六甲山の自然観察(2016年)

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 今年も、機会があれば六甲高山植物園と六甲山自然保護センターに行って、その拙い記録をアップするようにします。
 
◆4月30日
 4月30日、六甲山の上美術館に5月15日からの作品展の作品4点を持参し、その帰りに六甲高山植物園と六甲山自然保護センターに立ち寄りました。そして、高山植物園ではカタクリなどに触れ、自然保護センターではヤマドリなどの剥製に触れることができました。その記録は、カタクリに触る! にアップしましたので、そちらを参照してください。
 
◆5月23日(六甲高山植物園)
 六甲山の上美術館で作品解説とミニ実演をした後、この会に参加してくださった方2人と一緒に、高山植物園に行きました。
●ヒマラヤの青いケシ
 まずは、ガラス温室に向いました。4月末には一輪しか咲いていなかったヒマラヤの青いケシ(学名はメコノプシス・ベトニキフォリア、英名はHimalayan blue poppy)がよく咲いていました。そっと触ってみると、葉にも茎にも一面に毛が生えていて、これが特徴のように感じました。花には毛は生えていなくて、つるうとした感じの花びらが5枚か6枚、すうっと広がっています。4月末に触った黄色いケシとは花の形がだいぶ違っています。
 花は斜め下を向いて咲いているものが多かったです。上を向いて咲いているものもあって、このことについて一緒に行った方が次のように説明してくれました。
「咲き始めは下を向いていて、次第に上向きになり、散り始めるころには完全に上を向いています。色も最初は濃く、次第に色あせてきます。ちなみに、つぼみは花茎をU字型に曲げて下を向いています(これはヒナゲシなどと同じです)。」とても分かりやすい説明で、納得しました。
 
●レウイシア・コチレドン
 別の温室では、レウイシア・コチレドンの花に触りました。高さは30cm近くあったでしょうか、細い茎がまっすぐ伸びて、その先に直径3,4cmくらいに水平に広がってとても薄い花が咲いていました。そっと触って花びらの数を数えようとしましたが、薄くてよくは分かりません。目で確認してもらうと、全部で20枚くらいかな、二重に重なっているとのことです。よく触ってみると確かに二重になっていることが分かります。一重の花もありました。
 根元の所にある葉は、サボテンのように分厚くて平べったい感じの葉でした。原産地は北アメリカの高い山だそうです。
 この花には「岩花火」という名も付けられていて、岩場に自生し、花火が開いたような花をつけることからだとのことです。花が開いている時の感じをよく表しているように思いました。
 
●クリンソウ
 水がちょろちょろと流れているようなそばに、クリンソウがたくさん咲いていました。
 高さは50〜60cmくらいもあり、数個ずつ小さな花が、何段にもなって咲いています。クリンソウは、仏塔の上の九輪にちなんだ名ということで、回りの人たちが何段になっているのか数えていました。2、3段のものから多くても6段くらいまでで、9段のものはないようです。私が数えてみたのは6段になっていました。花は、上の段のものは咲いていますが、下のほうの段のものはすでに咲き終わって種になっていました。種は全体としては丸っぽいですが、横に5、6個くらいの窪みがあって、花びらの数あるいは雄蕊の数と同じくらいなのかもと思ったりしました。花は下から上に順に咲いていくということで、上のような花や種の状態になっているのだと納得しました。
葉は、根元あたりから細長い葉が何枚も放射状に出ていました。
 
●ハナイカダ
 長さ10cmくらいの、先のとがった楕円形の葉の真ん中に、1cmもない小さな花があります。葉の表面に花がくっついているとは、とても珍しく思いました。葉の上に1個だけでなく、2、3個花のあるのもあります。この花は熟すと小さな黒い種になるとか。
 花筏という名は、葉を筏に、その真ん中の花を筏師に例えたものだとのこと、風流ですね。
 
●マムシグサ
 マムシグサの花に触りました。花と言っても、ふつうの花の形ではありません。直径2cmくらい、高さ6、7cmくらいの筒状になっていて、その中になにか細いもの(雌しべかな?)があり、さらに筒の上には幅3cmくらい、長さ10cmくらいの、先が細くなった薄い葉のようなのが続いていて、その先が下にくるんと曲がって垂れています。このような花の形が、マムシが舌を出したような形に似ているということで、蝮草という名前になったとか。
 このような筒状になっている花は肉穂花序と呼ばれ、多肉な花軸の周囲に柄のない花が多数密生したものだとのことです。そして、この肉穂花序を包むようにして長く伸びている葉のようなのは、仏炎包というものでした。ミズバショウやマムシグサなどサトイモ科のものに多く見られるそうです。仏炎包という名前は、仏像の炎型をした光背に形が似ていることからだそうです。
 *家の小さな庭に、今カラーが咲いています。その花?を触って、形が上のマムシグサの花と似ているなあと思って調べてみました。そうすると、カラーもサトイモ科の植物で、外側の筒状になっている部分は仏炎包で、その中の細い棒のようなのが肉穂花序だそうです。ただし、マムシグサでは仏炎包の先は下に向って内側に垂れるようになっていましたが、カラーでは外側に向って反り返るようにひろがっています。葉の形も、ともに先がしゅうっととがった細長い葉で、似ているようです。
 
●ニッコウキスゲ
 ニッコウキスゲの花に触りました。6枚の花びらが、直径10cm近くほどにきれいに広がって咲いていました。ニッコウキスゲはユリ科の仲間ということですが、花の形はユリによく似ています。
 茎を下に向って触っていくと、根元近くから幅2、3cmくらい、長さ50、60cmもある細長い葉が多数、扇形に広がるように伸びています。全体の形が好ましいです。(ニッコウキスゲの種には昨年の秋に触ったことも思い出しました。)
 
 その他、クレマチス(乾いた固い土ないし岩場のような所に、蔓がへばりつくようにうねうねしていた)、エンコウソウ(茎の先に付いている丸っぽい感じの葉が好ましかった)、フタリシズカ、サラサドウダンなどにも触れましたが、しっかりした記憶は残っていません。
 
(2016年5月27日)
 
 
◆6月13日
 今回も午後から六甲山の上美術館で木彫展の作品解説があったので、午前11時からのガイドに参加しました。
 前日からの雨がようやく上がりかけ、湿気と霧が立ち込め、まさに高山をしっとりと実感するような中でのガイドでした。参加者は私たち2人だけで、丁寧に解説してもらいながらいろいろな物にも触ることができました。
 
●エゴノキの花
 歩きはじめてすぐ、道にたくさん落ちているエゴノキの花に触りました。直径2cm余で、5弁に別れ、花びらはかなり硬い感じです。上にはエゴノキの白い花がたくさん下向きに咲いていて、それが次々に落ちてきているようです。(昨年は、自然保護センターのガイドで、エゴノキの実に触りました。)
 
●カラマツ(唐松)の実
 また、道に落ちていたカラマツの実(松ぼっくり)にも触りました。長さ4cmくらいの小さな卵のような形です。実の先の部分は、雨模様の日は閉じていて、晴れの日は開いて花粉が遠くまで飛ぶようになるそうです。カラマツの実は秋に熟して翌年の春まで枝に付いていて、今ごろ落ちるようです。
 カラマツは、針葉樹ですが、紅葉して落葉するそうです。松の仲間では珍しいと思います。
 
●アリマウマノスズクサ( 有馬馬の鈴草)
 アリマウマノスズクサの花に触りました。とても変った形で、うまく表現できません。長さ5、6cmくらいある、かなり硬めの太い筒ないし袋のようなのが途中でちょっと曲がったような形でしょうか?楽器のサキソフォンに似た形と言いますが、あまりぴんときません。花びらはなくて、萼が変形したもののようです。この筒のような花の中に雄しべと雌しべがあって、においで小蠅をこの筒の中に誘い込んで受粉するそうです(単純に考えると自花受粉しやすいような気がしますが、どうでしょうか?)。
 なお、名前の「アリマ」は、植物学者牧野富太郎が有馬温泉近くの山で発見したことに由来し、また「ウマノスズクサ」は花の形が馬の首にかける鈴に似ているところからだそうです。
 
●ふたばあおい(双葉葵)
 フタバアオイの葉と実に触りました。
 葉は、大きさ6〜7cmほどの、きれいな左右対称のハートがたです(下の中央あたりは円く切れ込みになっています)。葉の表面はさらさらした感じで、よく触ってみると葉の縁近くにはごく小さなざらつくような細かい突起がありました(短い毛?)。葉脈がとてもよく分かって、菱形のような模様が連なっている感じです(それぞれの菱形は、下のほうは鋭角の三角、上のほうはやや円っぽくなった三角です)。
 実は、直径1cm弱の、ちょうどタコの吸盤のような形です。開いてみると、回りは3枚に別れ、中に堅くてとがったものがありました。
 茎の先にこのハート形の葉が2枚対生し、その葉の間から下向きに花柄が伸びてお椀型の花を下向きに付けるそうです。フタバアオイの葉は、京都の賀茂神社の祭の祭礼に使われたため、賀茂葵との名もあるそうです。また、徳川家の葵の紋章は、このフタバアオイの葉を3枚組合せたものです。
 なお、このフタバアオイもウマノスズクサ科で、地上近くで下向きに開いている花は香りもなく蜜も出さず、受粉は小さな蟻によって行われているらしいです。
 
●コアジサイ(小紫陽花)
 コアジサイの花が一面に咲きほこっていました。枝が四方に広がり、その先に直径5cm弱の花のかたまり(花序)が多数あります。その花のかたまりは、装飾花はなく、5mmもない小さなつぶつぶのような両性花の集まりです。両性花と装飾花からなるガクアジサイや装飾花だけのふつうのアジサイよりも、だいぶ小ぶりです。コアジサイは装飾花がないため、よい香りで虫を誘っているということでしたが、私にはそれがどんな香りなのかは分かりませんでした。
 葉は対生しています。ざらついた感じで、長さ7〜8cmくらいの、先のとがった卵形です。葉の縁は、大きめの鋸歯になっています。茎もざらついていて、毛があるようです。
 高山植物園では、アジサイの種類はこのコアジサイだけだそうです。
 
●ナルコユリ(鳴子百合)とササユリ(笹百合)
 ナルコユリの花に触りました。弓状に横に曲がった茎から、長さ3cmほどの筒状の花が数個並んで垂れ下がっています。筒の先は少し開いていて、6個くらいに別れています。筒の根元あたりには突起のようなものもありました。花の時期は終わりかけのようで、すでに咲き終わって細い糸のようになっているものもありました。
 鳴子百合という名は、筒状の花が並んで垂れ下がっている姿が、田畑で鳥などを追い払うための鳴子(小さい竹筒をいくつも並べて縄に吊るし、縄を揺らしてかたかた音を立てる)に似ていることからだとのこと。
 ササユリにも触りましたが、花には触れず、細長い筒のようなつぼみに触れただけです。笹百合という名は、葉が笹の葉に似ていることからだとのことですが、確かに葉の形も手触りも(葉の縁には細かい鋸歯がある)笹に似ていました。
 
●ハイマツ(這松)
 ハイマツに触りました。なんだかとても懐しい気持ちになりました。
 1mくらいの高さで四方に広がって生えているようです。5〜10cm弱の長さの針葉ですが、触った感じはなんか軟かい感じで少しすうっと湾曲しているものもあり、先も触ってもほとんど痛くはありません。ハイマツの葉の中には、実もありました。長さ3cmくらい?の細い形です。中部地方の高山地帯では、ライチョウがこの実を好んで食べ、ライチョウの生息にはハイマツは欠かせないようです。
 記憶がはっきりはしませんが、若いころ(今から40年以上前)八甲田さんに何度か行ったことがあって、その時に、今回触ったハイマツと似たような感触の針葉によく触ったような気がします。ちょっとネットで調べてみると、八甲田山では今は登山者が増えて山頂付近のハイマツの群落はなくなって大部分裸地になっているとか。残念です。なお、ハイマツは氷河時代の残り物のようなもので、森林限界を越えた、氷雪と強風のきびしい環境下に耐えてきたようです。富士山や浅間山など、標高が高くても新しい火山には自生していないそうです(ハイマツを住み家とするライチョウも氷河時代の生き残りですね)。
 
●コマクサ(駒草)
 コマクサの名は、これまで本などで幾度も出会っていましたが、今回初めて触りました。砂礫地の上に地面に沿うようにへばりついて広がっている感じです。葉は、まるでパセリのような感じで、細かくて硬いのが密生して広がっています。この小さな葉は白い粉をふいたような感じで緑白色に見えるそうです。花は小さくて触ってはよく分かりませんでしたが、先がちょっととがっているようでした。
 10cmくらいの高さで、礫混じりのやせた土に這うように広がっているコマクサですが、その根は、水を求めて、堅い礫地を1m以上地下深くまで伸びているそうです。なお、駒草という名は、花の姿が馬の顔に似ているからだとのことですが、私にはよくわかりません。
 
●ハマナス(浜梨)
 本来はハマナシ(浜梨)で、浜に生えその実が梨の形に似ているところから浜梨と名付けられたそうです。東北地方ではハマナシは「ハマナス」と訛って発音されて、それが広まってハマナスと呼ばれるようになりました。北海道や東北地方などの海岸の砂地に自生しているハマナスが、何故六甲の高山植物園にと思いましたが、近畿地方ではこのくらいの高さ(900m近く)くらいの冷涼な地でないと育たないということでしょう。
 ハマナスの花と実に触りました。開いている花は、直径10cm近くもあり、薄くてちょっとしわのありそうな5枚の花びらからなっています。中央の窪みには、直径3cm弱の円盤状の台のようなのがあって、多数の雄しべが密生しているようでした。花はよい香りがします。次に、花が終わり実がふくらみはじめているものに触りました。花びらはなくなり、萼らしいのが5枚?残っています。その萼らしいものの下には、表面がとげとげになった直径2cmくらいの半球を下に長くしたような堅いふくらみ(子房)があります。(この表面のとげとげは、成熟するまでは動物に食べられないようにするためだとのこと。)そして、熟した実にも触りました。直径3cmくらいのちょっと変形した球形で、表面のとげとげはほとんどなくなっていました。
 
●水の中の花たち
 池の中にはいろいろな水生植物が咲いていました。池の中なので私はどれにも触ることはできませんでしたが、ミズバショウ、コウホネ、スイレンなどについて、名前の由来などもふくめ解説してもらいました。
 ミズバショウ(水芭蕉)という名は、水辺に生え、葉の形が芭蕉(バナナと同じ仲間で、1m以上ある大きな細長い楕円形の葉)に似ているところからだそうです。ただし、ミズバショウは、バショウ科のバショウとは異なってサトイモ科に属し、前回触ったマムシグサと同様、花は肉穂花序と仏炎包になっているとのことです。
 コウホネ(河骨)は、水底に白くてちょっとでこぼこした感じの根が横たわっていて、それが人の骨、とくに背骨のように見えるので、このように呼ばれるとか。花は黄色できれいなようです。スイレン科だそうです。
 スイレン(睡蓮)は、朝に開いて夕方には閉じるので睡蓮の名になったらしいです。白い花で、ふつうスイレンとして見かける大きな花より小さいようです。ヒツジグサ(未草)とも呼ばれ、この名は未の刻(午後2時ころ)に花が閉じることに由来するらしいです。
 
 その他、ハコネコメツツジ(葉も花もとても小さく、葉の形が米粒にも見える)、イブキジャコウソウ(地面に這うように葉が密生し、花も咲いていた。とても好きな香り)、イブキトラノオ(長い茎の先に、ごく小さな花が集まった穂状の花序になっていて、それが虎の尾に似ているとか)、ヨシノアザミ(葉の表面にもとげとげがある)、サンショウバラ(葉がサンショウの葉に似ている。香りがよい。実は熟すまでは鳥に食べられないように刺で守られているとか。)、キャラボク、ニッコウキスゲ、さらにアルプスの花として有名なエーデルワイス(全体に白い毛におおわれ、また花も白くて美しいようですが、葉も花も小さくてよくは分かりませんでした)などに触りました。
 今回のガイドは、高山を思わせる気候のなか、参加者が少なくてゆっくり丁寧に解説してもらい、またとくに高山植物の代表とも言えるハイマツやコマクサに触れることができて大満足です。次のガイドでは、どんな花たちに会るのか楽しみです。
 
◆8月9日(六甲高山植物園)
 8月9日の午後に高山植物園に行き、午後2時からのガイドによる解説に参加しました。その日は下はたぶん35度くらいになっていたと思いますが、北海道南部とだいたい同じ気候だという高山植物園(平均標高860mくらい)は涼しい風が吹きとてもよい避暑になりました。参加者は私たちをふくめ6、7人で、ガイドの方は見えない私ばかりでなく見える人たちにもいろいろと触ったり匂をかいでみたりするように促していました。
 以下に当日触ったり解説してもらった植物たちについて書きます。
 
●ユリ3種

 オニユリの花とむかごに触りました。花は6弁で、やや下向きに咲き、各花弁が上にくるうっと反り返って全体としてやや扁平な球のようなとてもきれいな形になっています。雄蕊が数本長く伸び、触ると赤い花粉が手に着きなかなか取れにくかったです(花の色は濃いオレンジ色)。オニユリの小さな楕円形の葉の根元の上には、小さな直径5mmほどの丸いむかごがありました。ユリの仲間ではむかごがあるのはオニユリだけで、コオニユリなどとの識別の目安になるそうです。なお、オニユリは花が咲いても種は実らず、むかご(あるいは鱗茎)で増えるとのことです。
 カノコユリの花に触りました。これも6弁で、やや斜め下を向いて各花弁は反り返っていますが、全体の形はオニユリのようなきれいな球状ではなくやや筒状になっていました。この花の色は白です(ピンクのものもあるそうです)が、花弁の表面に赤い斑点がいくつもあり、またその斑点は小さな粒のようになっていて触っても分かりました。この赤い斑点の模様が鹿の子絞りの鹿の子模様のように見えるところから、カノコユリという名前になったとのことです。
 ナルコユリの実に触りました。6月にはナルコユリの花に触ったのですが、それが実になったのですね。2個ずつセットになった実が、横に伸びた茎の下側に十数個もずらあっと並んでいます。実は直径6〜7mmくらいの球形で、実を揺らすと隣りの実に当たって、小さく音を立てていました。なんともかわいい!
 
●ヤグルマソウ(矢車草)
 ヤグルマソウの葉に触りました。中央から長さ20cm以上はある大きな葉が5枚ほぼ水平に広がっています(掌状複葉。5枚合わせると全体で直径40〜50cmもある大きな葉)。それぞれの葉の先のほうには3つくらい切れ込みもありました。この5枚の葉の群の形が、鯉幟の上の飾りの矢車に似ているところから、ヤグルマソウという名になったとか。
 ヤグルマソウの葉がこんなにも大きく広がっているのは、ガイドの方によれば、湿った林内に生育するためにできるだけ光を効率よく受けようとするためだろうということです。またヤグルマソウの葉ももちろん緑色ですが、幼葉の時は赤いそうです(幼い時は光に弱いため紫外線から保護するために紅葉になっているというような話でしたが、機構はよく分かりません)。
 
●ユウスゲとニッコウキスゲ
 ユウスゲの花と実、ニッコウキスゲの咲き終わった花に触りました。ユウスゲ(夕菅)の花は夕方に咲き翌日の朝にはしぼむ一日花なので、私が触ったのはしぼんでしまっている花でした。実は直径2cmほどありました。5月末に一部咲いていたニッコウキスゲはもうみな咲き終わっていました。ユウスゲ(「キスゲ」とも言うそうです)とニッコウキスゲはともにユリ科の同じ仲間で、花弁もともに6枚、ニッコウキスゲも一日花ですが、こちらは朝に咲いて夕方にしぼみます。でも昼に咲くニッコウキスゲは濃い橙黄色なのにたいして、夜に咲くユウスゲは淡い黄色だそうです。
 
●シラタマノキ(白玉の木)
 シラタマノキの実に触りました。直径5mm余のまん丸い玉がたくさん並んでいました。白色で、白玉に似ているところから白玉の木という名になったそうです。この丸い球をつぶしてみると、中は液体でサロンパスのようなにおい(サリチル酸が含まれているようです)がしました。
 
●フジアザミ
 日本最大のアザミだそうです。葉にそうっと触りましたが、葉の縁ばかりでなく、葉の表面にも斜めに2cm以上もある先の鋭い刺がありました。富士山周辺では、フジアザミフジゴボウとかスバシリ(須走)ゴボウとも呼ばれ、根が柔らかいので漬物にしてヤマゴボウとして売れてもいたそうです。
 
●クモノスバンダイソウ
 クモノスバンダイソウには昨年10月に高山植物園で触りました。地面に這うように広がっているブロッコリーのような触感がなつかしかったです。そのブロッコリーのようなぼこぼこした面から、10cmほど花茎がまっすぐ伸び、小さな花がたくさん咲いていました。ブロッコリーのような面とそれから直立している花茎がなんとも不思議な触感でした。
 
●キレンゲショウマとレンゲショウマ
 キレンゲショウマとレンゲショウマの花に触りました。名前はほとんど同じですが、花はぜんぜん違っていました。キレンゲショウマの花は、下向きで、硬い筒のような形で、先が少し割れて5つくらいに別れています。触った感じでは、花弁は肉厚のようです。レンゲショウマの花のほうは、下向きのようですが、柔かく小さくて触っては細かいところまでは分かりません。でも、キレンゲショウマの花とはまったく別だとは分かります(調べてみると、キレンゲショウマはユキノシタ科、レンゲショウマはキンポウゲ科)。
 
●チダケサシ(乳茸刺)
 チダケサシの茎に触ってみました。直径3mmくらいでかなり細いですが、細い柔軟な木の棒のような感じでとても強そうです(葉は小さな細長い葉がぱらぱらとあるくらいでした)。山に入ってチチタケ(乳茸)というきのこを取った時にこのチダケサシの茎に刺して持ち帰ったところからこのような名前になったということですが、本当にそんなことをしていたのかどうかは分かりませんね。
 
●スイレンとハスの違い
 池の中なので触ることはできませんでしたが、スイレンとハスの違いについて解説してもらいました。
 スイレンもハスモ、葉柄が中央にありそこから葉がだいたい円形に広がっていますが、スイレンは葉の回りに深い切れ込みがあるのにたいして、ハスの葉には切れ込みはありません。またスイレンの葉は水面にほぼ接しているのにたいして、ハスの葉には水面よりも高い所にあるのもあります。(スイレンの花は水面のすぐ上で咲きますが、ハスの花は水面より高い所で咲きます。)さらに、ハスの葉には細かい凹凸があって撥水性があるのにたいして、スイレンの葉には撥水性はありません。ハスの葉に水が着くと、ハスの葉の細かい凹凸構造と葉の表面の化学的特性で水はすぐに小さな玉になって流れ落ち、葉の表面はつねにきれいな状態になっているそうです。これは「ロータス効果」と呼ばれ、ガラス板や塗料の表面が汚れないようにするための技術などに使われています。(ガイドの方は、ロータス効果の例として、御飯がくっつかないように表面がつぶつぶの凹凸のあるしゃもじのことを話していましたが、ロータス効果とは細かさのレベルが違い過ぎるのではないかと思います。)
 
 その他、タマアジサイ(直径2cm余の玉のようなつぼみの状態と、それが開いたところ)、ツリガネニンジン(花は釣鐘に、根はチョウセンニンジンに似ているそうです)、ミソハギ(たくさん咲いた花に触りましたが、小さくてよく分からなかった)、マイヅルソウ(葉はハート形でくにゃあーと曲がった葉脈もよく分かった。この葉あるいは花の姿が鶴が舞う姿に似ているところからこの名になったらしい)などに触りました。
 
(2016年8月12日)