成瀬映画に登場する風景(90)


『妻』(1953年) ③ NEW2016.8.20


今回の昭和28年公開『妻』(未DVD化)のような60年以上も前の映画の場合、
当時のロケ地を探すのが最も困難なのは「住宅街」です。
それだけの年月が経ているので映画に映っている道や住宅がそのまま残っていることはまずあり得ません。
マンションや駐車場になっていることもあるでしょう。
場所の特定はほぼ不可能なのですが、今回は映画の中でヒントがあったのでチャレンジしてみました。

夫・中川(上原謙)の浮気を疑って、夫の上着のポケットを確かめる妻・美種子(高峰三枝子)。
そこに入っていた名刺が映ります。
名前の相良房子(丹阿弥谷津子)は夫の会社の女子社員で二人は付き合っています。
住所は「高円寺四丁目五七」でそのアパート名(これは架空の名前でしょう)も書かれています。

このように実際の住所が描かれた場合、成瀬映画はその場所で実際にロケをすることが多いようなので
(過去のロケ地撮影の経験から)、念のため古い地図で当時の高円寺四丁目が現在のどこに当たるのか調べてみました。
ちなみに上原、高峰の二人が暮す家はおそらく世田谷あたりだと思うのですが場所の特定はできていません。

昭和28年当時の「高円寺四丁目」は現在の住所で「杉並区高円寺南五丁目」。
JR中央線の「中野駅」から「高円寺駅」に向かって「環七通り」までの南側の地域一帯です。



現在の高円寺南五丁目の住宅街の写真と映画の中で高峰がアパートを探して歩く画面写真(同一の場所ということではない)。
電信柱の並んだ道を撮影してみた。


      

   


アパートを探しあてて「主人のことで話がある」と言って、丹阿弥を外に連れ出す高峰。
二人はガード前にある(線路はおそろく当時の中央線だろう)ミルクホールに入る。

映画の画面写真のガードは、ロケーションに間違いないだろう。ミルクホールの建物は映画用に建てた可能性が高いように思われる。
中野駅から高円寺駅までの間で、「当時の高円寺四丁目」の範囲である「環七通り」までの中央線の線路にかかるガードは現在4つか5つほどある。
これもどこかはまったく特定できなかったので複数のガード写真を掲載した。
おそらくこの中のどれかだとは思うのだが。

     

   


           


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