◇書籍「小津安二郎を読む」(フィルムアート社)は、小津映画について最も詳細な研究本の一つだが、
 その中に「小津辞典-小津に現われたものの集積-」という小津映画に登場した様々なものを
 項目ごとに解説した100ページを超えるパートがある。
 管理者も35年くらい前に小津映画を積極的に観始めた時期から折に触れて参考にさせてもらった。
 これをヒントにして、成瀬映画に登場する様々なものを項目別に書いていきたいと思う。
 辞典というほど充実できるか不安(何しろ執筆は管理者一人)なので、このようなタイトルとした。
 ある項目について書く度に、全作品を観直すなどという恐ろしいことは時間的にできないので、
 管理者の記憶に基づいて、当該項目が最も印象的に描かれている作品を中心に書いていく。
 また役名は省略して俳優名で記述する。項目の一部はすでに本HP、特にロケ地紹介ページやエッセイで触れているものもあるだろう。


2020 
NEW 2020.5.18 ■映画、テレビ番組等の引用 
NEW 2020.5.14 ■子供の視線 
NEW 2020.5.6 ■噂話  
NEW 2020.4.22 ■踊り(日本舞踊、ダンス、バレエなど) 
NEW 2020.4.20 ■楽器 
NEW 2020.4.17 ■喧嘩  
NEW 2020.4.12 ■個人商店など 
NEW 2020.4.10 ■飲み物(紅茶) 
NEW 2020.3.29 ■スポーツ
NEW 2020.3.22 ■温泉、銭湯、家庭風呂 
NEW 2020.3.17 ■オフィス、会社員   
NEW 2020.3.14 ■公園、庭園  
NEW 2020.3.12 ■デパートの屋上・店内、遊園地 
NEW 2020.3.11 ■電話
NEW 2020.3.4 ■自然 (4)山、山道、高原、山間の温泉地など  
NEW 2020.3.2 ■自然 (3)川、河原、運河、掘、橋など 
NEW 2020.2.29 ■自然 (2)湖、池  
NEW 2020.2.28 ■自然 (1)海、海岸、港 
NEW 2020.2.26 ■乗物 (4)自動車、タクシー  (5)船、その他 
NEW 2020.2.25 ■乗物 (2)バス、観光バス  (3)自転車、オートバイ
NEW 2020.2.24 ■乗物 (1)電車


NEW 2020.5.18 ■映画、テレビ番組等の引用

・『乱れ雲』
  由美子(司葉子)が姉(草笛光子)の住む団地の部屋で話をしている。
  遊びに来ていた草笛の子供の友達が帰る時に「バッハーハイ、ケロヨン」
  と挨拶を交わす。「あれは何?」と訊く司に対して「テレビの物真似よ」と答える草笛。
  甥っ子に「おばちゃん知らないの」と言われ、甥っ子の仕草を真似して
  「ケロヨーン、バッハーハイ、ての」と言う司。
  成瀬映画にはその当時の流行のものの挿入が多いのだが(シナリオにあるのかもしれない)、
  これもその一つ。本作は山田信夫のオリジナル脚本。
  管理者と同世代(本作の1967年当時、管理者は9歳の小学生)であれば馴染みのある話題だが、
  当時、このケロヨンというカエルのキャラクターは大人気だった。
  木馬座という劇団の制作で、管理者はテレビ番組を見ているだけでなく、木馬座のライブ公演
  にも母親に連れて行ってもらった記憶がある。つまり生ケロヨン(笑)を見ている。
  ケロヨンの仇役は確か「ギロバチ」。台詞は「ギロギロバッチ―ン」だったはず(笑)。
  司さんの台詞の最後の「ての」(ていうのの省略だろう)というのが可愛くてグッとくる。
・『秋立ちぬ』
  秀男(大沢健三郎)と母(乙羽信子)は、世話になる八百屋近くの銭湯に行く。
  男湯には近所の悪ガキがいて、その一人が秀男に「怪傑ハリマオ、二丁拳銃だ」
  と言って、秀男に水鉄砲を向けて水をかける。本作は笠原良三のオリジナル脚本。
  怪傑ハリマオは1960年-61年に日本テレビで放送されていた冒険活劇の主人公名。
  管理者も再放送等で一部見た記憶がある。主題歌を三橋美智也が唄っている。
  ユーチューブで一部は視聴可能。
・『晩菊』
  ラスト前。仕事で北海道に旅立つ息子の清(小泉博)上野駅で見送る母・たまえ(細川ちか子)と
  元芸者仲間のとみ(望月優子)。
  両大師橋(小津映画『東京物語』の笠智衆、東山千栄子の会話シーンにも登場)で汽車を見送った
  後、腰を振って歩く若い女が二人の前を通り過ぎる。
  望月が「ねぇ、ちょっと。あの腰の振り方、なんとかモンローっていうアメリカの女優の真似だろ」
  歩いている若い女の後姿のショット。
  望月「あたしにだってできるよ」と言って着物姿で腰を振って歩く望月。
  細川「お富さん(=望月)、みっともない」
  望月 細川の方を振り向いて笑う。細川も笑い出す。
  『晩菊」の前年1953年のアメリカ映画『ナイアガラ』(ヘンリー・ハサウェイ監督)の中で
  マリリン・モンローが腰を振って歩く後ろ姿が「モンロー・ウォーク」と名付けられ当時話題になっていた。
  シナリオ(原作=林芙美子、脚色=田中澄江、井手俊郎)にあるのか不明(成瀬映画のシナリオ集は無い)だが、
  背が小さく、お世辞にもスタイルがいいとは言えない望月優子にモンロー・ウォークをさせるというギャグは秀逸だ。
・『妻よ薔薇のやうに』
  これはロケ地紹介でも記述しているように、アメリカ映画『或る夜の出来事』(1934年 フランク・キャプラ監督)の中の
  ヒッチハイクシーンを引用している。詳細はロケ地紹介の記述を参照。
  
  記憶の中ではこれくらいだが、また気付いたら追加する。

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NEW 2020.5.14 ■子供の視線

: 成瀬映画における「子供の視線」とは次のようなケース。
 大人がある行動をしている。ふと子供の視線に気づき少し慌てたそぶりを見せる大人。
 大人に対して強い視線を送る子供のショット。
 成瀬映画以外であまり観た記憶のないちょっとした演出だ。
 日常生活の中で突然挿入されるショットなので少しサスペンスの要素を感じる。
 大人の行動と言っても、本当に他愛のないものなのだが・・・
 大人同士だと相手の気持ちを忖度して、あえて視線をそらすことは多々あるが(成瀬映画にも多く描かれる)、
 子供はそういう配慮を一切しないように成瀬監督は描いている。

・『乱れ雲』
  由美子(司葉子)の姉(草笛光子)の夫(藤木悠)がテーブルの上の皿やグラスを片付けている。
  グラスに残ったビールを別のグラスに移して飲もうとするが、ふと隣の部屋の子供の視線に気付き止める。
  布団に横になり枕を顎に乗せてじっと父親の行動を見ている子供。二人の会話に続く。
・『浮雲』
  ゆき子(高峰秀子)がおせい(岡田茉莉子)のアパートの部屋を訪ねる。
  部屋の中をゆっくりと見回し(コップに入った二つの歯ブラシなど)、富岡(森雅之)がこの部屋で一緒に
  岡田と住んでいることを確信して、悔しい気持ちをこらえている高峰。
  ふと視線を感じて部屋の入口を見ると、三輪車に乗った男の子がじっと高峰を不思議そうに見ている。
  子供に話しかける高峰。
  視線ではないが、岡田が亡くなった後での部屋での高峰と森の口喧嘩。
  外は雨が降っていて、泣き出す高峰。うなだれている森。
  男女の緊迫感のあるシーンに、ふと挿入されるアパートの廊下で「おままごと」をしている子供たちの描写。
  水木洋子のシナリオにあるか未確認だが、緊張感を少しほぐす子供の使い方は名人芸だ。
・『秀子の車掌さん』 ユーチューブで視聴可能
  バスの運転手の園田(藤原鶏太)が息子と娘と一緒に食堂でかき氷を食べている。
  そこに入っていくバスガイドのおこま(高峰秀子)。
  二人で話しをした後、藤原がかき氷の器を持って立ち上がりシロップをかけようとする。
  ふと子供たちの方を見ると、藤原の方をだまって見ている二人の子供。
  藤原はシロップ用のスプーン?を子供たちのところに持って行って「これだけだよ」と言ってかき氷に足してあげる。
・『まごころ』 ユーチューブで視聴可能
  予期せずに河原で遭遇した敬吉(高田稔)と蔦子(入江たか子)。
  足に怪我をした娘(悦ちゃん)をおぶって歩いて行く敬吉。
  それを見送る入江。ふと見るとしゃがんでいる娘・富子(加藤照子)
  が上目遣いで入江の顔をじっと見ている。それに気づき少し動揺する入江。
  本作は、この場面に限らず加藤照子が、母親の入江たか子をじっと見つめるショットが多い。
  すでによく知られているが、富子を演じた子役の加藤照子は、黒澤明夫人の矢口陽子
  の妹なので黒澤監督の義妹、現在、NHK大河ドラマ等の衣装監督として活躍中の黒澤和子さん
  の叔母にあたる。この姉妹は本作3年後の成瀬映画『母は死なず』の脇役で共演している。

  子供が主役の『秋立ちぬ』『コタンの口笛』、その他の作品にも同様の演出があるかもしれないが記憶に無い。
  気付いたらまた追加する。


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NEW 2020.5.6 ■噂話

: 映画に限らず、演劇、テレビドラマ、小説、そして落語などには、登場人物などに関する「噂話」が多く登場する。
 間接話法的な人物紹介であり、ストーリーを進めるためには「噂話」は不可欠な要素だ。
 成瀬映画にも「噂話」は多く登場する。それも極めて効果的に。
 これは脚本家の書いたシナリオ自体の表現ともいえるが、脚本のシーンや説明的な台詞を削除してしまう
 ので有名な成瀬監督が残し、強調しているのは成瀬演出の一つとも言える。
 また、1930年代から40年年代の作品には、成瀬監督自身がシナリオも書いている作品が多々ある。
 おそらく「噂話」は現存する成瀬映画69本のすべてにあるだろう。
 その中で、印象的な「噂話」の登場する作品を以下。

・『乱れ雲』
  青森の営業所に左遷された商社マン(加山雄三)のもとへ、先輩(中丸忠雄=電送人間!)が来て加山の海外赴任先の話をする。
  パキスタンのある都市への赴任。ノイローゼになってしまった前任者の噂、そして加山の白羽の矢がたったと伝える中丸。
  内容は実際に確認してほしいが、ここでの中丸の話す内容はあまりに悲惨で、映画館(銀座・並木座)では思わず笑いが起こっていたほど。
・『女の中にいる他人』
  亡くなったさゆり(若林映子)の噂話をする鎌倉の近所の主婦たちのショット。
・『女の座』
  四女・夏子(司葉子)の見合いの話をお寺でしている。長女・松代(三益愛子)が別の見合いの話を持ってきて
  「梅子(次女・草笛光子)にどうかしら、ねえお父さん」と話す。
  父・金次郎(笠智衆)は「梅子(うめこう=と聞こえるのがいかにも笠智衆のイントネーションで可笑しい)か、
  あいつは変わってるからねぇ、何考えているのか30過ぎたっていうのに」と言ってお茶を飲む。
  場面転換のショット。草笛と健(大沢健三郎=高峰秀子の息子)の姿。
  草笛が正面を見て「バカみたい」とつぶやき大沢が草笛の方を見る。
  三角錐の形の遊具に乗ってくるくる回して無邪気にはしゃいでいる、夏子(司葉子)、五女・雪子(星由里子)、
  三女・路子(淡路恵子)と夫・正明(三橋達也)を遠目に眺める草笛と大沢の後姿を入れ込んだロングショット。
  噂話の後にその人物が登場するという、「落語」にも良く見られる手法。
  一言だけで、草笛のクールな性格が表現されていて素晴らしい。(脚本は井手俊郎と松山善三)
  本作は「大家族もの」なのでこれ以外にも噂話ばかり。「噂話」映画だ。『娘・妻・母』も同様。
  大勢の登場人物(当時のスターばかり)を一人一人噂話等でつないでいく成瀬演出はまさに職人技だ。
・『秋立ちぬ」
  茂子(乙羽信子)と旅館客の富岡(加東大介)が座敷で親しく話している。
  旅館の台所で、菅井きんや杉浦千恵が「あの二人はあやしい、できちゃってるね」と少し悔しそうに噂話をしている。
・『驟雨』
  画面には一度も登場しない(ラスト前に写真のみで登場)のがあや子(香川京子)の夫。
  新婚旅行の帰りに、新婚旅行中の夫の行動に怒りを爆発させる香川の話を聞く叔母・文子(原節子)。
  個人的には成瀬映画で最も好きな作品であり、中でも香川、原の、一種の噂話が延々と続くコミカルなシーンは
 、成瀬映画の中で最も光輝くシーンだと思っている。
  10年ほど前の成瀬監督の会で、香川京子さんご本人にもそのように伝えたので印象深い。
・『夫婦』
  菊子(杉葉子)の実家の商店の食卓。父(藤原釜足)と母(滝花久子)が、菊子の夫で転勤先から
  東京へ戻って来る伊作(上原謙)の噂話をする。
・『三十三間堂通し矢物語』
  通し矢の競技の前に、見物客がひそひそと噂話をしている。
・『歌行燈』
  冒頭、能の名古屋公演を終えて伊勢の古市に行く車中で、花柳章太郎、大矢市次郎、伊志井寛の3人は
  車中の男から古市にいる名人・宗山(村田英雄)の噂話を聞かされる。
  丁寧な態度で受け流す大矢、伊志井と不機嫌になる花柳。
  この後のストーリー展開において、この噂話は重要となる。
・『秀子の車掌さん』
  バスガイドの高峰秀子と運転手の藤原鶏太は、名所の文章を書いてもらおうと、旅館に逗留している
  東京の小説家=夏川大二郎の元を訪ねる。その行き帰りに夏川の噂話をする高峰と藤原。
・『旅役者』
  冒頭、東京から来た「六代目中村菊五郎一座」の噂話をする田舎町の人たち。
  リズミカルなショット展開で描かれる。
・『噂の娘』
  タイトル通り、冒頭は酒問屋「灘屋」の隣にある床屋で、主人=三島雅夫と客が「灘屋は商売がうまくいってないらしい」
  と店と灘屋の人々の噂話をするところから始まる。床屋での噂話というのがまた落語のような設定。
  成瀬映画ではないが゛川島映画『青べか物語』でも、噂話の中心は「床屋」。

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NEW 2020.4.22 ■踊り(日本舞踊、ダンス、バレエなど)

: 最近気づいたのだが、成瀬映画には「踊り」のシーンが多く登場する。
 踊りといっても日本舞踊から社交ダンス、バレエまで多種多様だが、
 ともかく登場人物がリズムに合わせて踊る場面は多い。
 連想してみたのが小津映画。小津映画には「踊り」の登場は少ないのではないか。
 いろいろと記憶をたどってみたが、サイレント時代(管理者は半分くらいしか観てない)
 は不明だが、戦中〜戦後の小津映画で「踊り」が登場する映画は記憶に無い。
 もしかしたら一つも無いのかも・・・。あったら是非メールでご教示してほしい。
 

◆日本舞踊、民謡(宴会などでの素人芸のようなもの)など
・『乱れ雲』
 青森の営業所に左遷された商社マン(加山雄三)が宴会で行う民謡の踊り。
 旅館の女将の慰安旅行の宴会で、どじょうすくいのようなコミカルな踊りを披露する森光子。
 それを見て笑顔を見せる司葉子。
・『放浪記』
 森光子の舞台でも有名だが、カフェの女給のふみ子(高峰秀子)のカフェのテーブルの横でのおどけた踊り。
・『秋立ちぬ』
 冒頭、母(乙羽信子)と息子(大沢健三郎)が歩く「新富橋」。向う側から着物の少女(一木双葉)が踊りながら近付き、
 通り過ぎて振り向く。じっと見ている大沢に「踊りの稽古の子だろ」と言う乙羽。
・『娘・妻・母』
 杉村春子が偽装家出をした先の老人ホーム。民謡を踊っている高齢の女性。
・『流れる』
 冒頭、つたの家の座敷で踊りの稽古をしている不二子(松山なつ子)。米子(中北千枝子)の娘。
・『俺もお前も』
 宴会でコミカルな踊りを披露する会社員の横山エンタツ、花菱アチャコ。
・『愉しき哉人生』
 姉の山根寿子の唄にあわせておもちゃの刀を使って踊る中村メイコ。
・『歌行燈』
 早朝の松林の中で、能の舞「松風」を山田五十鈴に伝授する花柳章太郎。
 成瀬「芸道もの」の中でも有名な名シーン。

◆ダンス(社交ダンスなど)
・『妻として女として』
 バーのママ(高峰秀子)と客の仲代達矢がナイトクラブで踊る。
・『夜の流れ』(川島雄三との共同監督)
 ダンスホールのような場所で当時のロック音楽で踊る若者たち。
 おそらく川島雄三演出のパートだろう。
・『娘・妻・母』
 ナイトクラブで踊る原節子と仲代達矢。同じ場所でのダンスは二回出てくる。
・『山の音』
 ダンスのシーンは出てこないが、冒頭上原謙は、父親(山村聰)の秘書(杉葉子)を
 「踊りに行こう」と誘う。
・『夫婦』
 クリスマスパーティで楽しそうに踊る三國連太郎と杉葉子。複雑な表情で二人を見る杉の夫(上原謙)。
・『怒りの街』
 ダンスホールで踊る原保美と木匠久美子。
・『禍福・前篇』
 ジャズのレコードにあわせて踊る高田稔と竹久千恵子。二人はこの後結婚する。
・『女人哀愁』
 嫁ぐ直前の入江たか子。入江はジャズのレコードをかけて妹(堤真佐子)と踊る。
 すぐに踊りをやめて泣き出す入江。
・『君と行く路』
 会社員の大川平八郎。料亭の座敷でジャズのレコードで芸者たちと踊っている同僚
 を窓から眺めている。
・『乙女ごころ三人姉妹』
 梅園龍子はレビューガール役。レビューのステージシーンも出てくる。
 梅園は、実際に浅草の日本初のレビュー喜劇団「カジノ・フォーリー」の踊り子出身。
 榎本健一を輩出したことで有名。
 関係ない話だが、TBSニュース23のキャスターの小川彩佳は梅園龍子に少し似ているように思うのだが。
 特に大きな目が。興味ある人は画像検索で見比べてほしい。

◆バレエ
・『舞姫』
 タイトル通り、バレエスタジオを主宰する高峰三枝子とバレリーナの娘の岡田茉莉子。
 バレエのシーンは随所に登場する。

 まだあるかもしれない。気が付いたら追加する。

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NEW 2020.4.20 ■楽器

◆ピアノ
・『秋立ちぬ』
 旅館の小学生の娘=一木双葉。大沢健三郎を部屋に入れて、そこにあるおもちゃのピアノて゜「猫ふんじゃった」を弾く。
 成瀬監督生誕100年のドキュメンタリー映画『記憶の現場』(2005)の中で、本作の助監督・石田勝心監督の
 証言したエピソードがある。撮影の休憩時間に一木が石田助監督に「この小さいビアノを弾いてもいい?」
 と訊かれ、「いいよ」と答えた石田助監督。石田助監督は遠目に成瀬監督がそれを見ているのがわかり、
 「もしかしたらこれを演出に加えるのではないか」と思ったところ、実際に成瀬監督が本番で採用したとのこと。
・『杏っ子』
 疎開先(軽井沢あたり:ロケ場所は箱根)の家でピアノを弾く香川京子。
・『稲妻』
 世田谷の二階の下宿に引っ越した高峰秀子。隣に住む兄妹(根上淳、香川京子)。香川はピアニストを目指している。
 実際に香川がピアノを弾くシーンは無い。

・『まごころ』
 銀行員の父(高田稔)と母(村瀬幸子)の小学生の娘(悦ちゃん)が家でピアノを弾く。
・『君と行く路』
 立派な屋敷に住む霞(山県直代)がピアノを弾く。ショパンの「雨だれ」。
 その後、山県が手紙を書いている間、友人の紀子(堤真佐子)が同じ「雨だれ」を弾く。
 二人とも顔だけで、ピアノを弾く手は映っていない。

◆ギター
・『秋立ちぬ』
 二階の部屋でポロンポロンとギターを弾きながら歌をくちづさむ夏木陽介。
 ギター、唄ともお世辞にもうまいとは言えない。
 

◆三味線
 
三味線を弾くシーンは成瀬映画に多く登場する。作品名は以下。まだあるかもしれない。
 中でも印象的なのは『流れる』のラスト前。
 山田五十鈴と杉村春子が向き合って三味線を弾く。
 山田が唄う。邦楽の教養が無いので「清元」「長唄」(またはそれ以外)なのか、
 何という曲なのかも分からない。
 山田、杉村という二大女優の三味線の共演は観ているだけでぞくぞくしてしまう。
 二人の横姿の映った後ろ。台所の前で見ている田中絹代とのロングショットも見事。
 
・『女が階段を上る時』
・『流れる』
・『晩菊』
・『銀座化粧』
・『芝居道』
・『歌行燈』
・『君と行く路』
・『鶴八鶴次郎』
・『桃中軒雲右衛門』
・『噂の娘』
・『乙女ごころ三人姉妹』
・『君と別れて』

◆楽団
・『サーカス五人組』
 

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NEW 2020.4.17 ■喧嘩

◆喧嘩
:成瀬映画には、夫婦、恋人、親子、友人同士の口喧嘩は数多い。
 今回の喧嘩は、平手打ちや部屋で取っ組み合うなどの身体的な喧嘩。
 具体的な作品を挙げてみる。
 何といっても代表的な作品は『あらくれ』
 お島(高峰秀子)は、高峰秀子が演じた成瀬作品のヒロインの中で
 最もパワフルで勝気な性格。
 口も出すが、手も出るという強い女性だ。
 映画では
 ・最初に嫁いだ商店の上原謙と布団の上で大げんかする。上原謙から「出ていけ」と言われ別れることに。
 ・二番目の夫の加東大介。夫婦喧嘩をして平手打ちをくらわす加東。その後、ホースで部屋の中の加東めがけて水をかける高峰。
 ・ラスト、加東の愛人で高峰の友人のおゆう(三浦光子)。箒でたたき、倒れた三浦を足で蹴る高峰。女同士の迫力あるバトル。

・『女の中にいる他人』
 ラスト近く、親友の三橋達也に三橋の妻との情事(+死亡事故)を告白し、平手打ちをくらう小林桂樹。
・『女の歴史』
 草笛光子が義姉の高峰秀子に平手打ちをくらわす。宝田明をめぐっての嫉妬。
・『放浪記』
 同居している売れない小説家(宝田明)に平手打ちをくらう高峰秀子。部屋に訪れていた加東大介に止められる。
 作家仲間の草笛光子に同じく平手打ちされる高峰。
 2005年の成瀬監督のドキュメンタリー映画『記憶の現場』の中で、草笛光子は、「成瀬監督からホンキでたたきなさい」と
 言われて、高峰さんの頬を思いっきりたたいたら、その後「顔がはれちゃったわよ」と高峰さんに言われて・・・」と証言している。
・『あにいもうと』
 荒っぽい性格の森雅之に殴られる船越英二。
 部屋の中で言い争いの後に取っ組み合いの喧嘩をする兄=森雅之と妹=京マチ子。それを止める母(浦辺粂子)と妹(久我美子)。
・『怒りの街』
 部屋の中で取っ組み合う大学の友人同士の宇野重吉と原保美。
 ラスト前、与太者(堺左千夫)にナイフで顔を切りつけられる原。成瀬映画には珍しい暴力シーン。
・『乙女ごごろ三人姉妹』
 ラスト前、部屋で大川平八郎を脅す二人組の不良。ナイフを出した不良が大川にナイフを向けた時に
 かばおうと代わりに刺されてしまう堤真佐子。これも成瀬映画では珍しい描写。

まだあるかもしれない。
成瀬映画ではないが、女同士のとっくみあいの喧嘩が多いのが川島雄三作品。
有名なのは『幕末太陽傳』での南田洋子、左幸子だが、個人的に好きなのは『赤坂の姉妹より 夜の肌』
での長女=淡島千景と次女=新珠三千代との部屋の中でのとっくみあいの喧嘩。
すぐ物を投げつけるのが女同士の喧嘩の特色。新珠がウイスキーボトルを投げつけようとすると
「それはダメ」という淡島が可笑しい。

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NEW 2020.4.12 ■個人商店など

◆個人商店など
:成瀬映画に個人商店が多く登場するのは、川本三郎氏の多くの著書で指摘されている。
 具体的な作品を挙げてみる。


・『乱れる』
 静岡県清水市の「森田屋酒店」。近くにスーパーマーケットが出来た影響で客が減っている。
 店をスーパーマーケットにするべきかが大きな問題となる。
・『女の歴史』
 高峰秀子は東京・自由が丘で小さな美容室を経営している。
・『女の座』
 東京・世田谷あたりにある荒物・雑貨屋の石川屋。
 冒頭、父親の笠智衆が倒れて子供たちが集まり、その後帰っていく次男=小林桂樹と長女=三益愛子は、
 店にある新商品の「紙ぞうきん」を、店を切り盛りしている高峰秀子に「試してあげる」といって持っていってしまう。
 それを見ていた次女の草笛光子は、母親=後妻の杉村春子に「姉さんたちがめついわ」と話す。
 小林桂樹は渋谷辺りで小さい中華料理店を経営している。
・『秋立ちぬ』
 東京・銀座近く(新富町)の八百屋。
・『あらくれ』
 高峰秀子が嫁いだ店は、酒(画面だとウイスキーに見える)や缶詰などを売っている「浅井商店」。
 夫の上原謙の半纏にその名前が。
 後半、高峰秀子の再婚した加東大介と一緒に始めるのが背広やシャツなどを仕立てる「洋服店」。
 そこの若い使用人が仲代達矢。
・『驟雨』
 佐野周二と小林桂樹は会社員だが、妻の原節子、根岸明美が買い物に出かける東京・世田谷の商店街
 には個人商店が多く登場する。
・『妻の心』
 群馬県・桐生市にある老舗の薬屋。小林桂樹と高峰秀子夫婦が経営している。
 映画では、敷地内に「喫茶店」をオープンさせることが内容の中心となる。
・『くちづけ』第三話「女同士」
 東京・世田谷辺りの開業医が舞台。医師は上原謙、妻が高峰秀子。看護婦に中村メイコ。
・『あにいもうと』
 母親の浦辺粂子は、多摩川(川崎市側)の土手にある小さい売店の商売をしている。
・『夫婦』
 上原謙は会社員だが、妻=杉葉子(長女)の実家は家族で「鰻と佃煮」の店をやっている。
 父=藤原釜足、母=滝花久子、長男=小林桂樹、次女=岡田茉莉子など
・『稲妻』
 はとバスのバスガイド=高峰秀子の実家は、東京・根津あたりの小さい洋品店。
・『おかあさん』
 田中絹代は、亡くなった夫=三島雅夫の友人の加東大介の力を借りて、クリーニング店を営む。
 娘の香川京子も店を手伝う。
 香川の恋人=岡田英次の実家は「ベーカリー」。ピクニックの時に作ってくるパンが「ピカソパン」。
・『愉しき哉人生』
 柳家金語楼一家(娘=山根寿子、中村メイコ)が地方の街にやって来て、「よろず工夫屋」の看板を出す。
 街には、理髪店(横山エンタツ)、時計屋(渡辺篤)の他、「下駄屋」「本屋」「タバコ屋」「写真館」など。
・『噂の娘』
 東京(場所は不明)の酒問屋。長女の千葉早智子が中心になって切り盛りしている。
 隣には理髪店(三島雅夫)。

 まだあるかもしれない。その都度追加する。

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NEW 2020.4.10 ■飲み物(紅茶)

◆飲み物(紅茶)
:ピンポイントな項目だが、成瀬映画には紅茶が出てくる映画がいくつかあることに気づいた。
 もともとのシナリオに記述されているかは不明だが、シナリオを削ることで有名な
 成瀬監督が残したのは必要だと感じたからだろう。
 各作品の撮影当時、家庭で紅茶を飲むのは、少し贅沢な気分を味わうアイテムの一つだったようだ。
 成瀬監督自身が紅茶好きだったのかもしれない。

・『妻の心』
 ラスト、高峰秀子の友人=杉葉子が、高峰の嫁ぎ先の薬店を訪ねる。
 高峰の姑=三好栄子から縁談を勧められる杉。それを楽し気に見ている高峰の夫=小林桂樹。
 台所で紅茶とティーカップを用意する高峰。紅茶を飲むシーンは無い。
・『くちづけ 第三話・女同士』
 ラスト、結婚して辞めた看護婦の中村メイコに代わって、新任の美人看護婦(特別出演Y→クレジット無し)
 と診察室で楽し気に語る開業医の上原謙。そこに妻の高峰秀子が顔を出すと、新任看護婦を紹介する。
 振りむいて挨拶するY。
 上原は「お茶を飲もう。紅茶がいいな」と高峰に話す。台所で紅茶の準備をする高峰。紅茶を飲むシーンは無い。
 また、映画の中盤、高峰が兄の伊豆肇と丸の内の喫茶店で会うシーンでは、高峰は「冷たい紅茶」を注文し
 実際にストローで飲むショットがある。
・『めし』
 二階で寝ている姪=島崎雪子を起こして、「下で紅茶を飲まないか」と話す叔父の上原謙。
 その直後に島崎は鼻血を出してしまい、上原が介抱して島崎を横にさせる。
 クラス会から帰宅した妻の原節子に、「玄関の靴を盗まれた」と嘆く上原。
 上原と島崎が二人とも二階にいたと話す上原に対し、ちゃぶ台の上に用意された紅茶とティーカップを
 見て、機嫌を悪くする原。ここでも実際に紅茶を飲むシーンは無い。
 
 管理者が気づいたのは以上だが、まだ他の作品もあるかもしれない。
 気付いたらまた追加する。

 「紅茶」に関してもう一つ面白い形で登場しているのは『乱れる』。
 森田屋酒店を訪ねる若い女(浜美枝)。
 店の中にいる高峰秀子に「こうちゃん、いる?」と訊ねる(こうちゃん=高峰の義弟の幸司・加山雄三)。
 高峰が「お紅茶ですか?」と言うと、笑いながらもう一度「こうちゃん、いる?」と言う浜。

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NEW 2020.3.29 ■スポーツ

◆スポーツ
:成瀬映画にはスポーツの登場する作品はかなり少ない。
 例えば小津映画だと、ゴルフ(『彼岸花』、『秋刀魚の味』など)
 プロ野球(『お茶漬の味』、『秋刀魚の味』など)が出てくる。
 成瀬映画に登場する数少ないスポーツは、『秋立ちぬ』で子供たちが
 銀座の空き地(駐車場)で行う三角ベース。

・『三十三間堂 通し矢物語』
 
スポーツと呼んでいいかはわからないが、現在も京都・三十三間堂で続く「通し矢」。
・『君と行く路』
 鎌倉あたりの海岸沿いの別荘に住む母(清川玉枝)と息子(兄=大川平八郎、弟=佐伯秀男)。
 デッキチェアに寝転がっている大川に、「テニスやろうよ」と誘う弟の佐伯。
 大川は部屋で着替えて、佐伯と歩く。ただしテニスを実際にやるシーンは無い。
 映画の冒頭は海岸をゆっくりとランニングしている佐伯。なかなかいい身体をしている。
・『噂の娘』
 千葉早智子と大川平八郎の見合いの場(帝劇?)。
 同席した千葉の妹=梅園龍子が大川の出身大学のラグビー選手の話をする。
 大川は大学時代の友人だと答えると、梅園は今度紹介してほしいと言う。
 モガの雰囲気いっぱいの梅園はラグビーファンという設定。
・『生さぬ仲』
 役名、俳優名とも不明だが、芝生のある庭で一人シャドーボクシングをしている男。

 記憶をたどってみたが「スポーツ」が登場するのはこれくらいではないか。
 成瀬監督はあまりスポーツに興味が無かったのか、または人物がスポーツをしている
 場面は「説明的」と思ったのか、とにかく少ない。

 これはまた発見したら追加する。


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NEW 2020.3.22 ■温泉、銭湯、家庭風呂

◆温泉、銭湯、家庭風呂など
:『浮雲』
 温泉での入浴シーンといえば『浮雲」。
 森雅之と岡田茉莉子、森雅之と高峰秀子の入浴シーンのスチール写真が有名。
 映画では「伊香保温泉」が舞台となっている。
 実際に伊香保温泉街の実景が出てくるし、有名な石段のところでの撮影風景スチール写真も
 あるので、伊香保ロケは間違いないが、加東大介の店から共同浴場に行く階段は、
 世田谷の撮影所に建てられた?オープンセットであり、風呂も伊豆の湯ヶ島の風呂とのこと。
 以前地上波の旅番組に出演していた岡田茉莉子が伊香保温泉に行き、撮影時に監督、スタッフ、キャストとも
 「ホテル木暮」に泊ったと話していたのを記憶している。

・『女の中にいる他人』
 小林桂樹が静養に出かける福島県「芦ノ牧温泉」。
 入浴シーンは無いが、脱衣場の小林が映る。
 東北新幹線の無い時代、鎌倉から芦ノ牧温泉まで行くのは相当時間がかかっただろう。
・『乱れる』
 高峰秀子と加山雄三は山形県の「銀山温泉」に行くが、入浴シーンは無い。
 成瀬映画ではないが、川島雄三監督『箱根山』では、旅館の番頭の加山が政界の大物=森棘久彌
 の背中を流す風呂シーンがある。
・『妻として女として』
 冒頭、大沢健三郎が家庭風呂に入りながら流行歌を唄っている。
・『秋立ちぬ』
 母親=乙羽信子に連れられて近所の銭湯(新富町)に行く大沢健三郎。
 女湯の乙羽、男湯の大沢の入浴シーンも描かれる。
・『流れる』
 女中の田中絹代に家庭風呂のことで注意する杉村春子。入浴シーンは無かったかと。
・『くちづけ』
 3話オムニバス。成瀬監督のバートの第三話『女同士」には入浴シーンは無いが、
 第二話「霧の中の少女」(鈴木英夫監督)には、温泉に入りながら「小原庄助さん」を
 楽しそうに唄う、司葉子、中原ひとみ、飯田蝶子。隣の男湯にそれを聴いている小泉博。
・『晩菊』
 昔の恋人が訪ねて来る前に近くの銭湯へ行く杉村春子。
 入浴シーンは無いが、銭湯の外観が出てくる。
 これは何年か前まで文京区本郷に実際にあった銭湯。
 管理者も何度か入浴したことが。
・『夫婦』
 杉葉子が実家近くの銭湯に行く。銭湯や入浴シーンは無い。
 銭湯から戻ると地方から実家に着いた夫=上原謙が二階の部屋にいる。
・『石中先生行状記』
 第三話「干草ぐるまの巻」
 農家の青年・三船敏郎が家庭風呂に入って髭をそる。
・『秀子の車掌さん』
 山梨の温泉宿にいる小説家=夏川大二郎が、宿の風呂に入っている姿。
・『鶴八鶴次郎』
 箱根に静養に出かける長谷川一夫と山田五十鈴。旅館は出てくるが入浴シーンは無い。
・『妻よ薔薇のやうに』
 信州へ行き父親=丸山完夫をを東京に連れ戻そうとする千葉早智子。お湯に入っている千葉。

 まだあるかもしれないが記憶にあるのは以上。
<追加>
・『薔薇合戦』
 若山セツ子が家庭風呂に入る。入浴シーンもあり。
 夫=永田光男は嫉妬に狂い、薪を燃やし、脱衣所に鍵をかけ
 若山を風呂に閉じ込める。若山は入院するはめに。

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NEW 2020.3.17 ■オフィス、会社員

◆オフィス、会社員
:『妻よ薔薇のやうに』
 ファーストシーンに登場する千葉早智子の勤務する東京・丸の内のビルオフィス。
 このネクタイ姿の千葉早智子。当時の最先端ファッションに身をつつんだ典型的なモガ(モダンガール)。
 オフィスを退社して帽子をかぶり、丸の内の舗道で恋人でスーツ姿の大川平八郎と会話する。
 まるでロンドンかニューヨークのような雰囲気。
 管理者は後に成瀬監督と結婚してすぐに離婚してしまうP・C・Lの人気女優・千葉早智子のファン。
 演技が上手いとはとても言えないが、愛嬌のある顔が好み。

・『乱れ雲』
 商社に勤める加山雄三。恋人・浜美枝の父であり商社の常務=中村伸郎と自動車事故について会話する。
 加山が左遷される商社の青森支店も何度か登場する。
・『ひき逃げ』
 自動車事故を起こしてしまう司葉子の夫で自動車会社の重役=小沢栄太郎。
 新車の発売を前に会話する自動車会社の会議室。オートバイのテスト走行をするサーキット。
・『女の中にいる他人』
 小林桂樹が勤める小さい出版社。社長=十朱久雄と社長室で会話する。
 執務室で部下の社員と会話する小林。
 小林の友人で亡くなった若林映子の夫=三橋達也。横浜の設計事務所に勤めている三橋を
 会社に訪ねる若林の親友の草笛光子。
・『女の歴史』
 自由が丘で美容室を経営する高峰秀子の一人息子=山崎努が勤める自動車販売会社。
 同僚が児玉清。
・『秋立ちぬ』
 銀座のデパート(松坂屋)に勤める、新富町の八百屋の娘=原知佐子。
 デパートの売り場で従弟の大沢健三郎と旅館の娘=一木双葉と会話する。
・『娘・妻・母』
 会社員の長男=森雅之。オフィス風景は登場しない。
 飲料会社に勤める三女の団令子。同僚で恋人の太刀川寛。社員食堂が出てくる。
・『女が階段を上る時』
 銀座のバーのママ=高峰秀子が集金に行く銀行の支店長=森雅之。支店長室で会話する森と高峰。
・『鰯雲』
 農家の未亡人=淡島千景を取材して親しくなる新聞記者の木村功。厚木の通信部が一瞬登場する。
・『妻の心』
 地元の銀行員=三船敏郎。銀行のオフィスは出てこない。
・『驟雨』
 日本橋の中小の化粧品会社に勤める佐野周二。化粧品会社の外観、執務室とも登場。同僚に加東大介など。
 佐野の隣に引っ越して来た小林桂樹も会社員だが、オフィスは登場しない。
・『山の音』
 丸の内のビルの一室の小さい会社を経営している山村聰。息子の上原謙も勤務。
 山村の秘書は杉葉子。オフィスの社長室、執務室は何度も登場する。
・『妻』
 会社員の上原謙。同僚の丹阿弥弥津子と親しくなってしまう。オフィスの執務室で弁当を食べる上原。
・『夫婦』
 同じ会社に勤める上原謙(地方勤務から戻って来た)と三国連太郎。オフィスの執務室は何度も登場する。
・『めし』
 大阪の証券会社に勤める上原謙。オフィスの執務室での同僚との会話。
・『薔薇合戦』
 化粧品会社が主舞台となる。社長の三宅邦子など
・『俺もお前も』
 会社員の横山エンタツ、花菱アチャコ。オフィスも何度か登場する。
・『浦島太郎の後裔』
 新聞記者の高峰秀子。新聞社も何度か登場。杉村春子は出版社の編集長。
・『母は死なず』
 工場の職工として勤務する菅井一郎。後に研究部長に出世する。
・『秀子の車掌さん』
 甲府近郊の小さなバス会社に勤める運転手の藤原鶏太と車掌の高峰秀子。
 バス会社の社長室が何度か登場する。社長の勝見廉太郎のキャラクターが強烈。
・『まごころ』
 高田稔は甲府の銀行の重役。重役室に娘(悦ちゃん)の成績のことで駆けつける妻の村瀬幸子。
 その他『雪崩』『女人哀愁』『朝の並木路』『女優と詩人』(三代目三遊亭金馬=保険外交員)『生さぬ仲』
『腰弁頑張れ』(山口勇=保険外交員) など

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NEW 2020.3.14 ■公園、庭園

◆公園、庭園
:『夫婦』
 ラストシーンに登場する公園。上原謙と杉葉子。
 この公園がどこだか、現存しているのかがまったくわからない。(下記画面写真)
 生前、杉葉子さん本人に訊ねたこともあるのだが「覚えていない」との返事だった。



・『ひき逃げ』
 映画の冒頭、夫を亡くして5歳の一人息子を育てている高峰秀子。
 働いている横浜・中華街の中華料理店の近くの公園で遊んでいる息子。
・『女の歴史』
 ラストシーン、功平=ひ孫を連れて公園のベンチに坐っている賀原夏子。
 隣のじいちゃんと楽しそうに会話している。
 そこに現れた高峰秀子。功平をほおっておいてと賀原に文句を言う高峰。
 東急世田谷線「松原駅」近くにある「赤松公園」(現存)。
・『秋立ちぬ』
 冒頭、母=乙羽信子と息子=大沢健三郎が立ち止まる「京橋公園」(現存)。
 大沢が、一木双葉の家=旅館に届ける野菜をいじめっ子にどつかれて
 倒れて、袋の野菜を地面に落としてしまうシーンにも登場。
・『娘・妻・母』
 原節子と仲代達矢が散策する「上野公園」内の「東京西洋美術館」。
 敷地内に展示されたロダンの彫刻の前で上原謙と挨拶する。
 『女の歴史』でも登場する同じ「赤松公園」。
 原節子が公園横の道を歩くと、公園で遊んでいた甥っ子(松岡高史)に小遣いをせがまれる。
 三益愛子が公園に孫(松岡高史)を連れて行ったときに、近所の見知らぬじいちゃん(笠智衆)と
 会話する。笠の「この公園は近いうちに取り壊されるそうですな」という台詞。
 ところが、台詞とは異なり60年以上経った現在もこの公園はある。
 ラストシーンでも、同公園に三益と笠(+孫の赤ちゃん)が登場。
・『コタンの口笛』
 宝田明と幸田良子が歩く札幌の「大通り公園」。
・『妻の心』
 群馬県・桐生市にある「桐生ケ岡公園」(現桐生が岡動物園)。
 散策する高峰秀子と三船敏郎。
・『山の音』
 ラストシーン。電話で呼び出された義父=山村聰が、息子の嫁=原節子と
 会話しながら歩く「新宿御苑」(中のフランス庭園)。
・『妻』
 出張した上原謙が丹阿弥弥津子、息子と会う大阪の「中之島公園」。
 上原と丹阿弥は「上野公園」内にある「東京都美術館」にも出かける。
・『おかあさん』
 香川京子、岡田英二、榎並啓子、伊東隆の四人でピクニックに出かける東京「石神井公園」。
・『めし』
 原節子と二本柳寛が会話して散策する、「上野公園」内にある「東京国立博物館』。
・『舞姫』
 京都から帰って来た父=山村聰と会う息子=片山明彦。「上野公園」内にある「東京国立博物館」の前。
・『銀座化粧』
 公園(入船町あたり?)で遊ぶ、田中絹代の一人息子=春雄。
・『薔薇合戦』
 「日比谷公園」を散策する鶴田浩二と若山セツ子。
・『上海の月』
 場所はまったくわからないが、公園を歩くシーンがあった。
 断片的に残っているフィルムを2005年のフィルムセンターでの
 生誕100年上映で一度しか観ていないので詳細の記憶は困難。
・『禍福 前篇、後篇』
 前篇の冒頭に、入江たか子と友人=逢初夢子が散策する「上野公園」。
 後篇にも登場する。
・『女人哀愁』
 冒頭、入江たか子が従兄=佐伯秀男と散策する「日比谷公園」。
 沢蘭子と恋人=大川平八郎も、「日比谷公園」のベンチで会話する。
・『乙女ごころ三人姉妹』
 梅園龍子と恋人=大川平八郎が会話しながら歩く「隅田公園」。

記憶ではこれくらいとなる。気付いたらまた追加する。
多くはロケ地ページに掲載済み。

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NEW 2020.3.12 ■デパートの屋上・店内、遊園地

◆デパートの屋上・店内
:『秋立ちぬ』
 銀座松坂屋(現GINZA SIX)の屋上や店内が何度か登場する。
 一木双葉が大沢健三郎を屋上(さらに階段を登った展望台のような場所)に連れて行き、
 一緒に東京湾を見る。現在は高層ビルにさえぎられ同じ場所から東京湾は見えないだろう。
 従業員の原知佐子と西條康彦(ウルトラQの一平役、成瀬映画には他に『女の座』『乱れる』)もお昼休みに会話する。
 西條が、「あの店(ジャズ喫茶)がアート・ブレーキ―(ジャズドラマー)の新譜を入れた」といった台詞。
 成瀬映画の中にアート・ブレーキ―という言葉(脚本=笠原良三)。管理者のようなジャズファンにはグッとくる。

・『女の歴史』
 高峰秀子は偶然、戦死した夫(宝田明)の友人の仲代達矢と彼の娘と遭遇する。
 渋谷の東急東横店(?)の階段で出会い、一緒に食堂でお茶を飲んで会話する。
・『驟雨』
 夫の佐野周二が、妻の原節子を日本橋の白木屋(→その後東急日本橋店→現コレド日本橋)の屋上に呼び出す。
 佐野は原と会う前に、古い友人の伊豆肇(そこに現れる妻=塩沢登代路(とき))と会話する。
・『夫婦』
 冒頭、杉葉子が女学校の友達(中北千枝子など)と会う銀座松坂屋の屋上。『秋立ちぬ』と同様の
 展望台から下の屋上にいる友達に手を振る杉。
・『乙女ごころ三人姉妹』
 浅草松屋の屋上。堤真佐子は偶然(家出した)姉の細川ちか子と出会い会話する。

管理者も子供の頃、母親と都内のデパートに行くと、屋上に連れて行ってもらった。
昭和30年代後半〜40年代まで、デパートの屋上はミニ遊園地のようなところだった。
歌手や怪獣、ヒーローもののショーもあり、
管理者にとって印象深かったのは新宿小田急デパートの屋上で見た「マグマ大使ショー」。
管理者も「マグマ大使、飛んでぇ」と叫んだ子供の一人だっただろう。
マモル少年役の江木俊夫(黒澤『天国と地獄』、フォーリーブス)も子供たちに大人気だった。
20数年後、勤めていた会社の仕事の関係で原作者の手塚治虫先生とお会いして会話できるとは夢にも思わなかった。


◆遊園地
:『おかあさん』
 田中絹代が娘(香川京子、榎並啓子)と甥(伊東隆)を連れて、
 「向ヶ丘遊園」(神奈川県川崎市 2002年閉園)に遊びに行く。
 映画には当時(1952)あったウォータースライダーなどの映像が。

・『女の中にいる他人』
 横浜市の「横浜ドリームランド」(2002年閉園)に遊びに行く
 小林桂樹、新珠三千代夫婦と二人の子供。
・『女の座』
 高峰秀子の夫の三回忌。墓詣りの後に「向ヶ丘遊園」が登場する。
 司葉子、星由里子、淡路恵子、三橋達也がくるくる回るブランコのような遊具に
 乗って楽しくはしゃいでいるのを見て「バカみたい」と吐き捨てるように言うクールな草笛光子。
・『妻として女として』
 高峰秀子は実の息子である大沢健三郎(淡島千景が育てている)の学校帰りに
 大沢の友達も連れて後楽園遊園地(東京)のジェットコースターに乗る。

記憶ではデパート、遊園地の出てくる作品は以上だが、気付いたら追加する。

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NEW 2020.3.11 ■電話

◆電話
:『噂の娘』
 映画の後半、藤原釜足は兄=御橋公へ電話をかける。
 兄の長女の千葉早智子と大川平八郎の見合いだったが、同席した
 千葉の妹の梅園龍子と大川が付き合っているという話を御橋へ伝える藤原。
 「どうも今の若い者のやることは、スピードがあってわからないですよ」
 と言う藤原。現代の映画の台詞ではない。昭和10年の映画だ。
 印象的な電話での会話シーンである。
: 『流れる』
 「つたの家」への電話。芸者の杉村春子が出る。
 「つたの家」の女将・山田五十鈴から。
 電話で山田から(清元?常磐津?)の調子について確認する杉村。
 贅沢な共演ショットだ。

 成瀬映画では電話は不吉な知らせであることが多い。
 交通事故や電車事故で亡くなった、怪我をしたなど。

・『乱れ雲』
 司葉子の夫=土屋嘉男が自動車事故で重体(亡くなる)との電話連絡を
 司の義兄の藤木悠が受ける。
・『ひき逃げ』
 息子が自動車事故にあった(亡くなる)ことを電話で知らされる母親の高峰秀子。
 ショックのあまり寝込んでしまう。
・『女の中にいる他人』
 小林桂樹と妻・新珠三千代が逗留している芦ノ牧温泉の旅館の電話に
 長男が高熱で入院したとの連絡が入る。
・その他『女の歴史』(自動車事故)、『女の座』(電車事故)、『娘・妻・母』(自動車事故)など

呼び出しの電話としては
・『驟雨』(夫=佐野周二が妻=原節子を日本橋白木屋の屋上に呼び出す)、
・『山の音』(ラスト前、嫁=原節子が義父=山村聰を新宿御苑に呼び出す)
・『女人哀愁』(入江たか子が従兄=佐伯秀男を日比谷公園に呼び出す)
など。

その他の作品にも電話シーンはあると思うが、今後気づいたら追加していく。

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NEW 2020.3.4 ■自然 (4)山、山道、高原、山間の温泉地など

◆山、山道、高原、山間の温泉地など
:『お国と五平』
 ファーストシーン。木暮実千代と大谷友右衛門の二人が山道を歩く。
 休憩する二人。目の前に見える山々はかなりの高さだ。
 本作には急な草むらの山道を登るシーンもある。

・『乱れ雲』
 司葉子が畑仕事をしている高原を加山雄三が訪ねる。
 会話の後の二人のラブシーンが美しい。
・『女の中にいる他人』
 山間部にある福島県の芦ノ牧温泉。小林桂樹と新珠三千代が山道を歩く。
 小林が告白するトンネルは奥多摩(御岳)。
・『乱れる』
 山というほどではないが、かなりの高台にある静岡県清水にある鉄舟寺。
 加山雄三が階段を上っていくと、お堂の前に高峰秀子がいる。
 二人の会話。加山が亡くなった兄の妻=高峰に愛の告白をする重要なシーン。
 ラストの山形県・銀山温泉。
・『娘・妻・母』
 仲代達矢が勤務する山梨県の高原のワイナリーに出かける原節子、宝田明、淡路恵子、団令子、太刀川寛たち。
 ホームビデオ上映会にも登場する。
・『コタンの口笛』
 札幌に出かけた美術教師=宝田明と生徒の幸田良子。
 二人は札幌郊外の藻岩山の山頂にロープウェイに乗って行く。そこから見える札幌の街並み。
・『鰯雲』
 小林桂樹の見合いの相手(司葉子)の家を訪ねる木村功と淡島千景。
 厚木からバスに乗り、厚木の北にある山間部の半原へ行く。
・『あらくれ』
 場所は不明だが、高峰秀子が働きに出る山間部の温泉地の旅館。
・『浮雲』
 森雅之と高峰秀子が年末から正月を過ごす、群馬県の伊香保温泉。
・『白い野獣」
 場所は不明だが、森に囲まれた高台の白百合寮が舞台となる。
・『春の目ざめ』
 久我美子が男女の学生仲間と登る松本市郊外の山(不明)。
・『俺もお前も』
 会社員の横山エンタツと花菱アチャコ。社長の計らいで山間部の温泉に行くが
 闇物資を運ばされる。
・『禍福 前篇」
 群馬県桐生市郊外の山にピクニックに行く高田稔と竹久千恵子。
 芦ノ湖を見下ろす峠で会話する入江たか子、大川平八郎、逢初夢子。
・『桃中軒雲右衛門」
 静岡郊外の山に狩猟に行く雲右衛門(月形龍之介)と弟子たち。

 山並みの情景ショットとしては他の作品にも登場しているだろう。


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NEW 2020.3.2 ■自然 (3)川、河原、運河、掘、橋など

◆川、河原、運河、掘、橋など
 よく登場する川は「隅田川」「多摩川」「築地川」など

★「隅田川」
:『流れる』
 タイトルバックでは隅田川が描かれる。ファーストショットは「柳橋」を歩く芸者の姿。
 後半に、高峰秀子と仲谷昇が隅田川沿いの道を散策する。

・『女が階段を上る時』
 佃島の実家で静養している高峰秀子。当時あった隅田川の渡船場の情景ショット。
・『稲妻』
 小沢栄太郎はオートバイに乗って隅田川の横の道を走る。
・『銀座化粧』
 隅田川近くの電話ボックスから東野英治郎へ電話をかけている田中絹代。
・『薔薇合戦』
 隅田川に面した料亭。安部徹と若山セツ子。
・『怒りの街』
 隅田川に面した道で会話する宇野重吉と久我美子。
・『浦島太郎の後裔』
 隅田公園と隅田川の情景ショット。
・『噂の娘』
 隅田川の乗り合い船に乗る千葉早智子。
・『乙女ごころ三人姉妹」
 隅田川の堤防の近くででパンを食べる堤真佐子。
 その他『夜ごとの夢』など

★「多摩川」
:『あにいもうと』
 タイトルバックから多摩川の情景ショット。。
 多摩川の土手、河原、砂利道などが頻繁に登場する。
 浦辺粂子が経営する土手にある売店も重要な舞台となる。

・『女の座』
 多摩川の土手を「おてもやん」を唄いながらおどける三橋達也。
 それを笑う淡路恵子、司葉子、星由里子。
・『秋立ちぬ』
 多摩川の河原でカブトムシを探す大沢健三郎。オートバイに乗せてきた夏木陽介は多摩川で泳ぐ。
・『鰯雲』
 ボート場の近くの土手で会話する淡島千景と木村功。
・『めし』
 ボート場横の土手を着物姿で歩く原節子。

★「築地川」
:『秋立ちぬ』
 冒頭、乙羽信子、大沢健三郎親子が、着物を着て踊りの稽古をしながら歩く一木双葉と遭遇する「新富橋」。
 大沢と一木が晴海に出かける前にもこの橋は登場する。

・『女が階段を上る時』
 三吉橋で会話する高峰秀子と仲代達也。
・『銀座化粧』
 「新金橋」『築地橋』「亀井橋」「新桜橋』「新金橋」など築地川界隈の多くの橋が登場する。

★その他
・『乱れ雲』
 司葉子と土屋嘉男の進行旅行の回想シーンに登場する奥入瀬渓谷。
・『女の中にいる他人』
 温泉療養(福島県・芦ノ牧温泉)に出向いた小林桂樹と後から駆けつけた新珠三千代。
 河原を散策する二人。
・『乱れる』
 銀山温泉街の前を流れる川。
・『コタンの口笛』
 森雅之、幸田良子、久保賢の家の前を流れる川。
 幸田良子と水野久美が会話する千歳川と「仲の橋」。
・『妻』
 大阪・中之島公園と土佐堀川。上原謙と丹阿弥弥津子と息子が会話する。
・『稲妻』
 木場の大横川にかかる新田橋を渡る高峰秀子と三浦光子。現在は建て替えられているがロケ地写真には当時の橋が。
 ここは川島映画『洲崎パラダイス 赤信号』のロケ地に近い。
・『めし』
 大阪・道頓堀川。上原謙と島崎雪子が食事する鰻屋。原節子が出かけた同窓会の宗右衛門町の料亭界隈。
・『舞姫』
 岡田茉莉子と木村功が出かけるバレエの先生(大川平八郎)の見舞いに出かける奥多摩。多摩川の上流?の河原。
・『春の目ざめ』
 久我美子と妹が花嫁を見る松本市の女鳥羽川と「中の橋』。
 水遊びをする女子学生。松本市郊外の奈良井川と松島橋。
・『芝居道』
 大阪・道頓堀界隈の芝居小屋が舞台。芝居小屋の前の通りや橋もセットのようだ。
・『秀子の車掌さん』
 高峰秀子のガイド、藤原鶏太の運転するバスが通る山梨市の笛吹川と「万力大橋」。
・『旅役者』
 藤原鶏太と柳谷寛が水浴びをする信州あたりの川。
・『まごころ』
 悦ちゃんと加藤照子が水遊びをする甲府市の荒川と「荒川橋」。悦ちゃんは川で足を怪我する。
・『禍福 前篇』
 群馬県桐生市郊外の川(不明)の土手で会う高田稔と竹久千恵子。
 竹久は乗馬服姿で馬に乗ってというインパクトのある登場。
・『朝の並木路』
 千葉早智子と大川平八郎が会話する、深川・仙台堀川の「清澄橋」
・『噂の娘』
 深川にあった油掘川(現在は道路)と「一木橋」と「丸太橋」。
 叔父=藤原鎌足と姪の千葉早智子、梅園龍子が歩く。
 小津監督の生誕地の近く。
・『妻よ薔薇のやうに」
 信州に砂金を取りに行った父=丸山完夫が川で砂金探しをしている。
 そこを突然訪ねていく娘の千葉早智子。
・『君と別れて』
 大森の料亭街の中の堀と橋、遠くに東京湾を望む情景ショット。

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NEW 2020.2.29 ■自然 (2)湖、池

◆湖、池
:『鶴八鶴次郎』
 箱根の芦ノ湖畔。温泉に逗留している長谷川一夫と山田五十鈴の会話。
 木の椅子に座り、立ち上り、振り返りと二人の動きがショットごとに変化する。
 夕方の光線(順光と逆光)の効果もあり、美しく、躍動感に満ちた屋外シーンの
 成瀬演出の極致だ。

・『乱れ雲』
 司葉子の実家の旅館のある十和田湖。亡くなった夫・土屋嘉男との新婚旅行の回想シーン。
 ラスト近く、加山雄三と司葉子は十和田湖でボートに乗る。
 雨が降って来て、熱のある加山を近くの旅館の部屋に寝かして看病する司。
・『妻として女として』
 十朱久雄の運転する自動車に乗って芦ノ湖湖畔を散策する高峰秀子、淡路恵子、丹阿弥弥津子など。
・『コタンの口笛』
 コンクール出品のために、生徒・幸田良子、弟の久保賢を連れて
 支笏湖の湖畔で湖をバックに幸田をモデルに絵を描く、美術教師の宝田明。
・『杏っ子』
 自電車に乗って芦ノ湖を訪れる香川京子と藤木悠、再び訪れた時は香川と土屋嘉男。
・『お国と五平』
 木暮実千代と大谷友右衛門の旅の情景で、湖畔の道を歩く二人。
・『おかあさん』
 香川京子、岡田英次、栗原則子、伊藤隆の4人でバスに乗ってピクニックに行く。
 場所は練馬区の石神井公園。池の周りを歩いた後、坐ってパン屋の岡田の作ったピカソパンを食べる。
・『春の目ざめ』
 ラスト、夏休みで賑わう信州の湖(確か野尻湖の看板?)に行って友人たちとはしゃぐ久我美子。可愛い。
・『三十三間堂通し矢物語』
 弓の稽古の後に、池に面した道を歩く長谷川一夫と市川扇升。池は京都・嵯峨野大覚寺の大沢池。
・『母は死なず』
 菅井一郎は息子・小高まさるを連れて栃木・日光の中禅寺湖湖畔の旅館に逗留する。

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NEW 2020.2.28 ■自然 (1)海、海岸、港

◆海、海岸、港
:『秋立ちぬ』
 信州育ちで海を見たことのない大沢健三郎を東京湾に連れて行く一木双葉。
 銀座からハイヤーで晴海埠頭に行き、そこから二人は豊洲あたりの埋立地を歩く。
 海岸で水遊びをする二人。その前に広がる東京湾は波は穏やかだが何となく荒々しい。
 あの海岸も今は埋め立てられているだろう。
 1960年頃の東京湾(川島映画『人も歩けば』も同時期のロケーション)と埋立地の貴重な映像だ。

・『女の中にいる他人』
  小林桂樹と新珠三千代夫妻の家は鎌倉なので、稲村ケ崎、七里ヶ浜が登場する。
  ラスト、新珠のナレーションと海岸ではしゃぐ子供たち。ストップモーションの映像で終わる。
・『浮雲』
  冒頭は引揚船から降りて、リュックをしょって歩く高峰秀子。
  ラスト近くは船でも述べた鹿児島港。そして屋久島(実際は伊豆で撮影とのこと)。
・『鰯雲』
  木村功と淡島千景の二人が歩く七里ヶ浜の海岸。江の島が見える。
・『君と別れて』
  帰省した水久保澄子は磯野秋雄を連れて海岸に行く。岩場の海岸はかなりワイルドで高波の海も印象的。
  サイレント映画なので、かえって海の荒々しさが表現されている。
・『放浪記』
  成瀬映画には珍しいアバンタイトルそれに続くタイトルバックで、少女時代の芙美子と両親の正に「放浪」が描かれる。
  穏やかな海(瀬戸内海?)を眺める芙美子。
・『夜ごとの夢』
  冒頭、港で船員たちが、船から降りた栗島すみ子に話しかける。
・『生(な)さぬ仲』
  船でも述べた女優役の岡田嘉子がアメリカから帰国した港。横浜港?
・『君と行く路』
  舞台となる家は、湘南あたりの海岸の近くにある。
・『雪崩』
 ラスト、江戸川蘭子が弟の生方明と犬を連れて海岸(由比ガ浜?)を歩く。
 映画の中に由比ガ浜近くの標識が映る。
その他、『朝の並木路』や『舞姫』にも海、海岸は登場していたと記憶している。

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NEW 2020.2.26 ■乗物 (5)船、その他

◆船
:『浮雲』
 ラスト近く。鹿児島港から病弱の高峰秀子を連れて大型船で屋久島へ渡る森雅之。
 船室で横になっている高峰を診る医者の大川平八郎。
 PCL時代の成瀬映画には『妻よ薔薇のやうに』『噂の娘』『朝の並木路』『君と行く路』『女人哀愁』
 など、準主役級に出演していた男優だ。成瀬映画は本作の出演が最後になる。
 1920年代にアメリカに行き、1933年に帰国してPCL入社。1957年頃にヘンリー大川の芸名に(ウィキペディアによる)
 管理者が最初にヘンリー大川をスクリーンで観たのは6歳の時 !
 『三大怪獣 地球最大の決戦』(本多猪四郎監督 1964 東宝)の冒頭。
 宇宙を研究している「円盤クラブ」の一員で、取材に来た星由里子をなじる中年男の役だ。
 船に話を戻すと(笑)、大型船から小さい船に乗り換えて、雨の中寄り添う高峰と森のショットは
 本作でよく使われるスチールの1枚だ。
 管理者は『浮雲』は暗くてあまり好きではないのだが、この屋久島に向かう船の二人のシーンは
 斎藤一郎の音楽の効果もあり心が揺さぶられてしまう。
 
 ・『噂の娘』
  隅田川の蒸気船?
  乗船している千葉早智子は、並んで橋に立っている、見合いをしたばかりの大川平八郎と妹=梅園龍子の姿を見かけてしまう。
 ・『めし』
  原節子が登戸駅近くの多摩川の土手を歩く、貸ボート場が映る。
 ・『鰯雲』
  淡島千景と木村功が多摩川の土手に坐る。多摩川に浮かぶボート。
 ・『歌行燈』
  船着き場(桑名行?)の近くの茶店で酒を酌み交わす花柳章太郎と柳永二郎。
 ・『生(な)さぬ仲』
  アメリカから帰国した女優(役)の岡田嘉子が乗っている大型客船のデッキ。
  岡田嘉子は1930年代に夫と当時のソビエトに亡命したが、1972年に帰国した。 
  その時のニュースは管理者も覚えている。
  
  情景ショットとしては隅田川界隈が『夜ごとの夢』(栗島すみ子が乗っていた?)『乙女ごころ三人姉妹』『怒りの街』『銀座化粧』
  『稲妻』『流れる』『女が階段を上る時』など。


◆その他

 ★ロープウェイ
  ・『コタンの口笛』で宝田明と幸田良子は、札幌郊外の藻岩山(もいわやま)のロープウェイに乗る。
   管理者も雪深い冬に乗った。
 ★地下鉄
  :今回記憶を辿り調べてみたが、成瀬映画に地下鉄が登場する映画は無いように思う。
  まだ路線は少なかったと思うが、1960年代の日本映画には地下鉄や駅のホーム、出入口は
  多く登場している。
 ★:飛行機
  :同じく、飛行機や空港が登場する成瀬映画も記憶に無い。あるだろうか?
  情景描写としては、『妻として女として』の高峰秀子と森雅之の回想シーンに
  防空壕の前に立って、アメリカ軍の爆撃機が空を飛ぶのを見上げるショットくらいか?
  模型飛行機であれば、『なつかしの顔』の冒頭に登場して、ストーリー展開上重要なアイテムとなっている。
  小津映画では、確か『お茶漬けの味に羽田空港と飛び立つ旅客機が映る。
  川島映画には、飛行機やセスナが頻繁に登場する。
  『新東京行進曲」(ファーストシーンはセスナの中)、『東京マダムと大坂夫人』
  『昨日と明日の間』『続 飢える魂』『箱根山』など。他にもあったかも・・・

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NEW 2020.2.26 ■乗物 (4)自動車、タクシー

◆自動車
:まず挙げられるのが『ひき逃げ』。
 自動車会社の重役(小沢栄太郎)の妻=司葉子は、若い愛人(中山仁)を乗せた自家用車で
 運転中に誤って子供=高峰秀子の一人息子をひいてしまう。
 夫は運転手(佐田豊=黒澤映画『天国と地獄』でも運転者役)を代わりに自首させて
 妻の交通事故を隠蔽する。
 横浜(本作の舞台)の山手あたりの道で子供がひかれる場面は、成瀬映画に珍しく
 交通事故の様子をリアルに描写している。
 
 成瀬映画で登場人物が亡くなるのは、自動車事故と電車事故が多いのは良く知られている。
 本作の次の遺作『乱れ雲』では、逆に司葉子は夫(土屋嘉男)を自動車事故で亡くす。

 ・『女の歴史』
  高峰秀子の一人息子(山崎努)は自動車会社のセールスマン。後に妻となるホステスの星由里子を乗せて
  夜のドライブをする。山崎はトラックとの衝突事故で亡くなってしまう。
 ・『女の座』
  宝田明は外車のブローカー。宝田に好意を持った草笛光子は宝田の薦める外車を購入しようとする。
  宝田が高峰秀子を乗せて運転する場面もある。
 ・『鰯雲』
  料理屋の経営者の新珠三千代は、自動車免許を取るために教習所へ通う。
  教習所の描写は無い。
  成瀬映画ではないが、川島映画『赤坂の姉妹 夜の肌』でも新珠は教習所に通う。
  教習所で運転する(1960年当時赤坂に実際にあった教習所らしい)シーンもある。
 ・『禍福 後篇』
  外交官の高田稔の妻=竹久千恵子は、銀座の洋装店に勤める入江たか子(高田の婚約者だったが一方的に破棄される)
  と偶然知り合い、入江の住む下町のアパートを訪れる。アパートの前に駐車している自家用車。
 
 この他、街中の風景ショットもあわせれば、成瀬映画のほとんどに自動車は登場しているだろう。
思い出したら今後も追加する。

◆タクシー
:印象的なのは『秋立ちぬ』で銀座から東京湾・晴海埠頭にタクシー(ハイヤー)を利用する
 一木双葉と大沢健三郎。途中の車窓風景で勝鬨橋も出てくる。
 晴海埠頭で降りた二人。一木双葉は運転手に「家(=旅館)の方に伝票をまわしといて」と
 大人びたことを言う。
 成瀬映画には高峰秀子、原節子をはじめとした日本映画を代表する女優達が登場するが
 本作の一木双葉も子役ながら魅力的なヒロインの一人だ。今どうしているのだろう?

 ・『妻よ薔薇のやうに』
  信州から東京に戻って来た父(丸山完夫)と一人娘の千葉早智子が、
  青山あたりの道(おそらく現在の骨董通り)で円タクを拾おうとして手を上げるが、なかなか拾えない。
  この時に千葉が「最近見た映画で・・」といって真似するのが、フランク・キャプラ監督
  の名作『或る夜の出来事』に登場する(クラーク・ゲーブルとクローデット・コルベール)
  が行うヒッチハイクの仕草だ。
  笑い合う無邪気な夫と娘に対して冷たい視線を送り「歩きましょう」と言う伊藤智子。
  次のショットでは、円タクの座席に座っている三人の姿という「逆転つなぎ」の省略法が見事。
 ・『山の音』
  山村聰が秘書の杉葉子と一緒に、息子=上原謙の愛人(角梨枝子=綺麗!)の住んでいる家
  に向かうのはタクシーだろう。また山村が嫁の原節子を病院(信濃町の慶応病院)へ送っていく
  車中もタクシーだと思われる。
 ・『乙女ごころ三人姉妹』
  ラスト、不良に脇腹を差された堤真佐子は、円タクを拾って上野駅へ向かう。
  姉=細川ちか子と夫の滝沢修(若き滝沢修が竹中直人に似ていて驚く)は上野駅から
  旅立とうとしている。サスペンス満載のショット展開が見られる。
  

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NEW 2020.2.25 ■乗物 (3)自転車、オートバイ

◆自転車
:自転車が多く登場するのは『杏っ子』。
 ファーストシーンは姉=香川京子と弟=太刀川洋一が会話しながら自転車に乗って走る。
 前半は戦後間もない時期の疎開先(ロケーションは箱根)という設定なので、自転車は欠かせない交通手段だ。
 香川京子が、藤木悠、土屋嘉男をそれぞれ湖(芦ノ湖)に案内する場面にも自転車が登場する。

 ・『山の音』
  夕方鎌倉の家に帰宅する義父=山村聰の後ろから「おとうさま」と呼びながら自転車に乗って走る原節子。
  自転車から降りた原は自転車を押しながら、山村と並んでゆっくりと歩く。
 ・『鰯雲』は冒頭、加東大介が自転車を押しながら淡島千景の姑=飯田蝶子に話しかける。
  農家の取材に訪れた新聞記者の木村功を、後ろに乗せて自転車で町(厚木)へ送る。
  その他にも淡島千景が自転車に乗る場面がある。
 ・『くちづけ』第三話「女同士」では、近所の八百屋のあんちゃん=小林桂樹が自転車で走ったり、
  押して歩いたりする。
 ・『妻の心」にはキッチンの店主の加東大介が、客の芸者に「自転車買ったんだってね」と話す。
  ラスト近く、自転車を押して歩く小林桂樹と妻の高峰秀子が町(群馬県桐生市)の路地を並んで歩く。
 ・『あらくれ』では、夫の加東大介から自転車を習う高峰秀子と自転車に乗って洋装店のチラシを持って
  走る高峰が描かれる。

◆オートバイ
:『秋立ちぬ』の八百屋の息子=夏木陽介が、いとこの大沢健三郎をオートバイの後ろに乗せて夜の道路を走る。
 カブトムシを探しに多摩川へも後ろに乗せて連れて行く。
 
 ・『稲妻』では、パン屋の小沢栄太郎が隅田川沿いの道をオートバイで走る。
 ・『ひき逃げ』では、自動車会社のオートバイの新車の走行テストをサーキットで行う。
  サーキットを凄いスビートで走るオートバイの映像は成瀬映画には珍しいレアショットだ。
 

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NEW 2020.2.25 ■乗物 (2)バス、観光バス

:真っ先に挙げられるのが、甲府附近のバス会社を舞台にした『秀子の車掌さん』。
 田舎のバスの運転手は藤原鶏太、車掌が高峰秀子。
 バスの乗客を増やそうと名所・旧跡の紹介するべく奮闘する17歳の高峰が微笑ましい。
 太平洋戦争直前1941年の、どこかのどかな田舎道、山、川の風景も楽しい。
 強烈なキャラクターのバス会社社長=勝見廉太郎が凄い。
 高峰秀子は『稲妻』でもはとバスのガイド役。

 その他バスの出てくるのは
 ・『めし』(上原謙と島崎雪子が大阪市内の観光バスに乗る)
 ・『おかあさん』(石神井公園にピクニックに行く香川京子、岡田英次、榎並啓子、伊東隆)
 ・『あにいもうと』(久我美子と堀雄二がバスに乗って駅で降りる。同じバスに船越英二も乗っている)
 ・『鰯雲』(木村功と淡島千景は厚木からバスに乗り、半原で降りる)
 ・『コタンの口笛』(宝田明と幸田良子は地元の千歳から札幌までバスに乗る)
 ・『乱れる』(高峰秀子と加山雄三は大石田駅前から銀山温泉までバスに乗る)
 ・『乱れ雲』(司葉子は青森から?バスに乗り十和田湖近くの実家=旅館のバス停で降りる)
 ・『なつかしの顔』(花井蘭子と馬野都留子はバスに乗って出征兵士のニュース映画を町の映画館に観に行く)
 ・『朝の並木路』(冒頭、千葉早智子は田舎から東京へ行くためにバスに乗る) など
  
  バスに乗るシーンは無かったと思うが、『杏っ子』で父親=山村聰は香川京子をバス停まで送っていく。

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NEW 2020.2.24 ■乗物 (1)電車

:成瀬映画の電車といえば、多くの方がまず『乱れる』を挙げるだろう。
 静岡県清水駅に入って来る急行(特急?)に乗り込む高峰秀子。山形の実家に向う高峰。
 その車内に義弟の加山雄三の姿を見つけて驚く高峰。
 四人がけの席に坐っている高峰と立っている加山。
 時間経過で車中の短いショットを積み重ねながら、加山も高峰の前の席に坐る。
 朝、山形県の大石田駅に着いてそこからバスで銀座位温泉に向かう。
 二人の人物の位置によって心理状態を表現するのは成瀬映画によく出てくる手法だが、
 この『乱れる』の車中ほど見事な映像表現は無い。

 同様に長距離の急行では、大阪駅から東京の実家に戻る原節子と夫の姪の島崎雪子。
 そこに同じ急行の別車両に乗って帰京する原のいとこの二本柳寛。
 ラストには、逆に東京から大阪に戻る上原謙(座席で寝ている)と原の車中が短く描かれる。
 その他、急行では『妻』(大阪に出張する上原謙)、『夫婦』(仙台に出張する上原謙)、
 『杏っ子』(新婚旅行の香川京子と木村功)、『浮雲』(森雅之と高峰秀子が乗っている鹿児島行の急行)。
 『秀子の車掌さん』(東京行の電車に乗っている小説家=夏川大二郎を踏切で見送る高峰秀子と藤原鶏太)。
 『妻として女として』(熱海から一人で東京行きの急行に乗っている高峰秀子)

 通勤電車では、世田谷の小田急線「梅が丘」駅から日本橋の会社へ出勤途中の混雑した車中で
 顔をゆがめる佐野周二が印象的な『驟雨』。
 鎌倉駅から横須賀線で東京駅・丸の内の会社へ出勤の山村聰と上原謙。ここでは二人は
 座席に座ってゆったりと出勤。嫁の原節子が東京の病院へ検査に行くときに一緒に座席に
 坐っているのは義父の山村聰。

 その他、
 ・『鶴八鶴次郎』の冒頭。川崎大師を参詣した後の、長谷川一夫と山田五十鈴の乗っている電車。
 ・『君と別れて』。芸者の水久保澄子が、芸者仲間(吉川満子)の中学生の息子=磯野秋雄を連れて
  海沿いの故郷に帰省する電車。ラストの「品川駅」ホーム。
 ・『舞姫』。バレリーナの岡田茉莉子が、脚を怪我して療養中の先生・大川平八郎の見舞い(奥多摩?)
  で利用する電車のホーム。バレエ教室=自宅のある鎌倉の江ノ電のホーム。
 ・『歌行燈』。能の公演で伊勢の古市へ向かう大矢市次郎、伊志井寛、花柳章太郎が乗っている電車。
 ・『旅役者』。信州あたりの駅のホーム。「六代目菊五郎一座」の役者たちが着いた電車から降りて来る。
 ・『乱れ雲』。ラスト近く、蔦温泉に向かうタクシー車中で踏切を通過する電車を見送る司葉子と加山雄三。
 ・『めし』。ホームで待つ島崎雪子と大泉滉と難波行の阪堺線。
 ・『まごころ』。ラスト、出征する高田稔の見送りに甲府駅のホームにいる入江たか子、村瀬幸子、悦ちゃん、加藤照子。
 ・『おかあさん』冒頭の風景ショット
 ・『女優と詩人』冒頭の風景ショット
 ・『妻として女として』冒頭の風景ショット
 ・『薔薇合戦』冒頭の風景ショット(有楽町駅)
 ・『浮雲』。森雅之と高峰秀子が歩く後ろを走る目白駅近くの西武池袋線の風景ショット
 ・『女の歴史』。戦後の闇市へ買い出しに出かける高峰秀子が乗る電車。
 ・『雪崩』。佐伯秀男と霧立のぼるは、東京から名古屋まで列車に乗る。
 
 以下は記憶が曖昧だが
 ・『妻よ薔薇のやうに』
 ・『桃中軒雲右衛門』
 ・『怒りの街』
 にも確か電車は登場する。

 まだあるかもしれない。
 成瀬映画に限らずだが、風景ショットも含め映画の中で電車がいかに多く登場するかということだろう。


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