Ｐ-Ｉｓｌａｎｄ　外伝　〜秋の行事〜（終）


「あんちゃん、二時の方向から新たな敵が！」
眞深ちゃんの声に視線を向けると、確かに新たな敵が現れていた。
「兄チャマ、正面に大きな反応が。もしかしたら、ラスボスかもしれないのデス」
「え？」
正面を見ると、何かが出てきているのが見える。
レーダーにはとても大きなものが映っている。
まさかこんな大きなものが現れるなんて……そんな馬鹿な。
あ、あれが敵の最終兵器なのか？
「兄君さま、あちらの新手はワタクシと衛ちゃんで何とかしますので、
　兄君さまはあの大きな敵を倒してくださいませ」
「ボクと春歌ちゃんでなんとかするから、あにぃは自分のことに集中して」
春歌ちゃんと衛ちゃんがそう、通信を入れてくる。
止めようとしたが、二人はすぐに飛び去ってしまった。
「わかった……信じてるよ。二人が絶対に帰ってくるって」
僕はそれだけ告げると正面に向き直った。
すでに頭の部分が見えてきている。
それは赤い色をしたクリスタルで覆われた何かだった。
「何だ…あれは……」
「ボキにも…分からない……」
燦緒も山田もその異様さに驚愕の声を上げる。
クリスタルはその姿を見せると大きさは５５ｍ以上はあるかというくらいだった。
中に薄らと見えるロボットがクリスタルから出てきたら１００ｍ近くはあるのではないか。
僕たちはその大きさに圧倒され動くことができない。
クリスタルは点滅し始め、やがてまばゆく光ると霧散した。
そして中から出てきたのは、大きい翼で体を覆ったロボットだった。
ロボットは咆哮を上げると翼を広げ、その姿を現した。
肩には三枚のクリスタルの刺のようなものがあり、
鋭い先の尖った長い尻尾があり、腕は四本。
その異様な姿は見るものを恐怖に陥れた。
「は、ハッタリ…そう、ハッタリ。ボキは騙されないぞ」
山田はそう言うと、攻撃に移った。
「Ｇ・サー○ルブ○○ター！！」
広範囲に渡る攻撃を仕掛ける山田。
確かにあの大きさなら広範囲攻撃が有効かもしれない。
「ダメだ。まったく効いてないっ！」
弾幕が晴れて見せた姿は、全くの無傷だった。
それを見た山田が悲鳴じみた声を上げる。
「だが、やるしかない。倒さなければやられるのみ」
燦緒はそう言うと次々と攻撃を仕掛けていく。
こうなったら集中砲火で行くしかない。
僕もすぐさま攻撃に転じてミサイルを発射した。
僕と燦緒の攻撃は全弾命中した。
これで少しは傷ついてくれれば、そこから傷を大きくしていくことができる。
だが、あれだけの攻撃を仕掛けても傷一つつけることはできなかった。
「化け物め」
燦緒がそう呟く。確かにそうとしか言いきれない。
「やばい」
山田の声がしてモニターを見ると、四本の手が光り輝いていた。
まさか、同時に四つの攻撃を仕掛けてくるのか？
「避けろっ！」
燦緒の声にすぐさま反応して散開する。
先ほどまでいた場所にレザーが放たれ巻き添えを食った敵のロボットが消滅していく。
「何か手はないのか」
「こうなったら、一か八かの賭けに出るしかない」
燦緒の問いに山田が答える。
いつになく真剣な山田の声が決意の表れを示している。
「こいつは賭けだ」
「どうするつもりだ？」
「ミサイルでダメなら直接行くしかない。ボキが先陣を切る」
そう言うと山田はロボットを駆って敵へと向かって行った。
そこに敵の総攻撃が襲い掛かる。
「まだだ、これくらいでジ○ンがやられるかっ！」
被弾を最小限に抑えて突進していく山田。
「やまだあああっっ！！」
「ヤツは攻撃後の一瞬に隙ができる。その時がチャンスなんだ。一世一代の大博打よ」
山田はそう言うと攻撃が止まったほんの一瞬に攻撃を仕掛けた。
「ジ○ン必殺！　ジ○ンテ・ウ○ガァァァァノッ！！」
接敵した瞬間に拳を叩き込み攻撃を仕掛ける。
あれだけ被弾したはずの機体はほとんどダメージを受けずに攻撃をした。
その硬い機体の拳が敵を確実に仕留めていく。
ミサイルですら傷つけられなかったのに、傷を入れることができた。
だが、続けざまに攻撃をしようとした瞬間、敵の攻撃を受けてしまった。
「山田ぁぁぁぁっ！！」
山田の機体が潰され落下していく。
「航、作ってくれたチャンスを無駄にするな」
今度は燦緒が攻撃を仕掛ける。
「ハイ○ルラン○ャー、シューッ！！」
物凄い爆音とともに敵が弾き飛ばされる。
さっきより傷が大きくなり体中に亀裂が走っている。
「ホー○ング・ミサイルっ！」
止めとばかりにミサイルを大量に撃ち込む。
これで最後とばかりに全弾撃ち込んだ。
機体が軋む音がし、大きな翼が壊れ落ちていく。
それでも尻尾を振るって攻撃を仕掛けてくる。
「まだこれだけの力が残っているなんて……」
全弾撃ち込み攻撃手段がない。
もう、どうしようもないのか？
「諦めちゃだめだ！」
突如そんな声がして振り返る。
なんとそこには、山田が新たな機体に乗って現れた。
「諦めたらそこで試合終了だ。ボキは諦めない。妹さんたちに認められるまでは！
　行けっ、ロボ！」
山田の指示で巨大ロボットがパンチを繰り出す。
「こちらも負けてはいられない」
燦緒も改めて攻撃を仕掛ける。
次々と攻撃が命中していき、敵の機体が崩壊していく。
が、決め手に欠けるのか、あと一歩のところで踏み止まられている。
「兄チャマ、こっちも最終兵器デス」
突然、四葉ちゃんの通信が入る。
「アニキ、合体するよ。今、射出するからね」
今度は鈴凛ちゃんの声。合体って……。
「行くよ、四葉ちゃん。
　ファイ○ルフュー○ョン承認！」
「了解！　ファイ○ルフュー○ョン、プログラムドラーイブッ！」
四葉ちゃんの掛け声とともに、三つのメカが飛んでくる。
最終兵器ってこれなの？　合体ってこれなの？
と僕が驚いている間に次々と合体していく。
そして最終兵器の巨大ロボになった。
「アニキ、これで攻撃力も防御力もアップしたからね」
「一気に行くデスヨ、兄チャマ。
　ゴ○ディオ○ハンマー、セーフティデバイスッリリーヴ！」
四葉ちゃんがそう言うと新たなメカが飛んでくる。
それは巨大なハンマーだった。
「航、最後は頼んだぞ」
「いっけええぇぇぇぇぇっっっ！！！」
誰かの叫びに押し出されるように体が動いた。
最初の機体よりも巨大になった機体を駆使して敵に迫っていく。
「うぉぉぉぉーーっ！」
ハンマーから飛び出してきた杭を手にして敵に打ち付ける。
体が光り輝き力がハンマーに集結する。
そしてハンマーを振り上げ、一気に振り下ろした。
杭が奥深くまで打ち込まれた。
そこから亀裂が大きくなり光がその中に吸い込まれていく。
「これで終わりだ！」
光が吸収され尽くすと内側から爆発が起こり、敵は霧散した。
それはキラキラ煌めいて天に昇っていくように見えた。
「終わった」
燦緒がそう呟く。
「やったね、アニキ」
鈴凛ちゃんが喜びの声を掛けてくる。
「兄君さま、こちらも片付きましたわ」
春歌ちゃんと衛ちゃんが無事戻ってきた。
「みんな無事で良かった……本当に、良かった」
これで僕たちは日常の生活に戻れるんだ。


っていう映画を星見が丘西学園で行われる学園祭で上映することになった。
例によって山田が妹たちからリサーチして作られた台本をもとに、
鈴凛ちゃんが作ったバーチャルシステムを利用して作ったもの。
そして試写会を開催したんだけど、結構良い出来で驚いた。
みんなの評判も良かったし、きっと人気が出ると思う。
「ハイ、アニキ。うまく編集できてたでしょ？」
「そうだね、戦闘シーンなんか迫力あったよ」
「四葉も手伝ったのデス。どうでした、兄チャマ？」
「これなら人気出るんじゃないかな」
「私は不満よ。だってお兄様とのラブがないんですもの。
　次に作るときは私とお兄様のラブロマンスにしましょう」
「それならボクは、あにぃとスポ根物が撮りたいな」
みんなが次に撮りたいものを言っていく。
「そうだね、またみんなで撮りたいね」
そしてみんなの思い出も作っていきたい。
前に咲耶ちゃんが言っていたっけ。
『一緒に過ごせなかった時間を少しでも取り戻したいの』
これで少しは取り戻せたとは思わないけど、
これからもみんなと一緒に沢山の思い出が作れるといいな。


終わり

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