うさぎの一生と暮らす


いろんな事情

<病気事情>

ミルのカルテ7 そして宇宙へ 〜FINAL Stage〜 二人の宇宙 


それは、ミルの骨折から始まった。
そこから歩いてきた道は、予想を遙かに上回る険しく厳しいものだったけれど、
ミルはその度元気に笑ってくれた。時間をかけても笑ってくれた。
獣医も「この子は癌では死なないね」と言った。私もそう思った。
二度の手術を乗り越えても、容赦なく襲う再発
けれど「ホントに癌かな?」と頭を捻りたくなるほど元気な顔を見せてくれていた。
やっぱりミルは、老衰で逝くのかな?と思った(笑)
本当に穏やかな日々が流れ始めていた。


断末魔の悲鳴 2010/05/07

今日は三ヶ月記念日だね〜 と思いながらこの先の希望を見つめていた。
なんてミルはかわいくっていい子なんだろうね〜よしよし(*^^*) と、ミルと向かい合って脚の処置をしていた。
麻痺して感覚の無いはずの脚なんだけど、なぜかこの処置は好きみたい。
それなりに気持ちいいのかな?
いつも鼻歌でも歌いたくなるような楽しい時間。早くキレイになぁれ〜〜♪
しばらくすると、ミルがちょこちょこっと動いた。私の視界から消えようとした。。。。。


その時・・・



何が起こったのかわからなかった


突然ミルが悲鳴を上げた
悲鳴?奇声?
そんな言葉では済まされない
それはまさに断末魔の叫びのようだった・・・


ミルの全身は震えていた
けいれんを起こしたのかと思った
わからない・・どうしたの? ミルちゃんどうしたの??

大丈夫・・大丈夫だよ・・いいよ、いいんだよ・・・・


そう繰り返しながら、ミルを上から抱きかかえていた
ミルの悲鳴は留まることなく宇宙の果てまで届きそうに壮絶な叫びだった
何かを呼んでいるような・・・

今が逝くときその時なんだと思った
私はどうして時を過ごしたらいいのかただただミルに涙を落とすしかできなかった

その眼に入ってきたモノは、両手を力無く広げているカメのような形の腕だった
腕に麻痺が来た?? いや違う・・・・・

その腕が・・・折れたんだ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
両肩が・・・遂に息絶えたんだ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


私は確かに視界から消えかかったミルの横である音を聞いていた
それはその時の音だと後でわかった
それでもミルは、叫び続けていた
一オクターブも二オクターブも高い声で助けてと言っているのか放してと言っているのか
痛い痛いと鳴き続けていた・・・・・・・・・・


どのくらい時間が経っただろうか・・・
鳴き止んだミルは、まだ呼吸をしていた・・・・・
開いてしまった両腕に触れると、また痛い痛いと鳴き始めた・・・・・・・・


こんな・・・こんなにミルを苦しませて・・・・
私は何をやっているんだろう・・・・・・
ゴメンね、もう触らないよ・・・ 眠っていいよ・・・・・・ いいんだよ・・・・・


ずっとミルのそばで時を過ごし、日付も変わろうとする頃
ついミルの口元へビワの葉を運んだ・・・・

ミルが・・

食べた・・・

バリバリと・・・


それは、
うれしくておいしくて、楽しい食事風景とは違い、
本能的な、今ここで食べなければ戦えない逃げられない生きられないという性のように
私には悲しい悲しい悲しい光景にしか映らなかった

こんな状況になっても、まだ生きようとするミルの
こんな状況にまで生かされてしまったミルの
その命と動物の宿命に、声をあげて泣いた・・・・・・・
生まれて始めて安楽死を考えた・・・・・・・・・・・・・・・・・






翌朝、その健康的な糞の量にビックリした。
逝く前に身体が浄化されるのかな?
とか、不思議な思考が巡っていた。
そしてミルはまた食べた。
お腹を押すとオシッコが出た。
両腕を触ってみるとブラブラだった。
けれど、昨日ほど痛がらなかった。
それは不思議な光景だった。
この状態を連れて歩くわけにはいかない。
それに、もうミルには苦痛しか与えられない・・・・・・・


一日悩んで考えた。
けれど、全く指標は見つからない。
どこに一歩を踏み出せば墜ちないのか・・・
真っ暗闇が恐かった


ミルは不思議とよく食べる。
生きることをやめない・・・
そっと抱き上げてみた
痛がらない

病院へ行こう


最後の受診 2010/05/08

何度同じ様な気持ちでこの道を歩いただろう。
ミルのキャリーが微動だに揺れないように、細心の集中力で移動した。
中にはビワの葉を三枚入れた。それは、移動時の習慣だった。
受付で「腕が動かなくなりました」と告げた。

呼ばれて診察室へ入り、動かないミルの腕を診察してもらった。
「折れてますね」
「はい」
しばらく言葉が続かなかった。

脚も・・診てもらえますか?
ミルの囓った脚を診てもらった。
「キレイになってますね。このやり方で良いんじゃないですか」と言ってもらった。
「へへ〜ほめられちゃった」とミルに報告した。

ミルに苦痛を与えずにレントゲンが撮れるならと、お願いした。その結果は悲壮だった。
私は、肩から骨折したのか脱臼したのかと思っていたが、
上腕がボッキリ折れていた。右は一カ所、左は二カ所
さらに・・
胸椎も折れていた・・・・

その恐ろしい画像から、目をそらすことは出来なかった。
頑張って頑張って胸を張り続けたミル・・・・・・・・
その前足は、まるでカエルかワニのように内股になって
いつもキリリと身体を支え前を向いていた。
その脚が、胸が、耐えきれずガラスのようにパリンと割れた。
もう二度と立てない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「脊椎の骨折は予後が悪い」と先生が今までにないような静かな声で言った。
「あとは・・
見守ってあげて下さい」と・・・・・・・・・

私の心が沈静した。
もういい・・終わった・・・あとは見守るだけ・・・・・・
この言葉が、この先踏み出す一歩のために必要だった・・・・・


先生がビワの葉をミルに差し出してくれた。
ミルはそれをバリバリと食べた。
「スゴイなこの子」と驚いてくれた。

私にはそれでもまだわからなかった。
このままでいいんでしょうか・・・・・・
食べてるうちはいいでしょう・・・・・・・

きっともう誰にもわからない


ありがとうとさよならを言ってきた。。。。。。。。
ミルも先生に「バイバイ」と言った。頭をなでてもらったね。。。。。。







胸椎が折れていることがわかったので、怖くてうっかり抱くことも出来なくなった。
そして、両腕が折れてミルは全ての脚を失った。
ごはんも水も
私が口元へ運ばなければ食べれない・・・・・・
私は、ミルに食事を運ぶことさえ罪なのでは・・・と悩んだ・・・・
生きるための動物の力は、私を苦しませるだけ苦しませた。
泣きながら食べさせた。。。。。

しかも悲劇はこれで終わらなかった。
ミルに敷いているタオルを換えようとしたとき、
不思議な場所に不思議なシミがあることに気づいた。
ナンでこんな所に・・・・
それも、どう見ても「血」にしか見えない。
どこから・・・・・??

仰向けにすることはもちろん抱くこともできない・・・・
ミルのお腹側に手を入れて探る・・・
どこかに床ずれでも出来ているのか??
そして、信じられないモノを、私は掌で感じることになる・・・

ミルは

生きるために残された機能
その両の腕を、肩から精一杯動かし
移動しよう毛繕いしようと、お顔を洗おうお耳を掻こうと・・・・・
生きている限りに尽くす本能に忠実な為に

なんと、動くたびに折れた骨がその皮膚を突き破り
皮膚を貫いて私の掌を突き刺し・・
自ら血を流して命を繋いでいたのです・・・・


ミルの生命力

どこどこまでミルは試練を受けるのでしょうか・・・
私は、予測もなにもつかない宇宙を、いったいどこまで魅せられるのでしょうか・・・

骨が突き破る皮膚に対しては、場所も悪くもう打つ手はなかった。
この子は・・・・・
まさか、ここから感染して敗血症で死んで逝くのか???
「断脚しなければ敗血症を起こして死ぬ」と言われた誤診当初に戻るのだけはイヤだった。
いっそこのまま血を流して失血死で逝く方がまだいい・・・・・・・そんなことまで頭をよぎった。
生きようと頑張っているミルを目の前に、そんなバカな飼い主に成り下がっていた。。。。
死ぬときは、綺麗な身体で逝かせてあげたい
早く早く、早く治れと、ミルの脚を毎日処置した。。。。。


虚ろな目をしていても、牧草も野菜もペレットも食べる。
スポイトで水をあげるとゴクゴク飲み干す。
食べ終わると、このまま逝きそうな勢いでグッタリする。
その瀕死な呼吸状態は、毎度止まりそうだ。。。。
それでも、ミルは生きることを止めない。まだまだ生きる。。。。。。
お腹を押せばオシッコが出る。
下痢も便秘も乗り越える。盲腸糞だって残さず食べる。
術後食べなかったペレットも、待ち望んで食べまくる。。。


ミルの生命力は、バカな私を再び三たび目覚めさせてくれた。

大丈夫。
ラン子がずっと付き添って付き合っていくからね。
ミルの生命力にとことん付き合うよ。
不幸だなんて、悲惨だなんてけして言わせない・・・・・・・

それはそれは、声を上げて泣きもしたし、醜いことも考えたりした。
でも、ミルはいつも私に笑顔を返してくれるね。
ありがとう
心配しないで、ずっと側にいるからね。
笑って暮らそうね。。。。。。。

もう、逝く「時」のことは、考えない。
生きている時間を楽しく笑って暮らそうね。。。。







いつもミルが私の泣き顔を笑顔に戻してくれるたびに、「もう大丈夫」と思ったし、「覚悟」もしたつもりでいた。
もう何があっても大丈夫、これ以上のことはないだろうとそのたび思った・・・・・・

なのに・・

なのにそれ以上の試練が
あまりに次から次へと予測できない闇が多すぎて、
この先もどうなるのかもうわからない。


ミルが頑張って、残存機能をフル回転して生きていることが
また試練を呼びそうで時々身震いしてしまう・・・




どうか神様、ミルをほめてあげて下さい。
まさか、この残された身体に、もう試練はないでしょう?ないですよね??
私はいつもミルが穏やかでいられるように
毎日毎日静かにミルと話して・・・
毎日毎日優しく体をさすって・・・
出来ることの精一杯を絶対やめませんから・・・
どうか、あとはこのままで・・・・
もうミルが鳴くことだけはありませんように・・・・・





それぞれの旅支度・・・  2010/05/26〜

朝は普通に元気だった。ペレットも牧草もしっかり食べた。
早起きして朝一番で病院へ。私一人で行ってきた。ミルの薬をもらいに・・・・
もう来なくても済むように沢山出してもらおうと思ったけど、それじゃミルがプレッシャーだね(笑) 
とりあえず一月分。
薬も、実際の所どうなのか・・と思うが、この薬は大好き!
準備しているだけで「♪」と喜ぶので、はるばる取りに行ってきたよ。
ところが、午後からミルの様子がおかしくなった。食べずにグッタリしてる。糞も出ない。。。。
お腹をマッサージして野菜やビワの葉を食べさせた。術後の食欲不振と同じ状況が訪れた。。。。。
いつものように脚もキレイにして、ずっとずっと寝るまでマッサージを続けていた。

翌朝、ミルが一粒の糞もしていないのを見て飛び起きた。またマッサージを始めた。でも・・・・

これが穏やかに逝くと言うことなのに・・・・
自然に食欲も体力もなくなる・・・自然に・・・・ 
食べないことが苦痛じゃない、別に欲しくないんだモン・・・・

穏やかに逝かせてあげたいのに
お腹をマッサージして、食べてくれそうなものを口元へ運んだ・・・・

いいよね・・・・・・・・・・・

あげても・・・・いいよね・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



このままだったら、きっと穏やかに逝けるのにと思うと、もうもう涙が止まらない。
逝かせてあげられない・・・・・・

ごめん、ミル。。。こんなに静かで穏やかなのに、どうしてラン子は泣くんだろう。。。。。。。。。。



今夜もミルに寄り添って、ごはん食べな・・ほらおいしいよ・・って
ミルをなでながら言ってしまうママを許して・・・・・

ラン子もちゃんと準備するよ。笑って送ってあげられるように心の準備をね。。。。。。。。。
ミルは、ラン子をけしてどん底の悲しみの中に置いたまま逝こうとしなかったモノ。
私が泣いてたら、ミルが逝けないね・・・・・・・・・・・
お薬・・・一月分あるんだけど・・・ 
そのくらい、待っててくれるかな?・・・・・・もうそんなに・・・そんなに待てないかな・・・・・・・・・・・・・・・・
一月分じゃ、足りないと思っていた・・・・・・・・・・・全然足りないと思ってたよ・・・・・・・・・・・・・


だけど、とにかく笑って暮らそう。そこにミルがいるだけでしあわせいっぱいなんだから。。。。。。。。。。。
その
は、ミルが決めればいいんだよ・・・・・・・・・・・・

いいよ・・・・・・・いつだっていいんだよ・・・・・・・・・・・・