成瀬映画に登場する風景
NEW 2019.6.11
『くちづけ』第三話 女同士 A(1955年)
町医者の金田育三(上原謙)の妻・朋子(高峰秀子)は、偶然、看護婦のキヨ子(中村メイ子)の日記を見てしまう。
そこに夫への熱い想いが書かれていて・・・
朋子は兄(伊豆肇)を喫茶店へ呼び出して相談に乗ってもらう。
そのシーンに登場する東京駅の丸の内。
伊豆肇への相談のシーンは2回でてくるのだが、東京駅前は1回目のみ。
画面写真を見ると、道路に信号は無い。当時のものか不明だが木の位置はほとんど一緒。
八重洲側に建っている後ろの高層ビルは、『シン・ゴジラ』で破壊されたものかもしれない。
またこの時は高峰秀子は洋服を着ているが、2回目の時は着物。
喫茶店で坐って相談に乗っている伊豆肇の方は、画面を見る限り
同じシャツとジャケット姿のようだが。
二人の坐る位置を変えているのはさすがに成瀬監督は細かい演出をする。
喫茶店は撮影所のセットだと思われるが、ネット検索すると
旧丸ビルには飲食店もあったようなので、ロケーションかもしれない。
1回目の相談の時はまだ二人の仲を少し心配して不機嫌な表情の高峰秀子だが、
2回目は八百屋の清吉(小林桂樹)と中村メイ子との婚約を伊豆肇に報告しているので笑顔に。
この表情の変化。わかりやすい。
ただし、本作はラストに新看護婦登場で面白い仕掛けがあるのだが。
丸の内というと、『妻よ薔薇のやうに』(1935)のオープニングに登場する
モガファッションで着飾った丸の内勤務のOL=千葉早智子の姿が思い浮かぶ。