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(update 2014/1/20)


鉄道ファンと“遍路道”
 

  (来訪日:平成26年1月1日)

   

    知られざる秘境駅を見つけよう----

    この命題はインターネットや書籍等で数多くの秘境駅が紹介され、それらについての詳細なレポートが容易に入手できる現在ではけっこう難しいものである。仮に国鉄末期に廃止された多くの過疎ローカル線が現存していたなら面白そうだが、それらは現在では廃線跡探訪という別ジャンルの題材となっており、秘境駅とは棲み分けがされている。

    そんななかでも今回はJR四国の牟岐線にある「浅川駅」「阿波海南駅」を紹介してみたいと思う。

   浅川駅ホームから徳島方面を見る

   

    徳島から南へ伸びる牟岐線を単行のキハ1500に揺られておよそ2時間、列車は末端区間にさしかかった。海が近いながらも山に囲まれた小駅に列車は停車、ここが浅川駅(右写真)である。駅はやや高台にあって下方には国道55号線が通るものの交通量はさほど多くなく、列車が去ると駅周囲は静まり返ってしまった。

    人の気配は無いものの駅自体は地元の人による清掃が行き届いており、秘境駅にありがちな荒れた雰囲気は感じられない。ここで徳島出発時に用意していたサンドイッチを昼食とする。おっと、包装袋等を散らかさずにちゃんとゴミ箱に捨てなければ。それほど整備!されている駅である。

   

   浅川駅ホームから徳島方面を見る

 

    さて折り返し列車には時間が有るので、隣の阿波海南駅までの2.4キロを歩いてみる。道順は簡単で国道55号線を南下すれば良い。そして少し歩くと右写真の道標に出会った。「お遍路さん〜」と書き出しがあるのは、この道が四国遍路(四国八十八ヶ所巡礼)の遍路道だからである。

    ちなみにこの区間は札所間の距離が大変長く、23番札所の薬王寺(右上地図の美波付近)から24番札所の最御崎寺(同・室戸付近)まで77.0キロもある。現代ではハイヤーや団体バスツアーでの巡礼が多いようだが、それでも歩き遍路にこだわる人も少なくないと聞く。そんな人たちにとってこの道標は心温まる配慮に違いなく、自分も有難く指示に従った。 

 

“お遍路さん”の道標に出会う

 
   浅川駅から歩くこと30分、道路右手に阿波海南駅が見えてきた。この駅も無人駅だが駅併設の駅前交流館が事実上の待合室となっており、自動ドアを入るとベンチやトイレもあってメンテナンスも大変良いのが特徴である。

    ここでふと気づいたのだが、さきの浅川駅と共に無人駅ながらとても管理が行き届いていて、地元の人の「駅を大事にしよう」という気持ちが遠来の旅行客にも十分伝わってきた。そう言えば四国では遍路に尽くすのは弘法大師(空海)に尽くすのと同じという考えから、巡礼者に対して布施や善根宿を提供する風習が今なお有るらしい。自分も駅に接して四国という土地柄を感じさせてもらったと思っている。 

 

午後の陽光を受ける阿波海南駅ホーム

  

    今回は秘境駅の発見を頑張ってレポートしてみたものの、紹介した2つの駅は鉄道趣味的には秘境駅とは言い切れないレベルかな…という気もする。しかし来訪して良かったとの満足感が得られたのも事実である。

    だいぶ昔のことではあるが、学生時代に就職が決まったら残りの時間で「旧東海道踏破」もしくは「四国遍路」にチャレンジしてみたいと思っていたことがある。残念ながら諸般の事情でそれらを成すことなく社会人となり多忙な日々に埋没してしまったのだが、別稿にもあるように「旧東海道踏破」は幸いにも先年達成することができた。では…と鬱勃たるものを感じさせる今回の訪問ではあった。