成瀬映画に登場する風景(87)


『そよ風父と共に』(1940年) ①  NEW 2015.11.4


成瀬巳喜男監督の原作・脚本で、弟子の山本薩夫監督作品の『そよ風父と共に』(1940)
正確に言えば成瀬映画ではないが、原作・脚本だけあって成瀬調の家庭劇である。
主演の高峰秀子、藤原釜足、丸山定夫、清川荘司、柳谷寛、清川玉枝など成瀬映画常連の俳優たち。
珍しいのは当時「御舟京子」の芸名の加藤治子が高峰の女学生友達役として出演している。

この映画の舞台となっているのが、今から75年前! 1940年(昭和15年)当時の世田谷・下北沢界隈である。
原作・脚本の成瀬監督は若い時に一時下北沢に住んでいたそうなので、この辺の土地勘があるのだろう。
当時の映画で下北沢界隈のロケーションというのはかなり珍しいのではないか。

この映画は2005年の生誕100年の時に、日本映画専門チャンネルの「成瀬巳喜男劇場」で放送された時に初めて観た。
成瀬映画特集でもまず上映されることのない(実際には山本薩夫監督なので当然だが)レアな作品だ。
70分くらいの小品だが、当時15-16歳の高峰秀子は可愛いし、心温まるとてもいい映画なので上映機会の少ないのは残念だ。
そして1940年当時の下北沢界隈の映像が観られる貴重な映画でもある。

このロケ地については5-6年前にある知人に教えていただいていたのだが、
これまで自分で写真を撮りに行く機会がなく、今回撮影してきたのでアップした。

写真の枚数が多いので①と②に分ける。


映画の冒頭、学校帰りに本を読みながら歩く秀子(高峰秀子)のシーンに登場する坂道。
避けようと自転車に乗っている小僧さんが転倒するという定番ギャグ。
現在の住所は世田谷区代沢2-31あたりの住宅地である。
前方は井の頭線の「池ノ上駅」方面、手前は「下北沢駅(南口)」方面である。
左の家の白い石塀は映画の中にも映っている。電信柱の位置も一緒。




上記の坂道のシーンに続くシーン。高峰が本を読み続けて歩いている。
後ろに見える高架橋は「井の頭線」(下北沢駅~池ノ上駅)
店は当然変わっているが道の感じはあまり変わっていない。




上記の場所で高峰を見つけて声をかける父親(実の父ではないのだが)の周三(藤原釜足)。
「月の湯」という名前の銭湯の主人だ。高峰はそこの娘。

この祠(ほこら)が特徴的。
下北沢駅南口から代沢三差路へ向かった途中にある「餃子の王将下北沢店」(ここが映画に登場する月の湯のあった場所らしい)の斜め前に現存する。

ここは映画『モテキ』の中で、長澤まさみが「わたしドローンします」と忍者の手裏剣投げの可愛い仕草をするシーンにも登場していた。

ただし、上記の写真(高架橋)の場所とは位置的に少し離れている。

(1)撮影当時は上記の写真の手前に同様の「祠」があったのか
(2)その「祠」をここに移動したのか
(3)位置の離れたこの場所で撮影して編集で同じ場所としてつないだのか
の3パターンが考えられるが、どれが正解かはもちろん不明。




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