成瀬映画に登場する風景
『女の中にいる他人』(1966年) ④ NEW 2016.10.23
映画のオープニングのクレジットタイトルの最後、監督成瀬巳喜男と出た後のファーストシーン。
雨上がりの大通りの舗道を歩いていく田代(小林桂樹)。
途中で立ち止まりタバコに火をつける。
ロケ地は東京の「青山通り」。
地下鉄の赤坂見附駅から青山一丁目駅へ向かった、赤坂御用地の横の舗道。
正確な場所は不明。写真は推定場所。
このロケ場所は、本作の助監督を務めた故・石田勝心監督から直接教えていただいた。
映画の画面では青山通りの手前側と舗道の一部が水で濡れているが、これは撮影用に水を撒いたとのこと。
本作の前半はほとんど雨が降っていて、ミステリー映画の雰囲気を醸し出している。
小林桂樹が立ち止まってタバコを吸う。
上の写真の逆アングル。
この後、タバコを持つ手を下げたところで
灰皿にタバコを置く手とショットをつなげた場面転換となる。
喫茶店のようなビアホールに座ってビールを飲む小林桂樹。
小津映画にも頻繁に登場する映画編集のテクニックの一つ「アクションつなぎ」は、
通常は同一人物、同一場所で行うのがスタンダードだが、
成瀬監督は「アクションつなぎ」で別の場所に場面転換をさせる
という渋い編集を多用する。
青山通りから見た赤坂4丁目方向。旧地名は赤坂丹後町(たんごちょう)。
田代の親友の杉本(三橋達也)の妻・さゆり(若林英子)が絞殺された
アパート(さゆりの親友の加藤弓子=草笛光子の部屋)があるという設定の場所。
三橋達也の台詞に「赤坂丹後町にあるアパート」という言葉が出てくる。
映画の中のアパートは撮影所内のセットだろう。
現在の赤坂4丁目にも「丹後坂(たんござか)」という坂がある。