全景 塔を視覚上のポイントとして車寄せを中心に非対称を意図した外観。開口部の庇には櫛形と三角形のペディメントが加えられ、外壁は淡い青、窓回りは淡いクリームで仕上げられています  玄関車寄せ この部分は戦時中に爆撃を受け六華苑で唯一失われた部分ですが、平成4年の整備工事で復元されました。双柱のルネッサンス洋式で、柱頭やパラペットの手摺りのデザインはベランダにも引き継がれています
南面テラス部 1階はベランダ、2階はサンルームとなっており、起伏に富むデザインです。1階庇はわずかにカーブして日本的な表情を見せています 塔屋 コンドルはデザイン上のバランスから三層で設計しましたが、施主は揖斐川の眺望を希望し、4層に変更されました。友達が来ると先ずここへ案内し、コーヒーを飲みながら眺めを楽しんだそうです
玄関ホール 外扉はステンドグラスになっています。和館と連続しているため、日本式に靴を脱いで上がります 1階応接室 塔屋の1階部分です。応接室として使われました。窓は部屋の形状に合わせてカーブガラスが使われています。
階段回り 装飾を押さえ、あっさりとシャープにデザインされています。親柱の形状や手摺りの透し彫りなどに当時の最先端のデザインであった英国アーツアンドクラフトの影響が見られます 1階階段下の家具 当時使われていた家具はほとんど散逸していますが、唯一残っているものです。アーツアンドクラフト風の質実剛健なデザインです
1階客間 12畳ほどの広さ、南面テラス側に出窓風の張り出し部があります。家具は平成5年の移管時に調達したものです 1階客間暖炉 各部屋には暖炉と鏡が付いており、タイルの色でカラーコディネートが図られています
客間暖炉フード 銅の彫金でアールヌーボー風の装飾が施されています  1階客間天井中心飾り 白漆喰のビクトリア風のレリーフが美しい
1階食堂 隣の客間とは一転してシックなブラウン系でまとめられています 1階ベランダ なんとなくイスラム風の雰囲気があります。 床面のタイルのデザインはコンドルのお気に入りで、玄関やトイレにも繰り返し使用されています
2階ホール 手摺りのスペード型の透かし模様が美しい。窓の型板ガラスは当時のもので彫りが深い。右は塔屋2.3階へ上がる階段 2階書斎 壁装の白を基調に窓回りはブラウンのコントラスト、家具は他の部屋同様改装時に導入しました。当時使われていた物よりかなり豪華な品のようです
2階寝室ブラケット(創建時のもの) 手吹きガラスのフリルが魅惑的 2階居間ブラケット(創建時のもの) 手吹きガラスによる光の陰影を生かした端正なデザイン
2階ベランダ ガラス窓の付いたサンルーム、庭園が一望でき、日当たりが良くて冬は居心地がよい部屋です 電灯スイッチ 真鍮打ち出しの菊の花をモチーフにしたデザイン、和館にも使われています