no.89 我がまま
お前に赤は似合わない、だから制服の上着は着るな。
そう言い、持っていたライターでブレザーを焼かれたのは、初めて身体を貫かれた後だった。
前髪は切るな、ネクタイはきっちり締めていろ、他にも色々なコトを突き付けられた。
冗談じゃナイ、そんなコトに付き合いきれるかっ。当然ながらそう突っぱねると、
『俺に口答えをするな・・・!』
鋭い手が飛んで来た。イイか、コレがイチバン大事なコトだ。
ぴっ、と切れた口元を押さえ、ならばと念押しをして来た顔を視線で威嚇をする。
するとアイツは満足そうに、薄くて冷たい笑いを浮かべる。
ああ、ちなみに生意気な目は大歓迎だ。
『そうやって俺を睨め、的を見る様に俺を射抜け』
裂かれたシャツの襟首を掴んで、締め上げながら尚も続ける。
俺を下の名で呼ぶな、必要以上に近付くな。
だが俺の求めには素直に応じろ、拒絶や拒否なんて上等な応対は許さない。
唇の裂け目から流れてる血の雫が、喉を舌を鈍く焦がす。
物わかりの良いお前だ、一度でちゃんと理解出来るだろう。だが判らないと言うなら、何度だって教えてやる。
しかし俺は優しくはナイぞ?ニ度目は一度目より、三度目はニ度目よりも厳しく教えてやろう。
息苦しさに喘ぐ俺をさも愉しそうに見つめる、冷えた双瞳。
ガラスのレンズの向こうから、冬の月の様に冴えざえとした光を俺に注いでいる。
そして俺は酷い我が儘でもある。だからお前が俺を満たして満足させられないならば、
『俺はお前を壊すだろう』
その腕を脚を身体を引き裂いて、二度と弓もナニも使えなくしてやる。
何なら身体の弱い弟とやらも、俺が一緒に潰してやろうか。
『中嶋っ!!』
嫌なら俺に従え、俺を受け入れろ。俺の言葉を一言一句違えるコトなく、忠実に守って過ごせ。
お前は良いコだろう?篠宮。だからちゃんと判っている筈だ。
『俺がウソが嫌いなコトを』
襟を掴んでいた手を、イキナリふっと緩められる。
広がった気管が慌てて空気を吸い込み、そして同時に口の中に溜まっていた血までもを勢い良く吸い込んでしまった。
広がる鉄の味と飲み込めないこの状況とで、じわりと胸に吐き気が込み上げる。
判ったか篠宮、俺の要求が。
そう言いながら、口元を押さえ込んで蹲(うずくま)る俺の背後に回り、長くて固いしなやかな腕を絡ませて来るお前。
そして優しく甘い声で、極め付けの我が儘を耳元で囁く。
そして、
『そして俺を愛せ』
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葉月ましゃのお題作品+黒須ねこのイラストです。
個人的に冒頭のブレザーを焼くというエピソードが、目からウロコでした(笑)
だ・・だから篠いつもブレザー着てなかったの!?と、捏造万歳な感じです(笑)
ので、その影響で、イラストはそのシーンを描くと真っ先に決めてました。
そして、この中嶋の最後の一言が、最高にいいですv
我儘万歳!駄々っコ上等!!
そして、こちら、続き物ですv次回をお楽しみに〜vv(黒須ねこ)
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