近年、アレルギー疾患は増加傾向にあります。
当院ではアレルギー専門医により、アレルゲン(※1)の検査、薬物治療、減感作療法(※2)、生活指導などを行っています。
(※1)アレルゲン
アレルギー疾患をおこす原因物質です。体質により人それぞれです。皮膚反応や血液検査により調べることができます。
(※2)減感作療法
原因アレルゲンを皮下注射しますが、極微量から開始して徐々にアレルゲンの量を増やしていきます。それによりアレルゲンに対する反応しにくい体質にしていく治療法です。定期的に注射して3年程度継続して行うのが一般的です。特に花粉やハウスダストに対して有効です。
・ 病院長:土橋邦生 | アレルギー専門医・指導医 | |
・ 理事長・副院長:笛木直人 | アレルギー専門医・指導医 | |
・ 呼吸器内科部長:山田秀典 | アレルギー専門医 |
当院は、日本アレルギー学会指定教育認定施設です。
生体は外界の異物と接触すると、異物に反応する"抗体"又は"感作リンパ球"を作り出します。異物とこれらの抗体又は感作リンパ球が反応して異物(例えば細菌)を無害にすることを"免疫"といいます。これに対して、これらの反応が生体に障害を起こすとき"アレルギー"と呼びます。
1型アレルギー反応は、異物(例えばハウスダスト、ダニ、花粉、食品―この場合アレルゲンと呼びます。)に反応してIgE抗体(下記参照)を作り出し、再びこれらの異物と作られたIgE抗体が結合したことで起きるアレルギー反応です。この反応はアレルゲンを吸入、接触、摂食すると数分後から30分で反応を起こすので即時型アレルギー反応といいます。IgE抗体を作りやすい体質をアトピー素因といいます。
IgE抗体
即時型アレルギーの原因となる抗体。アトピー体質を持つ人がアレルゲン(例えば花粉など)との接触を繰り返すうちに体内に蓄積され、量が一定ラインを超えるとアレルギーを発症する。具体的には、そのアレルゲンが再び体内に侵入したときに肥満細胞上にはりついたIgE抗体と結びつき、ヒスタミンなどが放出され、これらが血管や神経を刺激することでアレルギー症状が出る。
喘息は発作性の咳・痰・呼吸困難を示す呼吸器疾患です。発作がない時は健常の人と変わりません。多くの患者はアトピーを持ち、アレルゲン吸入で悪化します。
喘息の患者さんの多くはアトピー素因があります。同じアトピー素因を持っていても呼吸困難発作を示すのは気道過敏性という体質があるからです。
喘息発作は可逆性の気道収縮です。メカニズムは気管支筋の収縮、気管支粘膜の浮腫によります。
喘息発作を起こす引き金にはアレルゲン吸入、感冒、気象変化などがあります。
喘息は気道の慢性炎症性疾患です。アレルゲン吸入、感冒罹患は気道の炎症を起こし、気道過敏性を亢進させます。
喘息は多い病気で、一般人口の9%前後が1年のうちに繰り返して"喘鳴(ぜーぜー)"を経験しています。
喘息発作で死亡することは減りましたが、1年間3000人前後の患者さんが喘息により亡くなっています。
花粉に対してIgE抗体が作られると、花粉シーズンに、鼻水・くしゃみ・鼻づまり・目の痒み、さらに喘息の悪化が起きます。
どの花粉が原因かを調べて、シーズン中はマスクなどで吸入を抑えます。その上で抗アレルギー薬の服用、点鼻・点眼で治療します。早い時期に治療開始するのが要点です。
症状が強い人では病因アレルゲンの注射療法をします。
特定の食品を食べると起こる症状で、食後15~30分で起こります。
口内異常感、腹痛、下痢、吐き気、嘔吐、じんま疹。ひどい時は喉頭浮腫で呼吸困難、また血圧低下し、ショック症状が起きます。
予防:経験からどの食物が悪いかわかるが、皮膚反応、RAST法でIgE抗体を確認し、その食品を避けましょう。
ショック時:重いショックにはエピネフリン剤を皮下注射します。エピペンという救急自己注射セットを用意しましょう。
果物(キウイ、バナナ、メロン、モモ、パイナップル、リンゴなど)や野菜などアレルゲン性のある食品を食べると口腔粘膜や口の周囲にじんま疹様の反応を起こすことがあります。しかし、食べてもアナフィラキシーにはなりません。アレルゲンが消化されたためと考えられています。
食物アナフィラキシーの症状として、全身にじんま疹が出ます。時に眼瞼、口唇が腫れます。これは血管浮腫といいます。多くは抗アレルギー薬で軽くなります。原因をRAST法などで明らかにして食べないようにします。
アトピー体質があると、乳児・幼児の頃から、痒みを伴う湿疹が出ます。学齢に達すると軽くなることが多いのですが、近頃は大人になっても軽快しない人が増えています。
アレルギー性疾患の治療には、その原因アレルゲンを確認することが大切です。