Word By 藤井美保
孤高の大作家、荒野の詩人、安全靴の天使、われらの大竹野さんがついに世俗の賞を取るという快挙!まことにおめでとうございます。くじらファン待望の受賞記念日の本日8日を私Fが実況中継でお伝えします。
朝、大竹野氏仕事、K氏仕事、K田氏仕事なので、K田氏が出社の間際、今日はいけないけれど、大竹野さんの残念会があるので精華小に行くように言われなんばと言う駅で降りる事を教わり、11番出口でK氏と待ち合わせしてもらう。6時半なんばで降り、なぜか8番出口と思い込んだ私は20分くらい待って目の前で立ちながらおしっこをする人がいたりしていやなので、K氏に電話をすると、なんと11番出口だという。あわてて11番出口にはしると、K氏がいてほっとした。
大竹野さんは とてもしらふではいられない※1 のでお酒を飲みに行ったそうだ。私が「え?わたしたちも今日はやめてそこへ飲みにいきましょうか」というと、K氏はなんと大竹野さんが佳作をとったと5時ごろに電話があったという。それならば本人を引っ張っていかねばと、焼き鳥屋を探すもみつからず、精華小のまえで電話をかけると焼き鳥屋の店の2階で飲んでいるという。待つこと10分あまり、大竹野さんは赤い顔をしてやってきたが、またタバコを吸いに行ってしまう。仕方がないので受付で、私が「大竹野正典」と小学生の字で書いて急いで会場に入った。
赤い顔をしながら、ペットボトルのお茶を飲む大竹野氏。はらはらしながら氏の服装をチェックするk氏。ちゃんと舞台にまっすぐ立っていられるのだろうか。しばし緊張が続く。審査員の人が言うことはここでは省略するが、とにかく大竹野さんの作品に×をつけた人はひとりもいなくて、ダントツでよかったとべた褒めだったと思う。大竹野さんもちゃんとまっすぐ歩いて「僕の作品は戯曲なんてたいしたものじゃなくて、ただの台本で、役者さんやスタッフさんみんなのおかげでできているので、とにかくありがとうございます」みたいなあいさつで、けっこうかっこいいなと思った。
終わったらその場でビールが振舞われたので、いじましくいただいた。きのうまでは「くじら企画の人間ではない」と最上級で否定していた音響のP氏も「今日はくじら企画の人間として心行くまでただ酒をいただきます。それにしても佳作というまた中途半端なところが大竹野さんらしくてイイですね。」と相好を崩されていた。大竹野さんもいっぱい写真を取られていましたが、表情はいつもどおり堅く、検挙されて何も考えられない状態の犯人のようでシブかったです。
ふと見ると、カルピスソーダを手酌で飲んでいる遊撃隊のKI氏がいました。かかとがいたいのでビールは飲まないそうです。しばらくしてK氏が「あたしサヨナフを褒めてもらったから、審査員のM氏に住所を伺ってぜひ見に来ていただきたい」と小さい声で言った。それはいい、それはいいと促したが、どうしても恥ずかしいとおっしゃる。私もつつましいほうではあるが、K氏を引っ張ってM氏にずんずん近づき、「あのあたしたちくじら企画といいいます。来年サヨナフの再演をするのでぜひM氏に見にきていただきたいのです。それでここに住所をかいてください。」と何かの紙の裏を差し出しました。恥知らずも一人ぐらい必要なものだなと自分を褒めてあげたいくらいでした。
外にでると大竹野さんは審査員のW氏とタバコを吸ったりして「やっぱり映画をやっていた人なんだ」と感心されたりしていました。大御所F氏とも役者としての才能を買われ、昨夜までにすっかりなかよしになり、ひさしぶりにたくさんの人に囲まれて、バツのわるそうな大竹野さんの顔をみるのは楽しかったです。最後は審査員のW氏を囲ませていただき、いろいろ面白いお話しを聞かせてもらいました。
W氏は以前の劇団で10年やっていたけど人を殴ったのは2回だけ、でもこんどの劇団では三年間で4回殴ったとおっしゃっていたので「どうして殴ったんですか」と聞くと「あたしはめったなことでは殴んないよ。こないだ殴ったのもパーでだよ。叩くこっちのほうが痛いの。仕込みにねあれだけいったのに、遅れてきた子がいたのよ。」とおっっしゃたので「おんなのこでも殴ったりしますか」と聞くと「あたしはおんなは殴らないよ。自分より体格の小さい人、弱い人は殴んないの。おっきい男ばっかりだよ。フェミニストだし。」と聞いて、すこしほっとしました。とにかく竹をわったような、はっきりしたすごいエネルギッシュでかっこいいひとでした。K氏に「お話ししないの?」と聞いたけど、K氏は小さい声で「あたしもうお顔が見られただけで幸せ。よかった」と顔を赤くされていました。くじら企画はほとんどこの種類のひとでできあがっています。
つづく