トップページへ        英雄墓は苔むしぬへ        史跡別探訪記へ

常立寺はいま、枝垂れ梅が陽光を浴びる

  大船から湘南モノレールに乗り、終点「湘南江の島」で下車する。行政上は藤沢市にあるこの常立寺(じょうりゅうじ)は駅から3分ほど歩いたところにある日蓮宗の寺院である。

   常立寺はかつて近在の大本山龍口寺の輪番八ヵ寺の一つであった。輪番とは本寺に一定の住職を置かず、子院の住職が交替で寺務を司る制度である。龍口寺の輪番は常立寺を含めた腰越・片瀬地区の日蓮宗の寺院八ヵ寺がこれにあたっていたが、明治19年に龍口寺に専任の住職が置かれて制度は廃止された。

枝垂れ梅がとてもきれいな常立寺本堂

  常立寺を語るうえで欠かせないのが「元使塚」であろう。これは文永の役(1274)の翌年、元が鎌倉幕府への宣諭使(無駄な抵抗はやめよ)として杜世忠(とせいちゅう)ら5名を派遣したものである。時の執権北条時宗はこの使いを斬った。のちの弘安の役はこの時に始まっていたのであった。

  斬られた元使の5名は、ここ常立寺に埋葬されたと伝えられている。いま「元使塚」はひっそりと境内にあるが、筆者が以前訪れた昭和52年頃に比べると境内全体も整備され、さまざまな植樹が異国の地に眠る外交使節を慰めているかのようである。

  写真にもあるように常立寺はいま、枝垂れ梅がたいへんきれいである。平日の来訪にもかかわらず、カメラを携えた人達が撮影にいそしんでいた。

整備された元使塚

 

  腰越・片瀬地区は他にも満福寺(義経の腰越状)、江の島(稚児ヶ淵の悲恋)、龍口寺(日蓮上人の法難)等々、史跡にまつわる話も少なくない。いずれも稿を改めて取り上げてみたい。

梅は派手さこそないが、早春を告げる