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現存の関東十刹、大慶寺はここにあり

  鎌倉五山と言えば多くの人の知るところであるが、では関東十刹と聞いて知る人はあまり多くないと思える。関東十刹は室町時代に五山に次ぐ寺格として制定された格式であるが、なにせ現存する寺が少ない。鎌倉では瑞泉寺、禅興寺の塔頭として残る明月院と、ここ「大慶寺」が現存する。

  ところで大慶寺はどこにあるか?たぶん一般の観光客にはまず知られていないだろう。モノレール湘南深沢駅から徒歩7分のところにあるが、全く観光とは無縁の寺である。まあ深沢地区の史跡はいずれも同様であり、郷土史研究家向きといったところであろう。ちなみにこの付近の「寺分」という地名はこの寺にちなむようである。

無住の寺から面目を一新、大慶寺本堂

  大慶寺は臨済宗円覚寺派の寺である。開創年は不明だが、大休正念の開山と伝えられるので鎌倉時代の開創である。

  この寺は長く無住の時代が続き、円覚寺の管理となっていた。自分が鎌倉研究にいそしんでいた昭和50年代、この寺は固く門を閉ざし境内には竹が生い茂っていた。参道は短いながらも竹林が覆い被さり、昼なお暗い雰囲気であった。

  地元の人からも忘れられかけていたこの寺であったが、昨年大がかりな境内整備・本堂新築を行い、全く別の寺のように面目を一新した。先日の来訪の折、これがあの大慶寺かと驚いてしまったが、昔の無住の荒れ寺(?)を知る者にとっては別の新しい寺が建立されたような感じであった。

  しかし良く見ると、本堂左手にかつての山門とすり減った石段がそのまま残されており、懐かしさから思わず触れてみた。ここだけは昔の大慶寺、残してくれていたのだなあ・・・。現在の本堂は正面から入れるため、この山門は写真のように一応閉ざされている。でも、この部分が本当の大慶寺なのだとしみじみ感じ入ったのであった。

 

山門と石段が昔を偲ばせる