古事記のものがたり・本の紹介


稗田の阿礼が語る ゆかいな日本の神話
『古事記のものがたり』
著者 小林晴明・宮崎みどり


本書は日本の神話『古事記』の上巻「神代の巻」を若い人たちに向けて、わかりやすく、おもしろく書き上げたものがたりです。

どこの国でもそうですが、神話には古代の人々が大切にしていた民族の素朴な心や智恵、生命(いのち)の歴史が込められています。

それらの先人の言い伝えや「心」であるはずの大切な「神話」を忘れた民族は滅ぶとも言われています。

この本が、日本文化への興味、ひいては自分たちの原点を見直す小さなきっかけになってくれることで、日本が世界に誇れる「神話」をもっていることに子供たちだけではなく、大人も気づいてくれることを心から願っております。

難解な『古事記』をわかりやすく面白くした本が発売されました。日本神話の神々のみずみずしさ、豊かさ、世界観、宇宙観にぜひふれてください。

日本の文化的財産として世界に誇れる『古事記』が、戦後軍国主義の復活を防ぐという目的で、子どもたちの教科書の中から消されました。そのため、親から子へ語り継がれてきた「いざなぎ・いざなみの国生みのお話」「いなばの白うさぎ」「おろち退治」「うみさち・やまさち」などの昔話が忘れ去られようとしています。

1998年の春、インターネットに『古事記』を若い人たちに向けてわかりやすく、おもしろく書くという仕事が入り、二人でインターネット上で紙芝居をするつもりで、一話づつにイラストをいれて連載をしました。それを見た友人、知人たちから「はじめて『古事記』に何が書かれてあったのかわかった」「面白いからぜひ本にしてほしい」などの要望が起こりました。

『古事記』は、物語としておもしろいだけではなく、古代の人々が長い歴史の中でつちかってきた「智恵」が記されています。私たちは、数年前から古神道を学び古い神社を訪ね歩き、『古事記』の勉強会などをしてまいりました。それを通じて古代の人々の意識の奥底にある心の広さや豊かさ、智恵の深さにふれることができました。

『神話』に登場するスサノオの神も天上界では乱暴者となっていますが、下界へ下りれば英雄だったりと、物事の二面性を表わしています。何か問題が発生したときなどは、八百万の神々全員が集まりよく相談し、一致団結して解決にあたります。

そのような古代からの智恵を収めている『古事記』が、残念ながら過去の歴史の中で軍国主義に利用された期間があります。そのことが日本の国を誤らせたばかりでなく『古事記』自体の持つイメージもゆがめてしまいました。

どこの国でもそうですが、神話には民族の素朴な心や生命(いのち)が込められているのです。先人の言い伝えや心であるはずの大切な「神話」を忘れた民族は滅ぶと言われています。

新しい世紀を迎えた今、もう一度古代の人々の心の中にいきづいていた生命(いのち)の歴史と智恵を呼び起こすべきではないでしょうか。



も く じ 

一話
創世の神々と高天原
二話
よいしょ、こらしょ
三話
いざなぎ・いざなみ
四話
涙から生まれた神さま
五話
黄泉の国(死者の国)
六話
黄泉つ軍との戦い
七話
両目と鼻から生まれた尊い神
八話
暴れ者の須佐之男
九話
天の安河(天の川)でのうけひ
十話
天の岩戸開き



十一話
尻に大豆、ほと(女陰)に麦
十二話
八俣の大蛇(おろち)退治
十三話
八雲立つ出雲
十四話
いなばの白兎
十五話
赤い猪
十六話
木の国から根の国へ
十七話
蛇、蜂、むかでの室
十八話
死者の国からの脱出
十九話
すせり姫の嫉妬
二十話
光る船に乗ってきた小さな神
二十一話
キジの鳴女



二十二話
キジの鳴女
二十三話
空とぶ船
二十四話
国ゆずり
二十五話
天孫降臨
二十六話
猿田彦とあめのうず女
二十七話
木花之佐久夜姫と石長姫
二十八話
火中出産
二十九話
海幸彦と山幸彦
三十話
竜宮城
三十一話
塩みつ玉・塩ふる玉
三十二話
豊玉姫とわに鮫
『古事記』は上中下巻の3巻からなる物語です。中下巻の2巻は神武天皇から推古天皇までの天皇の物語が収めてあります。

特に上巻の「神代の巻」には、宇宙の始まりから、日本の国の始まり、古代の人々の生活、習慣、智恵など、日本民族だけに限定されることのない普遍的なものまで含んだお話が描かれています。

私たちの『古事記のものがたり』は、稗田阿礼が平成の現代によみがえってきて語るというスタイルをとりました。

『古事記』に登場する神々が、現在、祭神としてどこの神社に祀られてどのような働きをしているのかを、私たちのわかる範囲で調べ、具体的な地名を示しながら物語の中に包み込みました。

この『古事記のものがたり』は『古事記』の原文を忠実に現代語訳したものではなく、『古事記』の記述にのっとりながら自由に内容をふくらませています。それは私たちが、主にインターネット世代、ゲーム世代である15歳前後の人たちに『古事記』を伝えたいと思ったからです。

日本の風習の起源やその意味なども従来にない新しい感性で、盛り込んでいます。「地球の自転の話」「日本で初めての夫婦喧嘩」「しめ縄の起源やその意味」「言葉に宿っている魂の話」「数の不思議」「神々の性に対するおおらかさ」など、あげればきりがありません。

登場する個性豊かな神々の描写もおもしろおかしく表現しました。「一本足で田んぼに立っている案山子のくえびこ」の登場シーンでは、原文は「くえびこ来て申すには」としか書かれていませんが、私たちは「案山子であるくえびこは、雨や風にさらされてぼろぼろで、悪臭を放っていました」などとイメージがわくように表現しています。

『古事記のものがたり』に触れることが、『古事記』への導入、日本文化への興味のきっかけになってくれることを心から願っています。
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