妖精のいる日常


 双子のぴーちかとぱーちかが、兄ちゃんのぼさぼさ髪で遊んでいる。兄ちゃんのものぐさのせいで、その髪はもう肩に届きそうなぐらいの長さなのだ。ぴーちかとぱーちかはひと房ずつ髪を束ねている。もうひと房作りたいらしいが、あいにく小さな2人には1人ひと房が限度らしい。そこに2人のいとこのぷーちかが飛んできて加わった。ぴーちかぱーちかよりひと回り小さいぷーちかだが、手先が器用だからすぐ房をまとめる。面子が揃ったので勢い付き、3人は房をきゅっきゅっと寄り合わせて編みはじめた。
「早苗」
 兄ちゃんが振り向かずに言った。動くと頭の上のそれを驚かせてしまうのがわかっているのだ。
「何人乗ってる?」
「3人。ぴーぱーぷー組」
「ぴーちかぱーちかぷーちかだな?ぴーきちぱーきちぷーきちじゃないな?」
「うん。女ぴーぱーぷーの方。男ぴーぱーぷーはみつあみなんてしないし」
 そんなことを言っているうちに、3人組は1本めのみつあみを作り終えた。ほどけないようにぷーちかが先を両腕で押え込んでいる。表情がかなり必死。
「ゴムあげていい?」
「・・・みつあみか?」
「うん」
 兄ちゃんは黙った。その気持ちはよくわかる。何しろみつあみ。成人男子のする髪型じゃないものね。
「にいちゃん」
「う」
「ぷーちか死にそう。ぴーちか泣きそう。ぱーちか困ってこっち見てる」
「・・・わかった」
 兄ちゃんは人間以外のものには甘い。げろ甘。私は顔がにやけてくるのを自覚しながら、ぱーちかにヘアゴムをあげた。特別大サービスでプラスチックの熊(ちなみに桃色だ)が飾りについているゴムを。ぱーちかぴーちかは、きゃー、と喜びの声を上げてゴムをみつあみに巻き付け、止めた。
 そして3人は、すかさず兄ちゃんの髪を引っ掴むと、新たなみつあみを編みはじめた。
「早苗」
「乗りかかった泥船だよ、兄ちゃん。沈むまで付き合ってあげなきゃ」
 ぴーぱーぷーが揃って頷いた。・・・意味わかってんだか知らないけどね。

 半時間後。髪型だけやたらファンシーな、仏頂面の兄ちゃんを前にして、私はとりあえず笑いまくった。後日、兄ちゃんはさすがに懲りたのか床屋に行って、さっぱりとスポーツ刈りになった。今度は男ぴーぱーぷー組がそれを気に入って、自分達も同じ髪型にしたいと騒ぐのだが、それはまた別の話だ。

                                            【終】


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