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update 2013/12/17)

長寿寺の特別拝観

 
 

    臨済宗長寿寺----北鎌倉駅から鎌倉方面への道を歩くと建長寺の少し手前で亀ヶ谷坂切通しへ右折する道があるが、その手前に長寿寺はある。自分が鎌倉史跡研究にいそしんでいた昭和50年代当時、市内のほぼすべての社寺を巡ったもののこの長寿寺だけは「拝観謝絶」の寺として長らく境内に入ることができなかったことが思い出される。

    しかし近年では春秋の好天の金・土・日曜日に限り特別拝観を行うようになったのでぜひ行ってみたいと思っていたところ、ようやく都合がついて拝観するに至った。今回はその長寿寺を紹介してみたい。

   長寿寺は寺伝によれば足利尊氏の邸跡に建武三(1336)年に創建された臨済宗建長寺塔頭寺院で、開山は古先印元禅師である。  

本日は特別拝観の日、石段をのぼる

    まず山門で拝観料300円を納め、境内へと入る。来訪日は日曜であったため他にも拝観者が多い。順路に従い本堂に上がり、畳上に敷かれた赤絨毯を辿るとご本尊の前に来た。ここで自分は正座して心静かに諸像を拝観する。県道から少し階段を上がっただけの境内なのにたいへん閑静なたたずまいであるが、思えば寺院の畳の上に正座するのもいつの日以来だろう…東京の喧騒に巻き込まれる毎日からは全くの別空間に身を置き、貴重なひとときを過ごせたように感じた。

    なお本堂は書院・小方丈ともつながっており、そちらから庭園や観音堂を眺めることができる。紅葉と銀杏が色づいた今の時期は景観が素晴らしく、多くの拝観客がその美しさに見入っていた。 また書院には般若心経の屏風が立てられてあり、あくまでもここが宗教施設であることを実感した。 

本堂は内陣の拝観も可

    本堂から降りて順路に従い境内を歩いてみる。拝観のしおりに「写真撮影を目的とする拝観は禁止」とあるが、たいへん美しい境内なので近くの寺院のかたに「写真をお撮りしても宜しいでしょうか?」と聞いてみる。するとそのかたは少し間を置いて「三脚等は使わず敷石外の苔を踏まないように注意のうえ撮影してください。」と案内して下さった。よって指示を守り他の拝観者の邪魔にならないよう注意して撮影する。もっとも拝観者の中には一眼レフの連写でバシバシ撮りまくっているような人もいて、禁止事項ではなくともいかがなものか?と思わせる場面もあった。

   その境内には草屋根の観音堂があり、堂内の聖観音像を拝観できるので拝んでみた。この観音堂と周囲の樹木との色彩の調和(右写真)は思わずハッとするほどの素晴らしさであった。

これ以上ない色彩の調和

 

    観音堂裏の階段を上がってみる。すると山肌を切り開いた一角に石塔群(下写真)があるが、これが足利尊氏の墓である。寺伝によればここに尊氏の遺髪が埋葬されているそうである。(ここまで来る拝観者は案外少い。)

小方丈で庭園を見学する拝観者

    

    今回は木々の色づきがたいへん素晴らしく、多くの拝観者も満足したことと思われる。自分も落ち着いたひとときを過ごすことができて大変感謝している。ただあまりにも“被写体”としての境内が美しいがために、先述のような連写のカメラ音を立てまくったり好アングルを探して目の色を変えたりという人も散見されたのはやや残念な気もした。このような拝観マナーの悪い人が増えると以前のような「拝観謝絶」に戻ってしまうかも…。

    逆に拝観者の「きょうは長寿寺さんを訪れて、とても心静かな時間を過ごせました」という感謝の気持ちが寺側に伝われば、特別拝観の企画は今後も続くのではと思われる。拝観を終えて県道前に出ると車・クルマで現実の世界に引き戻されたような気分になってしまった。

     自然に恵まれた境内、拝観者はぜひマナーを守ろう