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(update 2011/11/22)

天ノ川“駅”に来た!

 

(来訪日:平成23年11月5日)

   

    今回は右の「天ノ川駅」を紹介する…が、最初にお断りしておくとJR北海道の駅に当該駅は実在しない。数年前に訪れた旭浜駅のようにかつて存在した駅でもない。ではその正体や如何に??

   話は平成17年の夏に遡る。キハ40に揺られ江差線を旅していた私は不意に車窓から「あまのがわ」の駅名標を見つけた。それは一瞬のことながら紛れもなくJR北海道様式の淡緑色の帯をまとった駅名標であった。だが列車はお構いなく通過…後にネットで調べてわかったが、そこには天ノ川という駅もどきの構築物が造られていたのである。なにゆえに?と興味がそそられた。

    

 

    そして今年。JR東日本が連休に設定する「スリーデーパス」のエリアに江差線(木古内〜江差)が追加設定された。自分にはあたかも天ノ川へいらっしゃいと呼びかけているような切符に感じられ、未乗の「はやぶさ(E5系)」の乗車も兼ねて渡道することにした。

    しかし目的地は駅ではないため列車から降り立つことはできない。具体的な所在地は江差線の湯ノ岱〜宮越なので、宮越で下車して湯ノ岱までの7.1Kmを歩くことにした。

   早朝の函館から2時間余りで宮越8:56着。さぁ歩こう!

 

宮越駅で下車、他に乗降客はいない

 

    天気は曇天、本州より1ヶ月ほど季節が進んでいる感じで肌寒いが歩くには構わない。それよりもこの渡島地区はヒグマの出没地であるらしく、もし沿道に「クマ出没注意」の看板を見つけたら潔く(渋々)計画を中止するつもりであった。実際のところクルマの往来もそれなりに有ってヒグマには遭わず、その証拠がこのコンテンツUPとご理解いただきたい。

    道は江差線とほぼ並行して続いているので間違えることはなく、30分ほどで天ノ川“駅”に辿り着いた。単線の脇にホーム(もどき)の構築物があり、例の駅名標も立っている。

   

 

線路に並行する道から近づいてみる

    線路をわたり、そのホームに近づいてみよう。レプリカながら駅名標はたいへん良く出来ている。ちなみにホーム下の「64」を示すキロポストは本物で、函館本線から分岐する五稜郭から64キロ地点であることを示している。

    またこのホームは当然ながら駅ホーム本来の用途を持たないため、よく見ると線路からやや離れて構築されており、仮に列車がイベント等で臨時停車?しても乗降は無理のようである。(苦笑)

 

  

キロポストはJR江差線の本物である

  

   この構築物は「HOKKAIDO夢 RAILCLUB」が江差線の振興目的で設置したものであり、駅名の由来は近在を流れる同名の河川にちなんでいる。また、ホーム上には駅名板の他に下写真の郷土・檜山郡上ノ国町のイベントを紹介した案内板もある。

  

ホーム上から湯ノ岱方面を撮影する

  

   江差線の振興----多くの鉄道ファンが知るように江差線の末端区間(木古内〜江差)はかなりの過疎路線で、廃止になってもおかしくないところを同じ線区の函館(五稜郭)〜木古内の幹線的輸送内容に助けられて存続しているのが実情である。

    しかし単行のDCが1日6往復するだけの線区が収支的に厳しいのは明らかで、発展はおろか存続さえも実は危ないのかもしれない。国鉄時代と異なりJR化後は線区の名称にこだわらず不採算区間を廃止する例も既にあり、江差線のこの区間も予断を許さないところだろう。

  ススキの穂と江差線のレール

     

   それならば天ノ川“駅”をなんとか積極的に活用できないものだろうか?イメージ的には大変良い呼称であり、かつて道内に存在した愛国駅や幸福駅に通じるものさえ有りそうである。

    話題として焚き付けるとすればやはりJR東日本だろう。JR北海道には悪いが道内のみで話題を盛り上げても多くの来訪者は望み難く、むしろ首都圏をターゲットとして今回の「スリーデーパス」の駅ポスターにでも紹介すれば未知の鉄道探検スポットとして脚光を浴びるかも知れない。

    たとえ駅ではなくとも線区が有ってこその天ノ川“駅”なのだ。   

  天ノ川を渡る江差線、人煙稀な光景である。