成瀬映画に登場する風景


NEW2019.6.29

『乱れ雲』(1967年)C

『鰯雲』Dにも書いた、故石田勝心監督が助監督に付かれた成瀬映画での記憶のあるロケ場所メモ(=石田メモ)を参照した。


江田由美子(司葉子)は、姉・文子(草笛光子)と義兄・石川(藤木悠)の部屋を訪ねる。
その後、文子が駅まで由美子を送るワンシーン。石田メモには「駅・東急世田谷線(駅不明)」とある。
この後、義兄の石川に電話があり、由美子の夫・江田宏(土屋嘉男)が自動車事故で亡くなったことを伝えられる。

東急世田谷線は「三軒茶屋」〜「高井戸」を走る。東急電鉄のHPには「当社唯一の軌道線」とある。
管理者も世田谷線には何度も乗ったことがあるので、画面に映る緑色の世田谷線はわかったが駅がわからなかった。
あくまで推測だが、画面に「松原支店」の看板(画面写真の赤丸参照)を見つけたのでおそらく「松原駅」がロケ地だと思われる。
2人の位置はグーグル写真左側の青丸のあたり。写真は画面写真の逆アングル。
画面写真の踏切の向うに映っている商店は、グーグル写真右側の青丸(コンビニ)の場所だろう。画面写真は→からのアングル。
画面写真では「下高井戸」方面(松原駅の次が終点の下高井戸駅)のホームのようだ。

松原駅は、すでにロケ地紹介している『娘・妻・母』と『女の歴史』に登場する「赤松公園」の
最寄り駅なので、何回か下車したことがある。

このシーンの最初に踏切の「赤信号点滅」のショットが出るが、これはこの後の不幸な出来事=夫の交通事故死を想起させ、
また映画ラスト近くの「蔦温泉」の手前の有名な踏切シーンにつながるもので、
目立たないようにさらっと行う成瀬監督の映像演出はさすがだ。

  
  

  


石田メモには「旧通産省表」とある。
映画の冒頭、通産省に勤める(映画での設定)江田宏(土屋嘉男)が、妻・由美子(司葉子)
が待つビルの喫茶店に向うシーンに登場する千代田区内幸町「西幸門前」交差点。
グーグル写真の手前側には現在の「経済産業省」(旧通産省)の建物がある。左側の木は日比谷公園。
画面写真に映っている交差点の先のビルは「旧・飯野ビルディング」。
現在の「飯野ビルディング」は2011年に高層ビルに建て替えられ、
画面写真の交差点に面したビルのところは、現在はベンチのある植え込みになっている。

画面写真に映っている「旧・飯野ビルディング」は地下鉄の「霞が関」駅に直結しているので、
管理者も何度も行ったことがある。
本作に登場するビルの「喫茶店」はおそらく撮影所のセットだと思うが、
「旧・飯野ビルディング」の地下にも似たような昭和の匂いのする「喫茶店」がいくつかあった。
そのフロアーの喫茶店や居酒屋も利用したことがある。


グーグル写真に映っている白いビルは「東京新聞」の建物。
現在公開中の映画『新聞記者』の新聞社(映画では東都新聞)の編集局はここでロケーションされたとのこと。
原案が有名な東京新聞社会部の女性記者なのでその関係だろう。

     


石田メモには「山菜とり・御鼻部山」とある。
後半、由美子(司葉子)が山菜取りをしている場所を訪ねる三島史郎(加山雄三)のシーンに登場する「御鼻部山」。
十和田湖の北岸にある標高1,010.6mの山(ウィキペディア)。おはなべやまと読む。
さすがにこれは石田メモが無ければ特定は不可能だった。

ネット検索すると「展望台」の画像や動画があるが、画面の場所は山中のどこだがわからない。
映画では、加山雄三はすれ違う登山客と挨拶する。撮影を考えれば山の低い地点での撮影だろう。
グーグル地図のみ掲載する。赤い印の場所。

この屋外シーンでの、司葉子、加山雄三の二人の動かし方、それをとらえるカメラポジションも素晴らしい。
そして未亡人役=司葉子の美しさ!

  

  


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