本番舞台裏日記

Word By 藤井美保

戻る

初日。

キムチ氏が着物を着付けてくださった。七五三からバーのマダムまで実に匠の技である。聞くとおじい様が呉服屋さんだったそうな。さすがである。

男の着物すなわちバナナの大好きな大竹野氏であるが、K山氏や舞監のOM氏に着付けてもらっていたようである。大竹野さんの着付けをするOM氏はなぜか黒子さんのように様になっていた。

炊き出しはおにぎりだったように思う。ダラダラ組とハリキリ組にぱっきり分かれている今回の座組ではK山氏の発声練習やいそいそ小道具の用意をするO氏、炊き出しのK氏、着物準備を整えるK田氏たちと、タバコを吸ったりコーヒーを飲んだりしてバカ話花を咲かせる人々に分かれていておもしろかった。

セリフも入っていない私はそのどちらでもなくただただ焦っていた。いざ本番の出来は、やはり雑だったらしい。私は絶対間違えてはいけない最期のセリフを2回とも全滅させてしまった。ふしぎにアンケートを見る限りだれもおこっていなかった。

2日目。

怒涛のように過ぎていった。大竹野さんはやっぱりバナナを食べて楽屋のなかでM田氏のセリフのところでいつも笑っていた。

3日目。

やっとセリフが入ってきた。皆、打ち上げのビールのことを考える余裕も出てきているかも。でも セリフがめちゃくちゃ※1 なので皆で着替えたりメイクをしながら返しをする。

本番、やっとセリフを2回とも言えて私は楽屋で拍手で迎えられた。今日は飲むだけ飲んでタクシーで帰るぞと決め、桂に行った。甘いチューハイを飲むだけ飲んで酔っ払った私は、ナカサゴとウチダのあいだで大満足だった。

G氏、舞台に出して良し、舞台に仕込んで良しのTS氏もいる。もう楽しくてしようがなかったが、絵心が湧き始め若者から緑のマジックを取り上げ、まず最初にナカサゴ氏の首に「ヘンタイ」と書いた。そのとなりのMコ氏の首に「ケダモノ」と書き、S氏の腕に薔薇の花を書いた。次にO氏に薔薇の花と蝶々を、Mコ氏の背中に毛がないのはこのごろ車に乗っているからですと書き、K谷氏のリクエストで私が最後まで言えなかったセリフ「冷蔵庫にちぎりこんにゃくが入っていますから」と書かされ、続いて、その腹いせにS氏の腕に「冷蔵庫にゲルトハイデルシュトルムのバイゼルンクラウトのアルトバイエルンが入っていますから」と書き、大竹野さんに腕時計と小鳥とひまわりを書いた。

このあたりからマジックで人体に絵や字を書くことが一部の人間に流行し始め、舞監のOM氏にも「可憐ななんちゃらという花を描いてください」といわれたが、そんな不思議な名前の花は知らないので勝手に薔薇を描き、さっきひまわりの絵をかいたK山氏がなぜか寝転んでいるOM氏にあんまをしていたので、わたしもOM氏を上から下まで踏んでK山氏の助手をつとめた。もっともっともーっとのんだりかいたりしたかったが、K田氏がつぶれたので帰ることになった。

描いてあげられなかったひと、次回までごめんなさい。なおタクシーの中でずーっと怒っていた私のほうが寝てしまったそうで、K田氏に聞くとタクシーの運転手さんに、「あんなにもっと飲みたかったのにと怒っていたのに、すぐに寝ちゃったね」と突っ込まれていたらしい。

寝た私は元気になり、起きていたK田氏はタクシーの中に財布を忘れるまで疲れきり、おまけにタクシーを降りた植え込みで即、顔面から倒れていた。次の日朝から植え込みに財布を捜しに行ったり、警察に報告をしにいったのはもちろんしっかりもののわたしである。

大人というものは、自分のやったことに責任がとれなければいけない。今日お礼を言うのを忘れていたが、最後の最後までどうしようもない大人たちの面倒を見、ぱしり、ごはんをつくり、託児所などをひきうけてくれた、水羊羹好きの北花田のS君、子ども好きの我孫子のM君、そんなことをしたこともない長居のF君、w)住道のガンジーH君、そしてSちゃんとM君、ほんとうにあなたたちのおかげでダメ大人の人たちの学芸会を終えることができました。ダメ大人を代表してあらためてありがとうございました。おわり

※1

めちゃくちゃにならないように、ですね・・・。