P-Island 外伝 〜秋の行事〜(8)
「兄チャマ、右の黄色いボタンを押すとダイジョウブなのデス」
四葉ちゃんの声が聞こえてくる。右を見ると確かに黄色いボタンがある。
でも、Gによって動けないため押せないでいた。
「兄チャマ、早く!」
四葉ちゃんの声に奮起して、何とか右手を動かしボタン押す。
すると速度が遅くなり、ふわっと浮くような感覚を感じる。
そして機体が思ってもいない動きを始める。
戦闘機からロボットへと変形したのだった………そんな馬鹿な。
「兄チャマ、これで接近戦にも対応できマスよ」
四葉ちゃんの言う通り、これなら接近戦もできるし母艦の上に乗って対応もできる。
「行くよ、燦緒!」
「わかった、背中の方は任せてくれ」
背中を預けられる安心感が、とても頼りになる。燦緒の実力も凄いし、これなら……。
「ボキのことも忘れないで欲しいな。露払いは任せてくれたまへ」
山田が頑丈な機体を生かして、先頭に立って突っ込んで行く。
山田が道を開き、僕が主力で戦い、燦緒が後ろから援護をしてくれる。
三人が、息の合った動きで敵を翻弄する。
このまま行けば撃退できないまでも、撤退させることができるのでは……と思ったその矢先、
母艦の甲板が開き中から巨大なロボットが姿を見せた。
身長は57メートル以上、装甲は厚く、巨体の割には動きが軽快で、かなり厄介な敵と言える。
頭と肩に角があり、お腹には顔のようなものがある。
右手はドリル状になっていて、左手は剣を携えているので攻撃力はかなりありそうだ。
その巨大なロボットは一気に間合いを詰めると、山田の機体に攻撃を仕掛けた。
「早い………」
燦緒が驚きの声を上げ、動きが止まる。
山田は反撃できずに攻撃されるまま。
装甲が固い分、致命的なダメージを受けていないが、このままでやられてしまうだろう。
山田には悪いが囮になってもらっている間に、こっちから攻撃を仕掛けさせてもらう。
「ラ○ンド・チャ○ラ○!!」
「アターック!!」
燦緒の攻撃と、僕の攻撃が次々と巨体にヒットする。
敵の動きが鈍ると、山田も反撃に移った。
だが、傷一つ付けられず逆に反撃をくらってしまう。
「兄君さま。今、お助けいたしますわ」
「あにぃ、ボクも来たよ」
突然そんな声がして、青と白の人型のロボットと白い戦闘機がもの凄いスピードで飛来する。
青と白のロボットは背中には翼みたいなものを持ち、手にはライフルと光る剣を持っている。
白い戦闘機は、傍に来ると人型に変形した。手にはライフルを持ち、ナイフな様なものも手にしている。
「仕掛けるわよ、ファ○ケン!」
そう言うと青と白のロボットはミサイルを発射した後、剣で接近戦を挑む。
「ブーストッ!」
機体が加速し、高速で袈裟切り、逆袈裟と斬りつける。
相手が怯むと最後は至近距離からライフルで敵を撃つ。
「当ててみせるっ!」
白いロボットは、ナイフを構えると一瞬にして敵に接近し、上から切りつけた。
そしてライフルを構えると、近距離から乱射する。
「兄君さま、大丈夫ですか?」
「その声は、春歌ちゃん?」
「はい。私もこのビ○トファ○ケンで参戦いたしますわ」
「じゃあ、そっちの白いロボットは衛ちゃん?」
「そうだよ、あにぃ。ボクはこのビ○トラ○ターで参戦するんだ」
「危ないよ、二人とも」
「大丈夫ですわ。これでも腕は良い方なんですよ」
「大丈夫だよ、あにぃ。鈴凛ちゃんの造ったロボットなんだから」
そう言いながら僕の横に並ぶ。燦緒と山田もそばにやってきた。
「簡単に倒せないとは思うが、倒す方法はあるはずだ」
「良い方法はないかな、燦緒」
「圧倒的に火力が足りなさすぎる。だが、やるしかない」
「こうなったら、ボキの奥の手を使うしかない」
やるしかないか………それなら一点集中で………。
「兄君さま、高速移動はできますかしら?」
「まだ慣れてはいないけど、大丈夫だと思う」
「それならワタクシと同時攻撃をお願いしますわ」
「わかった。動きを合わせるよ」
「ああ……兄君さまと共同で作業できるなんて………ポッ」
「あにぃ、援護は任せて!」
「私も後ろから援護する」
「ボキはまた、突貫して相手を弱らすよ。見ててよ、春歌ちゃん、衛ちゃん。ボキの有志を」
言うか早いか、山田が突貫して行く。
防御力を信じた無謀にも見える突撃は、相手の攻撃をことごとく跳ね返した。
「運試しをさせてもらうぜっ!」
間合いを詰めると、攻撃を仕掛けた。
「ジ○ンテ・ウン○ア!」
山田の攻撃がクリティカルヒットする。
予想以上のダメージを受けて敵の機体が悲鳴を上げる。
「このチャンスをものにする」
燦緒の言葉に頷くと、春歌ちゃんとともにこちらも動き出す。
「運が悪かったな・・・沈め!」
燦緒が敵が態勢を整えられないように援護射撃をする。
「ハイ○ルランチャー……シューッ!!」
肩のランチャーから強烈なミサイルが敵に大ダメージを与え、敵の肩部分が破損した。
続けざまに、二発三発と撃っていく。そのたびに敵の装甲が破損しダメージを積み重ねていく。
「行くよ………!」
ライフルを構えて連射する。
頭の角が吹き飛び、敵の命中率が下がる。あれが敵を感知するセンサーだったのか。
「春歌ちゃん、チャンスだよ」
「兄君さま、行きますわよ」
春歌ちゃんの合図で、並ぶようにして飛行する。
操縦に慣れたとはいえ、このGにはなかなか慣れない。
だが、ここで弱音を吐いていられない。
「兄君さま、動きを合わせてくださいましね。ブーストッ!」
加速して敵に突っ込む春歌ちゃん。僕も遅れないように加速させる。
「ツ○ンバードス○ライクッ!」
春歌ちゃんの機体と交差するような動きで敵を翻弄する。
ある程度近づくと二人同時に攻撃する。
何十ものミサイルが次々と敵に当たり動きを止める。
「兄チャマ、接近戦用の武器がアリマス。それを使ってクダサイ」
四葉ちゃんの言葉に、近くの青いボタンを押す。
すると、手の甲から鋭い鉤爪が飛び出した。
そのまま拳を握り、鉤爪を敵のがら空きのお腹にアッパーカットのように打ち込んだ。
勢いもありそのまま敵の巨体が持ちあがる。
持ち上がったところを春歌ちゃんが一斉射撃をした。
動けない敵はなすすべもなく、全弾命中する。
僕はそのままの勢いに下から突き上げ続けた。
バキッ!という音とともに、敵の機体に亀裂が走る。
そこに山田が再び重い攻撃を加え、粉砕した。
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続く