原節子
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小津映画でのイメージが強い原節子ですが、ちゃんと成瀬作品にも出ています。
私は小津作品も好きですが、原節子に関しては、圧倒的に成瀬作品の方が
良いと思います。
小津作品の「晩春」「麦秋」「東京物語」の原節子は、見ているほうが疲れて
しまうようなあの気配りと頭のてっぺんから出ているような声が苦手です。
成瀬作品では「山の音」の原節子が少し小津作品の感じに似ているかもし
れません。
共演された女優さんたちのインタビューを読むと、原節子は素晴らしく綺麗で
あったけど、実は 「姉御肌」で、お酒も飲むし、タバコも吸う、マージャンも好き
だったと語っています。
そういう感じが良く出ていたのが、「驟雨」です。
私は原節子といえば「めし」ではなく「驟雨」なんですね。
成瀬/原コンビでは一番のお勧めです。
胃の悪い夫の佐野周二に食ってかかったり、きつい言葉を投げかけたりと、
何かに不満な倦怠期の奥さん(もちろん美しいですが)役を上手く演じています。
隣に引っ越してきた小林桂樹の年若い妻の根岸明美を近所の商店街に連れ
ていき、「あそこの肉屋がどうたら、八百屋の主人の態度がどうたら」と
まくしたてるシーンの自然でコミカルな演技には、感動をおぼえます。
こういうところが成瀬演出の素晴らしいところです。
「驟雨」では、冒頭の姪の香川京子の新婚旅行でのけんかを聞くシーンは
2人ともとても微笑ましくて好きです。
「娘・妻・母」の未亡人役も、同時期の小津作品「秋日和」よりも色っぽい。
成瀬作品以外だと「青い山脈」の先生役、山中貞雄作品「河内山宗俊」での
16歳くらいの町娘役、小津作品の中では「東京暮色」等が印象に残っています。
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