生活者ネットニュース こだいら No.71    2005年10月5日


学校での子どもの安全・安心を考える
 

 学校での子どもの安全をどう守っていくか、今、このことが大きな社会的課題になっています。奈良県では「子どもを犯罪の被害から守る条例」ができるなど、子どもを守ることイコール不審者対策に傾きつつあります。子どもの周りには他にもさまざまな危険が潜んでいることを認識し、子どもにとって本当に必要な安全対策とはどのようなものか冷静に考える必要があります。 

広範囲におこりうる学校災害
  池田小学校や寝屋川市の小学校での事件を契機に、学校における防犯や安全管理に対する関心が高まっています。学校では校門の施錠、警備員の配置や監視カメラの設置など子どもたちへの管理・監視にシフトした施策が進んでいます。奈良県でできた「子どもを犯罪の被害から守る条例」は子どもに不安を与えるような「声かけ」を禁じ、罰則を盛り込んでいます。このような動きは、子どもと大人の信頼関係を失わせることにつながるのではないでしょうか。学校という場所が子どもたちの育ちの場であることを考えた場合、ただ警備を強固にするようなやり方が、社会性を養い人間関係の基礎を築く学校に、果たして相応しい安全対策といえるかどうか、そこは慎重な議論が必要です。
子どもの安全をめぐる問題を考える場合、どうしても衝撃的な事件がクローズアップされますが、メディアが採り上げるような突出した事件のほかにも、子どもたちの周りには、さまざまな危険が潜んでいます。校舎、体育館やプールでの事故、またO-157など衛生管理によるもの、地震などの自然災害や通学途中の交通事故など、学校での子どもの事故は、多様でかつ広範囲に起こりうるものです。私たちは、このような学校災害全体に目を向ける必要があります。また、従来から問題となっている、いじめや体罰、集団暴行などを含めて、子どもの生命の安全にかかわる問題について総合的に検討し、解決していくことが必要です。

子どもの育ちを妨げない安全対策を
  子どもの成長過程の中で、走ったり、昇ったり、ぶら下がったりといった冒険は必要な経験です。怪我や事故を心配するあまり、子どもを囲い込んでしまって、すべての危険から遠ざけてしまえば、子ども自身の育つ力を阻害してしまう危険性があります。転ぶと危ないからと子どもが走るのを禁止するのではなく、転んでも大きな怪我にならないような環境をつくることで重大な事故を防ぐことができます。同様に、遊具の点検や安全基準の作成などを行い、事故の未然防止を図っていくことが必要です。私たち大人は、このような視点から発達段階にある子どもたちにとって、どのような安全策が必要か判断することが大事です。大人が整えるべき環境は、決して子どもの成長を阻害するものではなく、促すものでなくてはなりません。
  防犯についても、学校の中や地域での信頼関係をつくっていくことを基本にして、対策を考える必要があるのではないでしょうか。そういった視点から、今後は子どもの目線を通して、子どもと大人が一緒に通学路の危険箇所をチェックする安全マップづくりや、子ども自身が持っている潜在的な力を引き出し、危険を回避する力をつけさせるために、CAP(*)のプログラムを授業に導入するなどの試みも重要な取り組みです。また、教職員の防犯訓練や地域のボランティアにパトロールを任せるといった傾向が見られますが、そのような安全対策には限界があります。教育委員会としての責任ある対策も必要で、開かれた学校づくりとあわせて進めていくことが欠かせません。
  子どもにとって安全・安心な学校にしていくことは大きな課題であり、決め手となる解決策はありませんが、子どもの育ちに配慮した環境整備、安全対策について今後もさまざま場面で提案していきます。
    CAP(キャップ)とは「子ども自身が自分のこころとからだを守る方法」を寸劇などを通して具体的に体験・学習するプロ                  グラム。

議会報告・・・2005年9月議会報告はこちら


こだいら21世紀構想

   ―小平市第三次長期総合計画基本構想― 
が決定しました。

基本構想は、市町村が総合的で計画的な行政運営を図るために、議会の議決を経て定めるもので、地方自治法に1969年位置づけられました。小平市では、70年に15年間の基本構想を初めてつくり、第二次の基本構想は期間を20年間にして85年に、そして今回第三次の基本構想が議決されたのです。期間は2006年度〜2020年度の15年間。『こだいら21世紀構想』と題して、将来都市像で「躍動をかたちに 進化するまち こだいら―緑と住みやすさを大切に さらに自立し活力あるまちの実現をめざします―」と掲げています。
  また、基本構想をベースにした長期総合計画・前期基本計画(06年度から10年間)の策定も進められています。基本構想が理念や方向性を示しているのに対して、基本計画はもう少し具体的な方針や事業に言及するものになり、これらを合わせて長期総合計画と呼んでいます。ちょっとややこしいですが、今後の小平市を描く行政計画で、さまざまな計画の根幹となるものです。
  この長期総合計画の策定は、02年度の世論調査から始まり、まちづくり懇談会やワークショップ、パブリックコメント、公募枠を設けた審議会など、市民が参加できる場を多くつくって検討をすすめました。私たちも参加を拡げるようはたらきかけ、それが一部実現したところもあります。たしかに意見が言える場は多くなったのですが、参加者が少なかったり、参加した人が納得できるものでなかったりなど、参加のあり方にはまだまだ課題があります。議会では、昨年12月議会の特別委員会設置以来、これまで議論を重ね、今回の議決になったものです。八方美人的な基本構想ですが、自治を意識し、市民とともにまちをつくるという方向性に期待を持っています。今後は、基本計画が今年度中に策定され、来年度から実施されていきます。  (苗村洋子)
 

視察報告
豊かな自然の中で子どもが主役のグリーンウッド       岩本 ひろ子
  7月末に、長野県の泰阜村にあるグリーンウッド自然体験教育センターを視察しました。
  グリーンウッドは子どもたちへの自然体験教育を行うNPOで、その前身団体の時から数えると既に20年の実績を持つ草分け的な存在です。現在14名のスタッフがおり、1年間の山村留学「だいだらぼっち」や短期のキャンプをはじめ、アジアの子どもたちとの国際交流や、村との共催で新潟県中越地震などの被災地の子どもたちを支援するキャンプなど、自然体験、野外教育の拠点として、幅広い事業をおこなっています。
 活動の原点は「だいだらぼっち」で、最初は普通の短いキャンプから始まったそうです。今年度、全国から集まった子どもたちは、小学校4年生から中学生までの17名。不登校であったり、短期のキャンプがきっかけだったり参加の動機は色々ですが、みんな自分の意志で来た子どもばかりです。子どもたちは、ここで泰阜村の小学校、中学校に通いながら、1年間親元を離れて集団生活をします。食事の支度や部屋の掃除、風呂焚き(五右衛門風呂でした)など、すべて自分たちでやります。なんでもみんなで話し合って決め、計画し、自分たちで行います。はじめは失敗しながらも、自分で考えて実行するという経験を通して、子どもたちは成長していくそうです。
 20年前活動をはじめた頃には、ちょうど戸塚ヨットスクール事件などが影響して、地域住民の活動への理解がなかなか得られなかったそうですが、その後、自治会や消防団活動などの地域活動に参加しながら、この地域に溶け込んできたとのこと。活動が評価されるようになり、主催するキャンプの参加者が年間900人も集まり、食料費だけでも1千万円が地元に落ち、今では地域経済にも貢献しています。まだまだ経営的には厳しく、課題も多いのでしょうが、自然体験から人権教育や環境教育に広げる視点をもつグリーンウッドの活動に期待したいと思います。

■編集後記 今年は3回もの選挙。特に今回の急な 選挙はさまざまな方面に影響を及ぼしましたが、 私たちのニュース発行にも大きな影響が…。K