成瀬映画に登場する風景
『山の音』(1954年)B 2008.11.24
映画の後半、尾形信吾(山村聰)と息子の修一(上原謙)が、修一の妻=菊子(原節子)のことで言い争いをするシーンに登場する鎌倉「報国寺」(竹の庭で有名なお寺)。
長い間、ロケ地がどこかわからなかったのですが、鎌倉に詳しい方からヒントをいただきました。
現地に写真撮影に行った時に地元の方に映画の画面写真を見てもらったところ、
現在の門は3年ほど前に建て直されたものだが、画面写真の門は以前の報国寺の門に間違いないとの証言をいただきました。
原作者の川端康成は「山の音」執筆時には「報国寺」の近くに住んでいたそうです。
また原作では、このシーンの言い争いは東京に向かう電車の中で行われます。
「成瀬巳喜男の設計」(中古智/蓮實重彦著:筑摩書房)のP178で美術監督の中古さんが冒頭の鎌倉ロケは鎌倉の二階堂(報国寺のあるあたり)だったと語っています。
ちなみに同書によると何度も登場する尾形家の前の竹垣の道は、鎌倉でなく世田谷に作ったオープンセットとのこと。
鎌倉のロケシーンとあまりに自然に編集されているので驚かされます。
「報国寺」入り口のこの門は、3年ほど前に建て替えられたもので映画撮影当時の門とは異なるとのこと。
映画では着物姿の信吾(山村聰)の後ろをネクタイを締めたコート姿の修一(上原謙)がこの門を入る。
門方向から見た境内。ここも映画撮影当時とかなり変わっている。
映画ではもっと広く、平坦な道。
「成瀬巳喜男と映画の中の女優たち」(ぴあ)のcontentsページの『山の音』ロケ中のスナップのクレジット
シナリオを手に煙草をくわえた成瀬監督の写真は、上記の境内の前方にある報国寺の本堂への石段と思われる。
これもロケ地だと思われる理由の一つ。