成瀬映画に登場する風景 

NEW 2018.8.29


『くちづけ』第三話 女同士(1955年) 

 『くちづけ』は三話オムニバス。石坂洋次郎の三つの短篇小説をそれぞれ別の監督が担当している。脚色は松山善三。
「第一話 くちづけ:監督=筧正典 キャスト=青山京子、太刀川洋一、杉葉子、笠智衆他」
「第二話 霧の中の少女:監督=鈴木英夫 キャスト=司葉子、小泉博、中原ひとみ、藤原釜足他」
「第三話 女同士:監督=成瀬巳喜男 キャスト=高峰秀子、上原謙、中村メイコ、小林桂樹他」
 三話ともそれぞれ30分くらいの短篇だが、テンポが良く、品のいいコメディタッチの上質な作品だ。
残念ながらビデオ化もDVD化にもなったことがない。まず今後も無いだろう。名画座等の成瀬映画特集でも上映機会は少ないようだ。
生誕100年(2005)の時に、日本映画専門チャンネルの成瀬巳喜男劇場で何回か放送された。
 管理者が最初に観たのは、20年ほど前に今は無い文京区・千石の「三百人劇場」での成瀬特集だった。
その時から成瀬映画の中でも好きな作品の一つとなった。

 ロケ地では、第一話「くちづけ」は多摩川界隈や都内各所、第二話「霧の中の少女」は福島県会津地方、
そして第三話「女同士」は東京・世田谷界隈である。
(高峰秀子が兄役の伊豆肇に相談に行くシーンで東京駅の丸の内も登場する)
 
 「女同士」のロケ地は、畑なども残る郊外の住宅地なのでおそらく世田谷あたりのロケーションだと思っていたが、
町医者役の上原謙が往診の途中で振り返る(看護婦役の中村メイコと八百屋役の小林桂樹が道の真ん中で話している)場面の
後ろの家電ショップ(ナショナルと読める)の横の看板に「喜多見営業所」と書かれているのを発見した。

      

 世田谷区喜多見は、小田急線の「成城学園前」の一つ先の「喜多見」駅のある町。
映画では上原謙の妻役の高峰秀子が自転車に乗って住宅地と畑の街並みを走り、そこで
八百屋の小林桂樹と会話するシーン、中村メイコと小林桂樹が会話するシーンなどで
ロケーションシーンが登場する。

 先日、初めて喜多見駅で降りて喜多見界隈を少し歩いてみたが、現在もところどころに
畑もあり、映画に登場するロケ場所を見つけるのは困難だ。
 グーグル地図のストリートビューを見ていたら「ここは映画に登場する場所と近いのでは」と感じた場所があったので、
あくまで推測の域を出ないが画面写真と並べてみた。住所は東京都世田谷区喜多見7丁目。
 画面写真は、夫(上原謙)に好意を寄せている看護婦役=中村メイコと八百屋の青年役=小林桂樹を
恋人同士にしてしまおうと画策する高峰秀子が、自電車で配達途中の小林桂樹に話しかけるシーン。

 グーグル地図写真を使用させていただいた。道のカーブ、奥に見える家の塀、木、電信柱の位置などが似ている。駐車場=画面写真の畑ではないか?。

  


 「女同士」の冒頭とラスト前に、メイン舞台となる金田医院の前の道が映る。(下記画面写真)
画面で観ると正面左の煙突は銭湯に間違いない。
これは実際のロケだと思われるが、もしかしたらオープンセットで煙突も美術スタッフの手によるものかもしれない。

 実は、喜多見に行く前にネット検索していたら、現在も喜多見で営業している「銭湯」(丸正浴場)があることがわかり、
もしかしたら映画に登場する銭湯かとも思い、デジカメを持って期待して喜多見に出向いた。
 実際に銭湯で入浴し、帰りに番台の主人に画面写真のプリントアウトを見せて確認したのだが、銭湯は昭和40年代からの営業で
撮影当時の昭和30年当時は無かったとのことだった。
 現地で歩いてみたが銭湯の手前は、柵に囲われている畑になっていた。

     


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