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update 2012/11/21)

大銀杏は死なず

 
 

   鶴岡八幡宮の大銀杏が倒れてから2年半が過ぎた。今秋、久々に彼の地を訪れる機会があったので見てみると残された根元は右写真のように保全されており、その大木の切り株から新しい枝葉が確認できた。

   そう、老木と言えど決して死んだわけではなかったのである。

   参道の景観という点で考えれば確かに老木の風格はそれを満たすに十分な存在感があり、シンボルであったと言って良い。しかしこの生命の営みを現実に見るとこれはこれで素晴らしいことであり、決して代替の樹木を植えたりしないで是非このまま成長の推移を見守ってあげたい気持ちが湧いてくる。  

黄色で示した場所に新しい枝葉が息づいている

   なお右写真の移植した幹からも萌芽があり、これらを大銀杏の後継樹としての若木の選定にはなお数年を要するらしい。そして鶴岡八幡宮としても今後の推移を見守って欲しい旨の看板が添えれられていた。

   この木が八幡宮の大銀杏として再び参道に君臨するとしても、その頃には自分は間違いなくこの世を去っており、その勇姿に接することはない。しかしそれで良いのである。なぜなら人間とイチョウとの時間の流れは全く別次元のものであり、代替木の植樹などで無理やりイチョウを人間の都合に合わせる必要は全くない。自分をはじめ往時の大銀杏を知る者は各自の心の中に在りし日の「八幡宮の大銀杏」を思い出として留め置こう。それが人間とイチョウとの“良い関係”に他ならないと確信している。

     プラカード・旧木・新芽が並ぶ