トップページへ   夢は鉄路を駆けめぐるへ   最近の話題へ

(update 2011/12/1)

さぁ今のうちに乗ろう、特急「あけぼの」

 

 

(乗車日:平成23年11月5日)

   

   特急「あけぼの」----今や残り僅かとなった寝台特急として上野と青森を上越・羽越線廻りで結ぶ列車である。ファンにとっても希少価値のある列車として書籍等で紹介される機会も多いが、今回は青森からの上り列車に乗ってみたのでその乗車記を綴ってみたい。

   この列車の特長としては連結される寝台の種類の多さがあり、A個(シングルDX)・B個(ソロ)・B・ゴロンとシート(うち1両はレディース)が連結されている。今回はB個(ソロ)を取ったが、2週間前の10月21日であっさりと席番指定で取ることができた。この調子だと当日はかなりすいているのだろうか?

    青森駅で出発を待つ「あけぼの」

 

    さて「あけぼの」の出発時刻は18:25であり、その20分ほど前にホームへ行ってみると既に列車は入線していた。夜行列車が早めに入線していることは大変有難く、ファンとして撮影等にいそしむことはもとより乗客として売店で食糧等の調達をするのに十分な時間が取れる。そしてこの時間的ゆとりこそが実は“旅の演出”の重要な一要素なのである。

    先頭の機関車(EF81)へ撮影に向かうと予想通り幾人ものファンが三脚を立てて撮影に余念がない。機関車の運転士も撮影の便宜をはかってか早々にライトを点灯してくれており、昨夏の「はまなす」撮影時のようなことはなかった(笑)。

 

赤いEF81とブルーの客車が対照の妙をなす

  それでも全体的にはホームも車内も閑散としている。それもそのはずで例えば隣の新青森18:28発「はやて40号」に乗れば東京22:08着と当日中に首都圏へ到着できる。よって青森から大宮や上野へ向かうのにこの「あけぼの」を選ぶ必然性は殆どゼロに等しく、途中駅からの利用者に期待したいところである。もっとも編成中程の4号車だけは例外で、寝台の座席利用が途中の羽後本荘まで認められているために車内は早くも乗客が目立つ。

    反対側ホームからの撮影も十分に行ったので、ぼちぼち列車に乗り込むこととしよう。

 

5・6号車はB個室寝台「ソロ」

    先述の通り今回はB個室「ソロ」、右写真は通路から扉越しに撮影したものである。北斗星などの「ソロ」とは異なりレールと並行にベッドが設置されている。個人的にはこのタイプの方が前後の揺れが気にならず寝付きやすい。

    B寝台と同料金で乗れる「ソロ」は今まで幾度となく乗った。過去の乗車列車は「あけぼの(2回)」「夢空間北東北」「北斗星6号」「サンライズ瀬戸」「富士」「北陸」で、今回が8度目になる。乗車列車の中には過去帳入りしたものもあり、「ソロ」に乗ることも今後そう多くはないだろうと思われる。

  

今夜のねぐらは「ソロ」6号車11番室

  

   さて「あけぼの」は青森を発車して一路上野を目指す…が、さっそく隣の新青森に停車する。新幹線停車駅になったと同時に在来線特急停車駅に格上げされた新青森であるが誰も乗ってこない、と言うかホームに誰もいないではないか。もちろん八戸から弘前等への用務客が想定できなくもないが、時刻表を見ると「はやて31号」が18:33到着に対して「あけぼの」も18:33発車で、いくらなんでもこれでは乗り継げまい。(鉄ヲタでも無理)

    さらに料金制度の点でも「あけぼの」と東北新幹線とでは乗継割引が適用されないので、結局のところ新青森停車には“??”の感を禁じえない。

  参考写真/「ソロ」上段室(ベッドは未セット状態)

     

   ところでせっかく個室寝台に乗ったのだから個室寝台ならではの車中の楽しみ方を紹介してみたい。夜行列車の車窓は幻想的であり鉄分補給にはもってこいだが、ここはズバリ室内の明かりを消してみよう。そうすると夜景が一層際立って車窓を流れ、鉄路の轍と(ビールと)相まって旅情もひときわ高まってくる。

    さらに本日は曇天だが晴天ならば夜空の星も煌々と車窓を彩ってくれる。特に右上写真のような上段室であれば満天の星空を寝ながらにして楽しむことも可能である。都会の喧騒を離れた非日常的な旅のひととき、こんな車窓もまた格別である。   

 

弘前駅に到着する(室内の照明を消して撮影)

    

   「あけぼの」は青森県西・秋田県北の駅を比較的小まめに停車していくが、乗客の乗降は少なかった。そんな中で21:21秋田着。ホームには多くの乗客がこの列車を待っており、他方で4号車からは座席利用の客がまとまって降りた。さすがは県都・秋田で、「こまち」があるから夜行列車の需要は少ないのでは、との予想は見事に外れてしまった。わが6号車「ソロ」もぞろぞろと乗り込んできてほぼ満室になったようである。

    秋田を出ると車窓が一層暗くなった。街灯も見えないので日本海のすぐそばを走っているのであろう。次の羽後本荘は座席利用の南限であるが、目視で4人降りたのが確認できた。(需要があるのだな)

    秋田ではまとまった乗降客があった

    列車は秋田出発時に車内放送を翌朝の大宮到着前まで一旦中止する旨の「おやすみ放送」があった。酒田ぐらいまでは放送を続けるのかなと覚悟していたので、夜行列車に於ける深夜の静粛性確保の点からは良い配慮だと感じた。

    アルコールも飲んだことだし、そろそろ寝ようかな?


☆     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆

  時刻表とアルコールに轍の響き、至福の時間を満喫

    目が覚めたのは上尾付近であろうか?少なくとも高崎発着は全く記憶になく、相応に眠れたと言える。そして大宮到着前に定刻運転である旨の朝の車内放送があり、6:29大宮着。まとまった降車客があった。車窓にE231系などの首都圏っぽい車両を見ると終着近しを感じさせる。

    さてここで他の車両はどの程度乗っていたのかと思い車内を歩いてみる。寝台車の場合はリネン類が未使用のまま畳まれてあれば乗客はいなかったことになるが、Bソロはほぼ満員だったようで開放式B寝台も下段はほぼ満員、上段が半分程度とあってまずますの利用状況だったようである。(A個とゴロンとは未調査)

  尾久を通過、終着は近い

 
   上野駅には定刻の6:58、13番線に到着した。大宮や上野到着の時間帯は夜行列車として利用しやすいと言える。本日は飛び石連休の日曜朝とあって家族連れの降車客も多かった。

    さてこの「あけぼの」は主に日本海側を走り、新幹線と競合しない地域を守備範囲としている。そのため今しばらくは存続するかなと思ってはいるが、報道によれば大阪〜青森の「日本海」は来春の廃止が決定したそうで、何やら風雲急を告げる日本海側の夜行列車と言えなくもない。

    「旅行で寝台車に乗ったことがあるよ」
    「え〜〜っ?それってなぁに?」
 こんな会話は遠からず来る。今を走る「あけぼの」はその抗いなのだ。

 

上野13番線着、牽引機はEF641000になっていた