初手水指の先より目覚めけり 微笑めば微笑み返し初鏡 短日の夕日貰ひしリフトの灯 牡蛎割ってふるさとの海滴らす 漆黒の闇へオリオン駆け上がる 病棟に鬼飾られて追儺待つ 郷愁の香り丸めし蜜柑かな てのひらにのせて親しき土雛 澄まし顔少し緩びし雛の午後 連れ添うて雛は歳を取らざりき 幼子は拍手大好き山笑ふ 千年の後もふるさと雪解風 振り向けば邪馬台国に春の月 掌のかたちに掬ひ涅槃雪 一輪のあをぞら掴み初櫻 板前はみな美男なり木の芽和 東山三十六峰木の芽風 満開の花の上なる天守閣 留守番は柱時計の遅日かな 春昼のからくり時計動き出す 満開の花の上なる天守閣 晩翠の碑洗ふ余花の雨 合掌の静寂満たして朝桜 新緑を樹海に惜しむ一日かな いくたびも別れし街やなごり雪 悉く光年をきて星涼し 母の名の香水パリに売られけり ふるさとに愁ひを残し夜の秋 トンネルの繋ぐ漁港や夏盛ん 湿原は風の遍しあやめ草 綿菅の白つくしけり神の沼 碑の詩口ずさむ秋桜 秋草は空の青さを束ねけり 木道は雲に尽きたる草紅葉 ひとり聴くフジコヘミング夜の雪 枯れ芒大き青空残しけり 裸木のあまさず掴む空の青 |