成瀬映画に登場する風景


『女の歴史』(1963年) D  NEW記述追加・修正2020.9.12  2018.11.15


『女の歴史』のタイトル、スタッフ、キャストのクレジットタイトルに続き、監督 成瀬巳喜男の文字。
映画のオープニングのファーストショットは、駅の方向に向かう救急車の映像である。救急車のサイレンが印象的。

続くショットは、美容室から出てきた女性が路地を歩いていく。
続いて、美容室の中。美容室の経営者・清水信子(高峰秀子)が客の髪をセットしている。脚本=笠原良三。
客 :(救急車のサイレンの音を聞き)「またどこかで自動車の事故でしょう」
信子:「ほんとに、車の事故が多いですねぇ」
客 :「うっかり歩いてらんないわねぇ」

映画では前半に、信子の息子で自動車会社のセールスマン=功平(山崎努)が
運転中にダンプカーとの正面衝突事故にあい、亡くなるという展開となる。
それを暗示するようなオープニングだ。

NEW記述追加・修正2020.9.12

世田谷・梅ヶ丘に50年在住の方(匿名希望)から情報提供いただいた。ご指摘に感謝したい。
下記で、小田急線の世田谷代田駅と推定されると記述したロケ地(文章のみ、写真削除)だが、
梅ヶ丘の仲通り商店街を南東から駅に向かって撮ったものと思われる」とのこと。
『驟雨』にも登場する、小田急線の梅ヶ丘駅近くとなる。

その理由としては
「つなや」の柱の後ろ、「きのくにや」という商店は1520年ほど前まで存在したスーパーマーケット
  Google上(下記提供写真参照)ではローソンが入っているが現在は空きテナント。
・つなやの傍らのホンダのマークの位置には、美登利寿司という地元寿司店の本店が建っている。


救急車が駆け抜けていくファーストショットはほんの2-3秒だが、ロケーションに間違いないだろう。
救急車の前方には駅と電車が見える。駅は小田急線「世田谷代田駅」だと推定できる。
理由は、画面写真の左側の電信柱に貼っている「つなや」という質屋の広告に「世田谷代田」の文字が見えるからだ。
→下の写真では読み取るのは難しいが、日本映画専門チャンネルで本作がハイビジョン放送されたときの
 録画映像だと鮮明に読める。

また、駅の文字ははっきりとは読めないが、同じく録画映像だと漢字六文字で書かれているのはわかる。世田谷代田駅とあう。
小田急線は数年前に工事があり、現在「世田谷代田駅」は地下駅になっているが
映画撮影当時は地上駅であったことは、ネットで「世田谷代田駅」の画像写真を検索するとわかる。
画面写真には鉄道線路をまたぐ跨線橋(こせんきょう)も見える。

駅周辺は現在も工事中(下の写真参照)なので、当時の駅の位置はわからないが
駅に通じる道で、映画と同じような道幅の道を撮影してみた。写真の奥に現在の「世田谷代田駅」がある。
画面写真のような個人商店はほとんどなく、マンションや個人宅になっている。
小田急線「世田谷代田駅」の次の駅は、『驟雨』に登場する「梅ヶ丘駅」だ。
「梅ヶ丘駅」も残念ながら『驟雨」撮影当時の面影はまったくない。
    


上記のショットに続く美容室の横の路地はスタジオセットのように見える。美術監督=中古智。
美容室は「自由が丘」にある設定となっていて(映画の中盤で信子が秋本=仲代達矢にそのように伝える場面がある)
やはり前述の録画映像だと、画面の右側の電信柱には、緑ヶ丘二丁目という文字が読める。
目黒区緑が丘は実在の住所で、自由が丘駅に近い。
ただし、この住所の看板はスタジオセット用に作った可能性が高いと思われる。
ロケーションが世田谷代田だと仮定すれば、救急車のサイレンの音が自由が丘という設定の美容室で
聞こえるわけがないのだが、これが映画の編集マジックである。


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