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〜こうちゃんと花菜美…後日談・1〜

 

 

 

 あ、今。バックミラーのある角を曲がった。少し早めの足音が近づいてくる。私はお皿を洗う手をちょっと止めて、耳を澄ました。
 我が家のお台所は家の一番北側になっていて。だから駅の方から戻ってくる人たちの足音を一番早くキャッチ出来る地点だ。

 ああ、そうだ。これはもう間違いない。

 そうやって頭の中で確認してから、また勢いよく湯沸かし器のお湯を出した。ぼーっと燃えながらじゃばじゃばと流すともう全然周りの音が聞こえない。すぐ後ろの居間に転がしてある娘の茉莉花(まりか)の泣き声にも気付かず、二階から千春くんや雅志くんが出動することも日常茶飯事だ。

 

「ただいま〜っ!」
 がらがらっと、玄関の引き戸が開いて。でもって、慌ただしく靴を脱ぐ音がして。そして、バタバタと廊下を突き進んでくる足音。

「ただいま! 茉莉花…っ、あれ?」

 ああん、もうやだ。思っていたとおりの反応だ。もう馬鹿馬鹿しいったらありゃしない。私はそんな行動の一部始終を背中でばっちりと察知しつつ、それでも素知らぬふりでお皿を洗い続けた。

 その後、ドタドタと足音は私たち夫婦の部屋である玄関脇の和室に飛び込んでいって、そしてまたすぐに戻ってくる。もう夜の10時過ぎなんだからね、そんなに大きな物音を立てたらご近所に迷惑じゃないの。分かってないのかしら、まったくもう。

「おい? …花菜?」
 目隠しのじゃらじゃらに突っ込んで、頭にワカメを乗せたみたいなこうちゃんが、私に声を掛ける。でもちらとその情けない姿を振り向き見て、もう一度お皿洗いに戻る。

「花菜っ、ちょっと人の話を聞きなさいっ。なあっ…!」
 ぐいっと肩を掴まれる。ああ、もうしょうがないなあ。私は渋々とお皿洗いを中断すると泡泡の手をエプロンで拭いた。

「…何よ?」
 最小限に短く。簡潔に。帰宅したてのこうちゃんを見上げた。きっと氷のように冷たい目をしていると思う。

「何よって…おい? 一応、亭主が戻ってきたんだろう。それを無視して皿洗いしてるのはちょっと酷くないか?」

 こうちゃんは立派に大義名分を並べ立てる。でも何なの、その駅前の夜11時までやっているスーパーのビニール袋の中から溢れ出た、新製品のベビー用果汁のミニペットボトルは。それを見ただけでげんなりしてしまう。
 だいたい、その果汁…もう今日だけで、向こう半年分くらいキープされてるんですけど? そりゃ、私も買ったわよ、特売だったから。でもそのあと、あの学生の身分のはずのふたりがたんまり買ってくるんだもん。呆れていたら、何と冷静沈着で思慮深いと信じていた次男の新司さんまでが、職場のデパートにテナントで入っている薬局で買ってきたって言うじゃない。…最悪。

「だって」
 私だって、負けてない。きっちりと切り返す。

「こうちゃんは、私に『ただいま』を言ってないじゃない。あたりまえの挨拶も出来ない人にそんなこと言う資格はないわ」

「…花菜?」
 こうちゃんは思わぬ反撃に一瞬ひるんだが、でもすぐにハッと我に返る。そして、いつもよりも真剣な目で私を見た。

「そ、そうだっ! 花菜っ、茉莉花がいないっ! ベビーベッドに寝てないぞっ、皿を洗っているうちに連れ去られたとか言うんじゃないだろうなっ! 玄関の鍵は開いていたぞっ…まさか…」

 ああああ、真っ青になって。あんたねえ、私が深夜まで戻らなかった時だって、こんなに慌てたりしなかったでしょう? 赤ん坊のひとりやふたり、姿が消えたからって…なんなのよ、もう。

「…茉莉花?」
 私は静かな声で我が娘の名前を呼ぶと、大きく深呼吸した。

「茉莉花なら、さっき橋の下に捨ててきました」

 こうちゃんは私が言うが早いが、一度脱いだ上着を手にする。

「は、橋かっ! …で、どこの橋だっ…じゃないだろう、おいっ!?」
 ああ、さすがに気付いたか。何だ、つまんない。

「冗談なんか言ってる暇はないだろう? その調子だと知ってるな!? おい、茉莉花はどこにいるんだよっ…!」
 そう言いつつ、タンスの裏やテーブルの下、ゴミ箱の中に冷蔵庫の中まで覗いてる。…こうちゃん、さすがに冷蔵庫はまずいでしょう? 寒いだけじゃなくて窒息するわよ。はっきり言って、そんなところに入れたら逮捕されちゃうわ。

「もう、そんなに大声出して騒がないでよう。今日はご飯食べてきたんでしょう? 早いとこ、お風呂入っちゃえば?」

 私はさっさと話を終わらせて、台所に戻ろうとした。ああ、忙しいのよ。お皿を洗い終わったら、お米を研いで、ついでにお鍋に明日の朝のおみそ汁用の煮干しを入れてお水を張って、やかんにもお水を入れておくの。そうすると寝ぼけまなこでも気がつくとお湯が沸いてるのだ。ほんの一手間なんだけどね、これがあるのとないのでは大違い。
 朝は戦争なんだから、いくら出産のために勤めていた印刷会社を退職したと言っても、忙しいことに変わりはない。朝から晩まで、7人家族の我が家では主婦業に休息はないの。

「花菜っ!!」

 でも、こうちゃんの方はしぶとい。まあ当然のことかも知れないけど、私はむっとしてるからいいのよ。手首をぐぐっと掴まれて、余りの痛さに台所行きは断念した。はあ、たった10メートルないシンクまでの距離が遠いわ。

「茉莉花はどこだっ! どうして隠すんだっ…いい加減にしろよ、おいっ!」

 耳元で怒鳴らなくたって、聞こえてるわよ。だから、何だって言うの。いい加減にして欲しいのはこっちだわ。

「何よっ! もうっ、茉莉花茉莉花ってっ!! いいわよっ、こうちゃんは茉莉花がいればいいんでしょっ! もうふたりでどこまでもご一緒してくださいっ、おんぶひもだってあげるから、明日からばってんおんぶで仕事に行けば? きっと有名になるわよっ!!」

「――は?」

 いきなりの剣幕にさすがに驚いたのだろう。こうちゃんは私の手首を掴んでいた手をぽろっと外した。

「何だ? …どうしたんだよ、急に――」

「き、急に、じゃないもんっ…!」
 私はそれだけ言うと、くるりとこうちゃんに背中を向けた。古めかしい和風の輪っか型の蛍光灯の下、何とも絵にならないふたりだ。築何十年も経った、純和風建築の舞台で、おしゃれに決める方が無理なのかも知れない。ああ、足元の畳がちょっとくたびれてる。居間のはずなのに、行き場をなくしたタンスとか並んでいるのも情けない。

 一気に吐き出したら、すっきりするかと思ったんだけど。何だか、無性に悲しくなっていた。一応、自分で書いたシナリオ通りだ、これでこうちゃんがちょっとは反省してくれると思っていた。…でも、実際のところ、自分のやっていることがあまりにも滑稽で、口惜しくて。

「おい…」

 こうちゃんが少し近づいてくるのが分かる。私はたまらなくなって、逃げるようにばばばっとシンクのところまで走っていった。ステンレスの洗い場のフチを握りしめる。指に力を入れてぐぐっと息を飲み込むと、早口で言った。

「――茉莉花は、千春くんの部屋で寝てるわ。連れてきて、どうぞ心ゆくまで仲良くしてちょうだい。そしたら、お風呂、さっさと使っちゃってね」

 しーんとした静けさが、何とも心地悪い。こうちゃん、早く二階に行けばいいのに。愛娘を迎えに行けばいいのに。私はもうどうしようもなくなって、湯沸かし器のボタンを押すと、左手で目のフチをごしごし拭った。

 

 出産後、しばらくは実家にいた。こうちゃんはみんながびっくりするくらい、頻繁に来てくれて。それがすごく嬉しかった。妊娠中だって、すごく気遣ってくれて。重い荷物とか全部持ってくれて。飲み会も泊まりの仕事も極力断ってくれてたみたいだ。
 申し訳ないくらい嬉しかった。こうやって、妻が大変な時にさりげなくやさしくしてくれるのが素敵だなと思ったりして。やっぱ、こうちゃんと結婚して良かったなとか思った。

 …でもさ、こうちゃんって。気がついてみたら、茉莉花のことばっかり。赤ちゃんなんて、ふにゃふにゃしていて、我が儘で、泣きたいだけ泣いて、飲みたいだけ飲んで、寝たいだけ寝る。抱っこして欲しければ駄々をこねるし、本当にいただけない。なのに、こうちゃんはそんな茉莉花が大好きだ。
 毎日、一生懸命ご飯を作ってお掃除して、洗濯してアイロンかけて。ついでにご近所づきあいに茉莉花の世話までして。時々はあの豪太郎の世話もして。私の方がずっとずっと偉いのに、こうちゃんはそれを忘れている。すごく口惜しい。

 張り合うなって言われればそこまでだ。私だって分かってる。でも、こう毎日毎日、目が覚めた瞬間から、帰宅の第一声まで、全部茉莉花のことだっていうのは頂けない。こうちゃんがそんなに器用な人間じゃないと言うことは分かっているけど、もうちょっと気遣ってくれてもいいんじゃないだろうか?

 実際、私の身体全体から出ているそんなマイナスのオーラを、こうちゃん本人が全然気付かないと言うのに、弟くんたちの方が敏感に反応してるのはどういうこと? 今回の「茉莉花神隠し」を思いついたのだって千春くんだ。たまには赤ん坊を抜きにして、夫婦の会話を楽しめと粋な計らいだった。

 …でもさ、実際、出来ないよ。もう夫婦の会話なんてさ。こうちゃんはすっかり茉莉花のしもべだもん。

 そりゃあさ、茉莉花は可愛いと思うわ。そろそろ3ヶ月で、ふにゃーっと可愛らしく笑うようになって。その汚れのない微笑みは見る人を魅了すると思う。赤ん坊は自分を保護して貰うために、この笑顔を神様から授かったのだという。その通りだろう、天使の微笑みを無下に出来る人なんてまずいない。

 

「…花菜?」

 …え? とっくに部屋を出て行ったとばかり思っていた人の声が、すごく近くでして驚く。

「お湯沸かしてくれない? 紅茶を入れるから…」

「…へ?」
 私は思わず振り向いていた。視界を埋め尽くすこうちゃんのでっかい身体の隙間から、居間のテーブルが見える。そこにちょんと置かれた見慣れてる箱…。

「花菜、何だか疲れてるだろう? だから、夕飯の後、店の前を通りかかったから買ってきた。花菜の好きなミルフィーユ。ラスト1個だったから、あいつらの分はないんだけど…何だったら、全部ひとりで食べていいよ?」

「は…はあ…」
 何とも間の抜けた声を出してしまった。あのスーパーの袋に隠れていて分からなかったわ。どうしてこんな風に食べ物でつろうとするのかしら? 本当におめでたいと思われてるのかなあ、私。

「でもぉ、そんなにおなかすいてないし。別に食べなくてもいいわ、こうちゃん、ひとりでどうぞ」

 ああん、何て可愛くないのかしら、私。こんな時は「嬉しいわ、ありがとう」とか言うものよねえ。せっかく買ってきてくれたものをこんな言い方で突き返して、相当に嫌な奴になってるわ。こうちゃんの方も気付いてると思うのに、大したことないよと言う感じで、勝手に私の前を横切ってやかんに水を汲む。半分くらいで止めて、それを火に掛けた。

「私は…」
 言いかけたら、こうちゃんがそれを遮る。

「じゃあ、花菜はお茶だけね。それでいいだろ、早くそこを片づけて。俺も着替えてくるから」

 こうちゃんは、それだけ言うと二階には上がらないで、和室に入って行く。当たり前みたいなその行為が何だか不思議で、思わず後を追いかけていた。

 

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ *** ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


「…こうちゃん?」
 夫婦の間で遠慮もいらないとは思うけど、一応部屋に入る前には声を掛ける。だって、パンツ一枚だったらちょっと恥ずかしいし。

「ん?」
 こうちゃんは一応、見られる格好をしていた。スーツの上下を脱いで、下だけスエットに履き替えて。上はワイシャツのままだけどネクタイを取って、ボタンを外してるところだった。

 そのまましばらくはぼーっと見ていたけど、そのあと、恥ずかしくなってふすま越しに背中を向けてしまった。

「茉莉花のところ、行けばいいのに。何してるのよ」

 何とも言えない隙間が、何とも言えなくもどかしい。こうちゃんとの距離がくっついたり離れたりする。何気ない態度がものすごく引っかかったりして。それも当たり前の日常なんだけど。こうちゃんが丸見えになった気のするときもあるし、全然分からなくなる時もある。伝える手段は言葉しかないのに、それを上手く操れない自分がいる。

「茉莉花に会いたくて、急いで帰ってきたんでしょ? こうちゃんの足音、弾んでたもん…」

 自分の娘に嫉妬するなんて、本当に情けない。でも…こうちゃん、新婚の頃だってあんなに勢い込んで戻ってこなかったよ? ただいま、の後に私の名前を呼んでくれたことだってなかった。私にしないことを茉莉花にはする、当然みたいに。

 口惜しいなあ、私が奥さんなのに。こうちゃんの一番近くにいなくちゃいけないのに。どうしてこんな風に宙ぶらりんなんだろうね。

「…だって、寝てるんでしょう? じゃあ、仕方ないじゃない」

 ――ずる。

 寄っかかっていたふすまがいきなり開くから、がくっと後ろに倒れかける。背後に立っていたのはもちろんこうちゃんだから、そのまま背中からぼんとぶつかってしまった。

「ね、寝てたっていいじゃない。こうちゃん、いつもはつついて起こすし…」
 いきなり背中からこうちゃんを感じて、どきどきする。ああ、やはりこうちゃんは温かいわ。と言うか、もう5月だし、ちょっと暑いかな?

「いいよ、今は、花菜とふたりでいれば」

 うわ。こうちゃん、腕っ! いきなり回さないでよっ…! ここ、廊下なんですけど、階段のすぐ下なんですけど…みんなが上から降りてきたら、どうするのっ!? あんまりにびっくりして声も出せずに固まっていると、こうちゃんにきゅーっと後ろから抱きすくめられてしまった。すごい、このごろ、こんな体勢あまりないよね。恋人の距離な気がする。

「なななな…、何よっ、いきなり――」
 腕が解けないよ〜どうしたらいいのっ!? 嬉しいけど恥ずかしいよ、突然こんな風になるなんて…。

「いきなり、じゃないよ。いつだって、こういう風にしたいけどさ」
 耳元に息がかかって、ぞくぞくする。こうちゃんが顔を寄せるとちくちくと伸びかけのひげが当たる。ちょっとむずがゆい。

「やっぱり、みんながいるとそれなりに…なあ」
 ずずずっと、身体が後ろに引きずられる。さすがに廊下でのラブシーンは限界だと感じたのだろう。半ば無理矢理に、と言った感じで私は和室の真ん中辺りまで移動していた。

「…花菜」
 特別の響きが私の耳から身体の内側全体に広がっていく。やわらかくて切ない音色が波になって、幾重にも広がっていく。力の抜けた身体が、くるんと180度回った。目の前がこうちゃん。大きな両手が私の輪郭を左右から包み込む。手のひらも温かい、つんつんしていた心が溶け出していく。何だか泣けて来ちゃうくらいに。

「茉莉花のこと、可愛がっても『親馬鹿〜』とかで済ませられるんだけど、これを花菜でやるのはな…身内の前ではちょっと恥ずかしいだろ。…でも、やって欲しい?」

「え…ええっ…!? いいよっ、しなくていいっ!!」
 思い切り、ぶんぶんと首を振ってしまった。ちょっと待ってよ、それはやめて。みんなの前でべたべたするのは…やっぱり恥ずかしい。

「そうか? でも、花菜は今のままだとかなり不服そうだけど…」

「そ、それは…だって…」
 ものには限度というものがあるでしょう? たとえば…親馬鹿するんだってね、もうちょっと…。

「花菜のことも我慢して、茉莉花のことも我慢していたら、辛いだろ? …な?」
 こうちゃんは私の頬をすりすりっと指で辿る。ぎこちなくて、でもやさしくて。顔を寄せるから、前髪が額に当たってくすぐったいよ。鼻の頭をかすって、そのあとそっと私の唇に落ちてくる熱。

 こんなことで直ってしまう機嫌が口惜しい。私って、こんなに単純な人間なのかしら? こうちゃんがちょっとだけ「特別だよ」って態度を示してくれるだけで、もう極上の幸せを感じてしまう。こうちゃんに出逢ってから、私はどんどん変わっていく。

「…ねえ、こうちゃん」
 甘えるみたいにきゅっと抱きついて、そして小さい声で囁く。

「こうちゃん、私のこと、…好きだよね?」

 背中に腕が回る。薄いカットソーから伝わってくる手のひらの熱。

「好きだから、結婚したんだろ?」
 当たり前の返事が嬉しいね。もしも、無意識の反応だとしてもやっぱり嬉しい。こうちゃんの中に私が存在することが幸せだなと思う。いつもいつもそう思う。

 ……。

「…あ」
 あ、やだ、聞こえたかな? 実は晩ご飯もしっかり食べてなかったんだ。おなかがくうっと鳴った。これだけの密着度なら、絶対に聞こえたはず。ああ、もう恥ずかしい…っ!

 こうちゃん、一瞬、くすっと笑った。もう、絶対に聞こえてる。

「お湯、沸いたんじゃないかな? …ケーキ、食べようか?」

 そうやってさりげなく言うから、もうどうしようかと思っちゃう。でもたまにはこういうのもいいかも。今頃、千春くんたち二階で心配してるだろうなあ。あの子たち、私の低気圧に敏感に反応してたから。


 …まあ、いいか。もうちょっと、茉莉花見てて貰おう。たまには、ね。恋人気分でいきたい。おっきくてふたりでつつき合うミルフィーユがなくなるまで…もうちょっとだけ、ね。頼んだよ、可愛い弟くんたち。私は階段を下から見上げて、心の中でそっと呟いた。

 

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ *** ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 お気に入りのペアの紅茶カップ。それから、とっておきのケーキ皿。しまいっぱなしだったけど、今夜は出してみよう、ランチョンマットも敷いて。当たり前のちゃぶ台がちょっとだけ、素敵に見えるように。

 …こうちゃんとの当たり前の時間が、とっておきの色に染まるように。

おしまい☆(030506)



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◇あとがき◇
「え? …さかな?」と、驚かれた皆様、申し訳ございません。ご存じの通りこのシリーズは「さかなの箱」で一応本編を終了しております。ですからこのお話はあくまでも「後日談」…この次があるかどうか分かりません。「箱」のラストのこうちゃんをみれば、彼がまりりんにめろめろになっているのは間違いない。そうしたら花菜美は楽しくないだろうなあ…と考えました。ふふふ、楽しかったです。
2周年記念のアンケートに様々なご意見を頂いておりますが、その中で「慌てふためいているこうちゃんを見たい」というのがいくつかありました。でも、私の中のこうちゃんはどうしてもどーんと構えていて、慌てたりしない。小憎たらしいのですがどうにもならないんです。どうしたら焦った彼が見られるのか、それが私の人生の目標でもあります(大袈裟)。

と言うわけで、まあ「プレ2周年」と言うことで(むりやり)。GWでちょっとお疲れの皆様も、GW明けでちょっとお疲れの皆様も…どうか和んでくださいませ。で、ミルフィーユ…どこかで出てきていたのを覚えていらっしゃいましたか?

2003年5月6日 広瀬もりの