【 キャバクラ in 中洲 】


バンブー君は、私のキャバクラの師匠である。



最近においては、彼の庇護の下になくとも自発的に入店できる(当たり前)のであるが、

やはり師匠がいる時は、彼に従うのが間違えない。

いつまでも欽ちゃんに頭の上がらない小堺一機のようなものである。





そんな師匠が、この日は悔しさを隠せずにいた・・・





いつものように、彼は

悪魔のように繊細に、天使のように大胆に

中洲の案内所で店をチョイスして、交渉も進め、いざ入店の運びになった。



さすがに師匠の嗅覚は素晴らしく、

出てくる女性はカワいい子揃いで、(これは楽しい夜が過ごせそうだ)と

私も正直に期待に胸を躍らせた。



しかし、である。

師匠はあまりご満悦ではない。



当然、達人ゆえに、適所適所でツボを抑えた展開を見せるが

いうなればそれは”職人の流れ作業”

名店の誉れ高き寿司屋の板前が、流れ流れて

回転寿司で寿司を握っているような感じだった。



反面、ズッキーちゃんは、かなり上機嫌。



自分は自分の相手の女の子をいかに笑わせるか、で一生懸命だったので

状況の詳細な把握はできなかったが、パッと見の印象は、そんな感じだった。





店を出て、みんなでネオン街を練り歩きながら、私は尋ねた。




凡作 「バンブー君は、今日はあんまり乗ってなかったね。」









バンブーアウェイはキツいんだよアウェイは!」





彼が言うには、こうである。



キャバクラにおいてはホームアウェイがあり、

当然、女の子からしてみれば、今度また来て指名してくれることを望んでいる。

逆に言えば、観光客に対しては、一時の行楽を提供するに過ぎないから

ま、この場を楽しんでもらえればいい、というスタンスがどうしても出てしまう、と。





ズッキー「俺はかなり盛り上がったけどね♪」





師匠の理論から言えば、ズッキーちゃんが頻繁にメールアドレスの交換したり、

「名刺渡してもいいですかあ」という女の子の言葉も、

お互い”次があるから”というホームの優位がある、ということである。





凡作 & バンブー 「いいなあ・・・」



ズッキー「だろ?えへへ・・・最後に隣にいた子が良かったなあ・・・」





そう言いながら、ふところから数枚の名刺を取り出すズッキーちゃん。

二枚見比べるは『ミキちゃん』『ミカちゃん』という二つの源氏名。



しばらく首をかしげながら、思いついたように携帯電話を取り出して





ズッキー「もしも〜し。さっきまでそこにいた者ですけどお・・・



   赤い服着てた人ってミキちゃんでしたっけ?ミカちゃんでしたっけ?」







絶対、また行くよコイツ・・・

しかも、一週間以内に。





【 長崎へ 】


ズッキーちゃんの家で過ごした夜が明ける。



とりあえずは目的を果たした3人であるからして、

ようやくズッキーちゃんの用意した観光本が役に立つ。



初っ端の言葉と思いっきり矛盾してるが、

この3人は坂本竜馬とゆかりのある土地を訪ねるという”竜馬ツアー”というのも

ま、機会があれば行っている。



京都においては、池田屋跡、薩摩藩邸跡、等。

鹿児島においては、竜馬が日本人として初めて新婚旅行に行ったという霧島、

西郷隆盛の切腹した場所、等。

私は参加できなかったが、バンブー君とズッキーちゃんは、キッチリと

竜馬生誕の地、高知に旅して、鼻血が出るほど史跡を巡ったらしい。



当然、長崎といえば『亀山社中』である(知っとるけ?)。



休日の割には早起きをして、福岡から長崎へ車を飛ばす。

カメラ片手に観光めいたことをしてきたわけであるが、

そこは元来観光ギライな私の一言





「もう石はいいよお・・・」



・・・で、それ以上の史跡めぐりをあきらめたようである。



だって、史跡たって・・・石に文字が書いてあるだけじゃんか!



ちゃんぽんとカステラ食って、長崎を跡にしましたとさ。ちゃんちゃん。




【 旅の終わりに・・・ 】


長崎の帰りには、佐賀県に立ち寄り、素泊まりの温泉につかる。



昼間の露天風呂。流れる川を見ながら、汗ばんだ体をスッキリさせる。

なんだか二日目は、非常に旅チックな旅である。

私は、温泉は好きだから、何の問題もなく上機嫌である。





この3人は大学のゼミで知り合ったわけだが、そのゼミ合宿の時

一緒に風呂に入った先輩が、洗髪中の私の後ろ姿を見て





「凡作!お前の股間から焼き芋がぶら下がってるぞ!」



と叫んで(実話)、それが後の巨根伝説に繋がったのだが、

どうやら、この二人の持ち物も相当なものらしく、

別に私のモノを見たとて、そっちの話に流れるでもなく、その温泉を後にした。



途中、ムリムリ私がパチスロ(これも、私の旅行事)を30分擦って

些少の勝ち金を手にした後は、もう残された目的地は福岡空港しかない。





言葉少なになった男3人を乗せて、車は高速道路を驀進する。

夕暮れに染まった工場団地を横目に見ながら、

(あ〜あ。今回も楽しかったなあ・・・)なんて、少し泣いてみる。

こんな、旅の終わりの切なさも、結構好きだったりする。



そんなことを彼らに話したことでもあるのだろうか?





ズッキー「凡作・・・お前のためにこのCDを持ってきたよ。」



と、車のCDにセットし、再生ボタンをズッキーが押すと

スピーカーからビートルズの『レット・イット・ビー』が流れ出す。





私の旅の終わりには、いつも頭の中で『レット・イット・ビー』が流れている。

そしていつも、心地良い切なさに包まれるのだ・・・

今回は頭の中で流れているのではなく、実際に音楽が流れている。



切ない調べ、窓の外の夕日、バンブーの遠い目、そして

私のためにこの曲を用意するズッキーちゃんの気遣い、いやホントの話・・・





濡れてきたなあ・・・





名物ラーメンを食った後に、福岡空港に入る。

お土産を買う時間を惜しんで、時間まで喫茶店にて他愛もない会話をし、

ついには搭乗口に行かねばならない時間を迎える。





ズッキー「じゃあなあ!頑張れよ!」



(こっちのセリフだよ・・・ズッキー・・・)と少し微笑む。



いつまでも、手を振るズッキー。

先に荷物検査を済まし、ゲートの向こうで振り返るバンブー。

手を振るズッキーに、手を振り返すバンブー。



そして、




凡作 「お互い頑張ろうな!じゃあ!」



と、手を振りながら荷物検査のゲートをくぐり

相変わらずけたたましくブザーが鳴る・・・



いつもの展開だ。




【 エピローグ 】


バンブー「あのさあ・・・」



凡作 「何だよ?」



バンブー「俺さあ・・・」



ズッキー「何だよ?」





バンブー「今度、結婚すんだよねえ・・・」





凡作 & ズッキー「へえ・・・・」























凡作 & ズッキー「ええっつ!」





凡作 「いつだよ!いつ結婚すんだよ!」



バンブー「今年の●月●日。」



凡作 俺の誕生日じゃんかよ!」





ズッキー「何処で式挙げるんだよ?」



バンブー「・・・ハワイ」



ズッキー「ワイハーかよっつ!」







ということで・・・・・・



次回の【 地球の歩き方 〜諸国漫遊 風俗紀行〜 】は、

冗談抜きにハワイになると思います。



いや〜。ホントに私も日本で納まりがつかなくなってきたなあ・・・

っつーか、それ以前にバンブー君・・・



この旅行自体、歴史上から抹殺したほうが良くねーか?


(2002/8/17)

中洲。キャバクラ検索中の案内所でのバンブー&ズッキー


ちなみに左どなりのお姉さんは案内所の人。

「アナタが相手してくれるなら行ってもいい・・・」よく台湾式マッサージの勧誘にある図式ですな。


ぶわっはっは!君達は終戦直後の『少年マガジン』の表紙かっつ!

・・・って、自分のことは置いといて。僕の顔を見たければ、メールでコンタクトを取るがいい・・・


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