成瀬映画に登場する風景


『妻』(1953年) C NEW 2018.11.11


中川(上原謙)と会社のタイピスト房子(丹阿弥谷津子)が逢引する銀座の名曲喫茶「らんぶる」。
二人が最初に行くシーンでは、上原と丹阿弥が珈琲を飲みながら以下のような会話がある。
原作=林芙美子、脚色=井手俊郎

丹阿弥:「(店内に流れている音楽)この曲、ご存知?」
上原: 「いやぁ・・・僕は一向に音楽のことはわかりませんね」
丹阿弥:「ラロ(注:フランスの作曲家)のバイオリンコンツェルトですわ」
上原: 「ほぉ」
丹阿弥:「わたくし、この曲 大好きなんですの」

銀座5丁目に実際にあった「らんぶる」は本作ではこの後3回登場する。
(2)丹阿弥が上原に大坂の実家に戻ることを伝える
(3)大阪から東京に出てきた丹阿弥と上原が会う
(4)上原が一人で来るとウェイトレスが丹阿弥から預かった手紙を渡す

細かい話だが、最初の時の席は、画面で上原が左側、丹阿弥が右側だが、
上記(2)(3)(4)は上原を右側、丹阿弥を左側に座らせている。
意図は不明だが、これも成瀬演出だ。

「らんぶる」は私も銀座に行ったときに何度か前を通った記憶はあるが入ったことはないので店内の様子はわからない。
店内はおそらくロケーションで使用したと思われるが、もしかしたら東宝のスタジオに再現したセットかもしれない。
さすがに外観(下記画面写真の1枚目)はロケーションの実写だとは思うが。

「らんぶる」はブログ(ぼくの近代建築コレクション)に1986年撮影の外観が紹介されている。
この写真を見ると、映画撮影当時(1953)とは少し違っているように思われる。改築などもあったのだろう。

ブログに書いてある住所の現在の写真は以下。グーグル地図使用
左の写真は銀座から新橋方向。「らんぶる」は写真の左側のどこかにあったと推定できる。
右の写真は逆方向で写真の右側のどこかに。突き当りの左側がソニービル(現在はGinza Sony Park)。
真ん中あたりを右に曲がった路地におでんの「お多幸」があり、そこには何度も行ったことがある。

この場所に限らないが特に東京では、新しい商業施設のビルが建ったりすると、
その前にあった建物がなんであったか、いつ頃まであったかを思い出すのはかなり難しい。

          

  


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