生活者ネットニュースこだいら   No.72
高齢者をサポートする地域ケア

介護保険の制度改正で予防が重視されるなど、介護保険事業の変化が予定されています。介護予防が入ることによって、1人の高齢者を身体などの状況変化に合わせて、さらにきめ細かくみていくことが可能になるはずです。

介護保険はこう変わる
  高齢者へのサポートは、介護保険だけではありませんが、制度開始以降、今では地域のケア体制で大きな位置を占めています。2006年度から変わる今回の改正は、国の歳出抑制ばかりが目につきます。しかし、予防重視や、地域で在宅ケアをささえるという考え方は必要です。これによって、1人の高齢者をトータルに見ることやそれぞれの地域によってやり方を考えることができます。
  具体的には、地域包括支援センターが大きな役割を担うことになります。小平市の場合、市内を4つの地域に分け、各地域の包括支援センターが中心になって、在宅介護支援センターとも連携しながら、相談から介護予防のケアマネジメント、虐待防止などの権利擁護、地域で活動するケアマネジャーへの支援など、地域の拠点として動き出します。

予防と小規模多機能
  介護予防では、筋トレ(筋肉トレーニング)や家事援助不要論などが話題になりました。体育機具を使って筋肉をつけるとか、ヘルパーが家事をするから本人が弱るという議論です。筋トレは、確かにいい場合もあるでしょうが、だれもが合うとは限りません。また、家事援助は本人の自立をサポートするやり方もあります。その人にとって何が必要なのか、本人の意思を尊重して決めていくことが大切です。
  今回の改正でもうひとつ注目されているのが、小規模多機能型サービスです。これは、全国のあちらこちらで開設されている宅老所の成功がモデルになっています。デイサービスや訪問介護、短期間宿泊もできる場所で、在宅ケアをトータルにささえるという点では、地域に密着したこのようなサービスは歓迎すべきものです。でも、各地の宅老所の話を聞くと、現場の発想で地域での地道な実践を積み重ねてきたものが、制度化されることによって、似て非なるものになるのではないか、融通のきかない使いにくいものになるのではないかと危惧します。

地域でつくるケア体制
  介護保険も含めた高齢者福祉施策では、今後自治体の役割がますます重要になってきます。地域でどんな事業をすすめていくのか、社会福祉法人や民間事業者のほかに、NPOや市民活動団体、その他さまざまな機関と連携して体制をつくっていく必要があります。
  高齢化が進む中で、地域で暮らせるケア体制をつくるには、今や市民としての実践や提案が欠かせません。地域のニーズは何なのか、一緒に考えていきましょう。

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介護保険制度の改革を前にして                NPO法人ACT小平らいふえいど 山田

 介護保険制度に携わり丸6年が経とうとしています。その中で今回、2度目の改革が行われようとしています。
  制度が始まったばかりの頃は、とにかく介護保険のことを広めていくことが優先されましたので、「このような場合、介護保険がお使いになれるんですよ。」というお話をよくして回ったものです。便利さを喜んでいただくことも多くありました。
  それが今では、通院時でも病院の中では医療が優先されるので介護保険はつかえません、同居のご家族がいらした場合はおそうじはちょっと・・・というような内容にかわってきました。1度利用されたかた、それも年を重ねたかたばかりですので、理解して頂くには時間がかかります。そして今度は、介護予防、包括支援センターなど新たな方向が打ち出されてきました。利用者さんも、こちら事業者がわも実際に始まってみないと詳細は分からない、というのが正直なところですが、今後資料を調べたり、ケアマネージャーや市の担当者と相談することが増えていくことになるでしょう。まずは、12月19日の全国課長会でのまとめをWAM NETで検索することからかな、と思っています。介護保険制度のもとでのサービスではありますが、自立援助という視点はかえることなく、これからもよりよいサービス提供に努めていきたいと思います。

                          


議会報告・・・2005年12月議会報告はこちら

多くの市民が関わって自治基本条例をつくろう

 昨年の5月から始めた「自治基本条例」の学習会は、周年行事を含めて4回開催しました。最初の2回は、自治基本条例が必要になった背景や、作り方を各地の例をあげて学びました。3回目は周年行事にあわせて、辻山幸宣さんを講師に講演会を開き、自治基本条例は市民がつくることに意味があることを再確認できました。4回目の学習会では、条例づくりに参加した多摩市民から、できるまでに市民がどうかかわってきたかや、できてからの市民の意識の変化を聞くことができました。どの回も参加者から活発な質問が出されています。今後は、自治基本条例に限らず、自治を広げるための条例やしくみづくりについて学習会を開催していく予定です。詳細は決定次第お知らせしますので、みなさんの参加をお待ちしています。


八ッ場ダム住民訴訟 −1周年集会報告
   
  群馬県吾妻町に建設が予定されている八ッ場ダムは、構想の発表から50年以上が経過し、今では
治水上も利水上も必要性がないにもかかわらず、4600億円(関連事業費および利息を含むと8800億円)という巨額の資金を投入して計画が進められようとしています。昨年「八ッ場ダムをストップさせる市民連絡会」が発足、6都県の会が住民監査請求を経て、八ッ場ダム住民訴訟を起こしました。
  11月27日に開催された1周年集会では徳島県元木頭村の村長だった藤田恵さんが、「はじめて国の巨大ダムを止めた村のたたかい」と題してユーモアたっぷりに経過について語りました。現在の裁判の状況の報告、6都県(群馬・栃木・茨城・埼玉・千葉・東京)のこれまでの活動や現地での再建をあきらめて次々と他の地域への移転がすすむ現地の状況の報告もあり、200名近くの参加者は改めて活動の継続を決意しました。

ひとこと提案

 2005年も多くのご意見、ご提案をお寄せいただきありがとうございました。いただいたご意見は、内容を整理、検討し、まとめて『予算提案』として市に提出しました。06年度予算提案は小平・生活者ネットワークホームページからリンクしている地域協議会のページに掲載しました。あわせてご覧ください。 また、12月に「自転車」と「健康施策」について、ヒアリングを行い市の担当者と意見交換をしました。
これからも私たちは市民の声を議会に届けてまいります。


視察報告

市民ニーズを市民が実現                                苗村 洋子

  10月に行われた建設委員会の視察は、はじめから意図したわけではないけれど、テーマが「市民活動」となりました。市民団体が運営しているコミュニティバスとして京都の「醍醐バス」、四日市の「生活バスよっかいち」、そして豊中市では、まちづくりや景観づくりの取り組みとともに、千里ニュータウンでだれでも気軽に立ち寄れるフリースペース「街角広場」(バスで移動中に豊中市職員が突然入れてくれたオプションツアー)と、どれも市民活動が的確に市民ニーズをとらえている事例です。
  なかでも、四日市のコミュニティバスは、少し背伸びするだけで手が届きそうなやり方で、とても興味を惹かれました。民間バスの廃止により公共交通の空白地域(最寄り駅まで約2q)となった場所で、1日5.5往復、約2時間おきにバスが走っています。運賃は1回100円ですが、月ぎめの割引フリーパス券も発行しています。1か月の運営資金は、運賃約10万円、沿線の事業者・商店からの協賛金50万円、市補助金30万円で、バス購入から運行などを含めてバス会社に80万円で委託しています。残り10万円でNPO法人を運営していて、事務所は理事長自宅の一角、フリーパス券を理事長がパソコンで手作りしていました。乗車人員も増え、バスが定着してきたようです。成功のカギは、ねらいをはっきりさせたことにあると思います。対象を主に高齢者とし、利用目的を買い物と通院に絞ったのです。そのため、朝8時台から夕方6時台までしか走っていませんし、土日の運行もありません。経済的に可能な範囲で市民ニーズをどこまで実現するか、接点を探った市民の知恵の結晶なのです。
  理事長の西脇良孝さんは、定年後、 地域に必要な活動を積極的にしています。このバスも「机上の論理でなく、やろうとして課題をひとつずつクリアしていくことで実現した」と語り、今後の課題も示してくれました。バスの中では乗客どうしの会話がはずみ、終点のスーパーに横付けされたバスの座席には、買い物帰りに乗るため荷物を置いておくコミュニティの安心感がありました。

こんなことしています『金曜サロン』
   
  地域で豊かな活動をしている多くの人から是非お話を聞きたいと2年前から月に1度、第一金曜日の夜(原則)午後7時から開催しています。
  最近では、
○小平市おもちゃ図書館「こっぺ」の梅田さん、福本さん、高橋さん
   障がいがあってもなくても子どもたちがおもちゃを通して楽しく遊べるようにとはじまったボランティア活動です。全 国には、500カ所もおもちゃ図書館があります。
「こっぺ」は小平の地名からつけたそうです。
○雨水市民の会の田中さん
   中国の黄土高原の「穴ぐら水」イランの砂漠の地下水路「カナート」ペルーのアンデスの「霧利用」など世界ではいかに雨水が重要な生活のための水として利用されているか、また墨田区で行われている雨水利用について聞きました。
○移動サービス「バイユアセルフ」の佐藤さん
   ずっと思い描いていた移動サービスの構想を、バイユアセルフで実現させました。バリアフリー化されている事で選んだ都立高校の障がい者としての第1号の入学者だったことなど、現在活動する中での課題に対しても常にエネルギッシュでパワフルな姿勢に感動しました。

  お茶を飲みながら、リラックスした雰囲気で、活動の「報告」ではなく、経験や考えを「話し」ていただきます。
   内容はさまざまですが、お話を聞くたびにゲストの活動に対する想いが伝わってきます。
   どなたでも参加いただけます。
 
   今後の予定
   1月12日(木)太陽光発電所ネットワーク高柳さん
   2月10日(金)生活支援センターあさやけ伊藤さん
     *お茶菓子つき300円
     *お問い合わせはネット事務所(042-342-4494)まで


岩本ひろ子のどきどきコラム

  情報に惑わされずに…

 健康ブームが続いています。テレビ番組では、血液がさらさらになる、コレステロール値が下がる、ダイエットに効果があるなど、食べ物と身体との関係について扱うものが、高い視聴率をあげているようですし、栄養補強のためのサプリメントを利用する人も増えていると聞きます。
  私自身は、農薬や添加物、遺伝子組換えなど食の安全にはこだわりを持って活動していますが、健康食品やなんとかに効く食べ物といったことにはほとんど興味がありません。ですから、番組で紹介されたものが一時的にブームをひき起こしたり、スーパーで売り切れなんてことも珍しくないという話を聞くと、健康への関心の高さとテレビやタレントの影響力の大きさに改めてびっくりしてしまいます。
  もちろん、こうしたマスコミの情報が、全然根拠がないということもないでしょうが、きちんと科学的に証明されたものかどうかは疑問です。すぐに鵜呑みにして特定の食品に飛びつき試したとしても、効果があるとは思えません。特定のものを毎日食べるより、旬の農産物や魚介類、豆類などなるべく多くの品目をバランスよく摂るように心がけた方が、身体にいいと思うし、何より食生活が豊かになるような気がします。
  少子高齢化社会に向い、社会保障の見直しの議論や介護保健の改正、医療制度改革が行われている今、健康への関心はますます高まっていくことでしょう。大量に流れてくる情報の中から必要なものを選ぶのは大変難しいことですが、正しい情報かどうか判断し、自分自身で選び取る力を養うことが今後ますます重要になってくるのではないでしょうか。
  様々な情報に惑わされたり、ブームに流されることなく、今年も自分の健康に留意していきたいと思います。



遠くのダムよりも雨水利用                         雨水市民の会 田中 清子

 今年9月、杉並や中野区の一部地域が集中豪雨による都市洪水に見舞われ、浸水被害が発生したのは記憶に新しい。数年前には下落合でも地下室に雨水が流入して、住人が亡くなる事故が起きている。こうした被害や事故は予想できないとはいえ、東京がいかに雨に弱い都市構造かという象徴的出来事だと思う。
  東京に降る年間雨量は約24億トンにのぼり、総水使用量約20億トンを遙かに上回る。ところが、コンクリートとアスファルトの巨大都市は大地を潤すこともなく大半を下水として捨て去ってしまうのだ。そして時に、短時間に排出された雨水で下水道や河川はギブアップしてしまい、住宅地にあふれる。健全な水循環が断ち切られた都市の現実である。
  日本建築学会は23区の住宅の屋根面積から年間9500万トンの雨水を貯留する可能性があると試算している。今、計画されている八ッ場ダムの総貯水量1億750万トンの約9割に相当する。その雨水を水源として、住宅や学校のトイレ、屋上緑化、公園の樹木や花壇、庭やテラスのガーデニングなどで、東京を緑や花でいっぱいにすることも夢ではない。
  環七地下の巨大雨水貯留槽でも対応しきれなかった降雨対策は、今後河川の堤防強化だけで解決するのは不可能ということだ。降る雨を浸透させ、貯留して「健全な水循環を取りもどす街づくり」に転換する時期ではないだろうか。遠くのダムよりも雨水利用を!

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