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(update 2010/10/17)

さぁ今のうちに乗ろう、急行「はまなす」

 

(乗車日:平成22年8月27日)

   急行「はまなす」----2月に乗った「きたぐに」と共に僅かに残る定期急行列車であり、今回はこの列車を取り上げる。ちなみに12月の東北新幹線新青森開業の時点では存続したものの、車齢が30年超と老朽化は否めず「今のうちに乗ろう」列車であることには間違いなさそうである。

   この列車の特色としてはいろいろな車両を連結していることがあげられ、B寝台、カーペットカー、普通車指定席(ドリームカー)に普通車自由席と、選択の幅が広い。よって今回は久しぶりにB寝台(青森→札幌)に乗ってみた。これは今夏から「北海道・東日本パス」で別途料金券を買えば急行列車に乗れるようになった故の選択であり、大きな恩恵と言える。

 

    

 

    さて「はまなす」は青森駅4番線に22:12に入線。発車が22:42だからちょうど30分前の入線で、これは列車をじっくり見たり撮ったりする鉄道ファンにとっては十分時間が有って有難い。

    そこで早速反対側のホームに撮影のため行くと既に数人のファンが三脚を立てて撮影を待っており、自分も同様に三脚へカメラを据え付けて待つ。ここで「待つ」と記したのは、機関車のヘッドライトがオンになってから撮ったほうが写真がキマることを皆知っているからで、今や遅しと点灯を待つ…が、一向に点灯しない。このままでは列車全体の観察や撮影が出来なくなってしまうので、自分は止む無く右写真を撮って他のファンよりも一足早く切り上げた。

 

 

青森駅4番線で発車を待つ「はまなす」

 

    4番線に戻り、1号車から順に編成を眺める。

    B寝台(1両増結で3両)、自由席、その次は…ありゃりゃ! 今日は運用上の都合で4号車のカーペットカーが不連結で、その代わりに右写真の指定席車両が繋がれている。

    勘の鋭いかたはこの「ありゃりゃ!」の意味がおわかりであろう。本来「はまなす」所定の指定席車両(ドリームカー)には元グリーン車に使用していたシートが転用されており、今日も5・6号車はそのシートである。しかし4号車のシートは国鉄時代からの陳腐な簡易リクライニングシートで、要は自由席と同じ仕様なのである。

 

 

簡易リクライニングシート車の4号車指定席

    ちなみに今回は復路でドリームカーに乗ったので参考までに車内を紹介する(右写真)。このシートはリクライニング角度が深く、広いシートピッチやフットレスト設置も相まって良く眠れるのである。

    車両運用上「代打」で出された車両の設備が劣ることは止むを得ない面もあるが、ドリームカーと同料金である以上サービス内容は平準化が望ましい。今回も実際に4号車を見ると西洋人夫婦が窮屈そうに座っており、これが何とも気の毒に見えた。事情を知らない二人には一事が万事、これがニッポンのナイトトレインなのねとマイナスイメージを持たれたに違いない。(涙)

    列車はゴトン、と定刻に青森を発車した。    

 

  

復路の「はまなす」にて(8月31日撮影/札幌)

  今夜の自分のねぐらは2号車2番下段である。札幌には早朝の6:07着とあって睡眠時間は決して長くは取れないものの寝台は殆ど埋まっており、人気の程がわかる。マルスの原則通り3番から順に売っているのであれば、自分の寝台券購入もギリギリセーフだったはずである。(乗車日の29日前に購入) なお本日の座席車は指定席・自由席とも7〜8割の埋まり具合であった。

    すぐに寝るのはもったいないと思い、通路の折畳み椅子を出してアルコール飲料と共に夜の車窓を眺める。「きたぐに」の時にも書いたが、上質の“鉄”分補給のひとときである。九州ブルートレインのような長距離夜行が健在の頃、この椅子に座り車窓を眺める人は多かったが、今日は自分だけである。

 

       

   そろそろ寝支度をと思い洗面所へ行く。すると洗面台に時代の流れを感じさせる部分があったので揺れる車中ながら写真を撮ってしまった。それは誰かが取り付けた充電中の携帯電話である(画面中央の携帯電話・背後にはコンセント有り)。

    初め見た時は何と無頓着で不用心なと思ってしまったが、よく考え直すと最近の多機能携帯では毎日の充電が不可欠で、それは旅行者とて例外ではない。その意味ではホテル滞在時と同様に夜行列車にもそれを満たす設備が今や必要なのであり、 こんな一見小さなことが実は夜行列車を存続させるためのサービスのひとつとしてキチンと対処すべきことなのかも、と考えさせられた。   

 

   

  

    

   寝台に戻り、糊の効いたシーツを敷き、袋状の枕カバーを取り付ける。この所作は寝台を利用するにあたり当然の言わば儀式のようなもので、今まで幾度となくやってきた。しかし寝台列車自体が激減している今、この儀式も静かに過去帳入りしつつあるのかも知れない。

    寝台に体を横たえると、半年前の「きたぐに」に比べガクンガクンと揺れているのがわかる。@車端部でA客車でB行違いポイント分岐が多い、といったところが理由だろうか。それでも第3ビールの助力もあって青函トンネル突入直後に眠ってしまう。

☆    ☆    ☆    ☆    ☆
   

 

      

    いつしか夜はあけ、うとうとしているうちに苫小牧・南千歳を過ぎ、5:55に新札幌に到着、ホームに降りて撮影を敢行する。

    ここで写真を撮ったのはいわゆる「厚別ダッシュ」の乗客がどれほどいるのか?を期待してのことだったが、シーズンを過ぎているせいか右写真の通り皆無であった。

    この「厚別ダッシュ」とは「北海道・東日本パス」を使う旅行客には有名な裏技で、札幌以北(旭川や宗谷本線)へ向かう場合に終点の札幌ではなく手前の新札幌で下車し、小走りで近在の厚別駅へ行くと旭川行き普通列車に乗れる(札幌では接続しない)というものである。興味のあるかたは時刻表等でお確めあれ。   

 

      

    列車は終点の札幌に近づいてきた。かつては札幌到着のシンボルとして車窓左手に見えた北ガスのガスタンクが撤去されており少々寂しさを感じたが、列車は定刻に札幌5番線に到着した。

    デッキの扉が開き、ホームに降り立つとあぁ涼しい。さすが北海道である。このあと自分はカメラの電池を駅北口のコンビニで補給し、滝川行き711系普通列車で滝川を目指した。(滝川から釧路行き普通列車で目的地の釧路へ)

    急行「はまなす」は昭和63年の青函トンネル開通時にデビューした“気軽に旅行派”用の列車であるが、この列車を取り巻く環境は列車存続に微妙な影を落としており、その推移を見守りたい。