あきこの俳句
NO:7
2006年 1月〜12月
あたためし思ひ一つや初詣
結ばれし万のみくじや初御空
待春の光こぼして菜を洗ふ
父に汲む厨の水の温みけり
なむなむと幼合掌冬座敷
今日生きて哀しみふやす冬さうび
みどりごに日差しほんのり春障子
少年の追い越してゆく春の坂
かんばせに春の愁ひや技芸天
ほろほろと遠き日こぼれ雛あられ
初蝶は光のなかに生まれけり
現し世の塵を払ひて雛納め
満目の星あふれきし春の波
天心に春満月のしたたれり
とびこへてまたとびこへて春の泥
折り上げて夢分かちあふ雛かな
花ちるや手をさしのべてマリア像
けふよりは光に紛れ夏の蝶
紅梅の触れたる空の青さかな
ふるさとの山河遍し雲の峰
一日は水輪にのせし水馬
白日傘いつも小さき影連れて
ほうたるの闇より生まれ闇に死す
牡丹のいのち崩れし真白かな
碑の肩あたたかき緑雨かな
あをあをと雨の匂ひの夏木立
夕さればふるさといつも蛍とぶ
一日また心に栞り大夕焼
銀漢を容れて山の湯あふれけり
いっせいに竿灯の夜たち上がる
夢の世に生まれあはせて盆踊
よみがへる神話あまたや星月夜
秋の蝶残る日数をこぼしけり
つゆ草の瑠璃一滴をこぼしけり
講堂の硝子百枚秋光る
キャンバスの光となりて銀杏散る
今にして父の背大き寒夕焼
戦なき世を生き継ぎて秋刀魚焼く
母の手をさするやすらぎ小春かな
いとほしむ母の命や葛湯吹く
ふるさとの駅の暮色や雪しんしん
耳順てふ日月早し冬薔薇