Puppy Panics !


 

その六  青島君と子犬(2)

 

 

 全てがスローモーションの映像の様にはっきりと見えていた。

 引き金を引かれた拳銃から飛び出した弾丸が室井さんの心臓に向かって飛び出した。

 拳銃を撃ってしまった事に驚く猿渡の顔。

 呆然としている猫山。

 そして立ち尽くす室井さん。

 その全てが、はっきりと見えていた。

『運命は…変えられない』

 死神の声が蘇る。

 違う!

 運命は変えられる!

 信じていれば。

 願っていれば。

 きっとこの手で運命は変える事が出来るんだ!

 

 痛む右足を引き摺って、室井さんの元へ走る。

 室井さんは俺が助ける。

 絶対に助けてみせる!

 だけど、間に合わない。

 でも。

 やっぱり駄目なのか?

 一度決まった運命を変えることは出来な…え?

 弾丸が、止まってる…?

「青島さんっ、急いでください!そんなに持ちませんっ!!」

 死神っ!

 そっか!弾丸を止めたのはあいつの仕業か!

「早くしてください!」

 わかった!!

 室井さんまでの残りの距離を一気に縮める。

 全力で走ってきた勢いのまま、渾身の力をこめて室井さんに体当たりした。

 予想していなかった衝撃に室井さんの体が大きく揺れ、弾丸の軌道からそらされた。

 続いて感じる衝撃。

 

「ぎゃんっ!」

 強すぎる痛みと共に、熱い塊が身体を突き抜けて行くのを感じた。

 …そうか、俺撃たれたんだ。

「しゅんさく!」

 良かった。室井さんは無事だね。

 ほらみろ。ちゃんと運命は変えられたじゃないか。何事もやって見ないと判らないって言ったろう?

 信じていれば、奇跡は必ず起こせるんだよ。

 いつだって、きっと…。

 

 

「しゅんさく!しっかりしろっ!」

 血に染まった子犬の身体を室井さんが抱いている。

 それを見下ろしてるって事は、どうやら俺は撃たれた衝撃で、子犬の身体から外に出てしまったらしい。

 ごめんな。お前の身体傷付けちゃったな。

「死ぬなっ!」

 室井さんの声が響く。

 同じ場面を前にも見たような気がする。

 でも、あの時は子犬じゃなくて俺の身体だったんだよね。 

 …また同じ思いさせちゃったな。

 またあんな声で俺を呼ぶのかなぁ。

 う〜ん。でも、呼んで欲しいな。

 何度も何度も俺を呼んでよ。

 今度は俺もあんたに応えられるから。

 だから、ね。

 そんなに泣かないでよね、室井さん…。

 

「……!?あおしま?」

 室井さんの目が、宙に浮いている俺の魂を見詰めている。

 俺はその目に誘われるように手を伸ばす。室井さんの手も同じように伸ばされる。

 触れるはずのない手と手が触れ合った。

 抱いている子犬の身体が、まるで空気に溶け込む様に消えていく。

   

 俺の意識もゆっくりと消えていく。

 室井さんが何かを言っている。

 ごめんね。もう聞こえない。

 俺の声も届かないだろう。でも、これだけは伝えたい。

「愛してるよ…室井さん」

 

 俺の意識はそこで完全に消えてしまった。

つづく


長かったお話もそろそろ終わり。

はたして青島君の想いは朴念仁・室井氏に

通じるのでしょうか!?

そして青島君の運命は!?

二人の愛は魂を越えて…なんちゃって(意味不明)