Puppy Panics !
その三 猿と猫と子犬(2)
カチンっと、玄関の鍵が開く音で目が覚める。
どうやらまた知らない間に眠ちゃってたみたいだ。
今何時だろう?
枕もとの目覚まし時計に目をやれば、時刻は3時を大きく過ぎていた。
え!?俺そんなに寝てたの?
この身体になってから眠ってばっかりだよなぁ。すっかり眠り癖がついたような気がする。
これは元に戻った時が大変だぞ。
眠気覚ましに大きく伸びをしてから飛び降りる。
それにしても、室井さん急に帰ってきて如何したんだろう?
また何か忘れ物でもしたのかな?
入ってきた時と同じように、隙間を通って部屋の外に出ようとした時だった。
……?
聞きなれない声が聞こえる。
それにこの足音、二人…?
どちらも室井さんの足音じゃない。
……誰だ?
足音を忍ばせて、そっと近付いて見る。
いた!
それにこの匂い!
あいつだっ!!
何時かの公園に居た挙動不審者。室井さんの荷物に手を出しかけていた猫背の男。
でも、そいつが如何して室井さんの部屋に?
それに今日はもう一人。猫背の男より更に一回り小さな男。
あの男は初めて見るぞ。
「……。」
「………」
二人が何か喋りながら何かを探している。
引出しという引出しを全部開けて。キッチンのほうも食器棚の奥の方まで探って。
様子から言えば、どうやら空巣みたいだけど…。
でも何か変だ。どうやら金目の物を探しているわけではないらしい。その証拠に、小男の足元に
室井さんの預金通帳と印鑑が転がっている。
でも、それじゃ一体何を…?
それにこいつ等何者なんだ?
「…駄目だよ、見つからないよ。やっぱりもう、警察かどっかに届けちゃったんじゃないかなぁ」
「だったら、ブツもとっくに発見されてるはずだろうが!それがまだだってことは、あれはまだこの家の
どっかにあるって事なんだよ」
「でもよぉ…。猿兄ぃ…」
「その呼び方やめろって言ったろうが!俺の名は猿渡だっ!さ・る・わ・た・り!わかったか、猫っ!」
「……僕も猫じゃなくって、猫山って名前があるんだけど…」
……。
自己紹介、有難う。
「とにかくっ!ぐだぐだ言ってねぇで、さっさとてぇ動かしやがれ!」
「でもぉ…」
「デモもだってねぇ!大体こうなったのも、お前があんな所に隠すからこんな事になったんじゃないか!」
「だって、あん時は周りにお巡りさんがたくさんいて、取引どころじゃなかったし…。第一、僕が持って
るとサツに調べられた時に困るから隠せって言ったの猿兄だよ?」
「だ、だからって、見ず知らずの人間の荷物に隠すことはねぇだろうが。そいつの住んでる場所探す
のにどれだけ苦労したと思うんだよ」
「わ、悪かったよ」
「……まぁ、もういいから早く探そうぜ。早く見つけねぇと取引相手に何言われるか…」
……。
状況説明も、有難う。
つまり。
あの時室井さんの荷物に手を出していたのが、この猫背の猫山って男で。
荷物を盗もうとしてたわけじゃ無くて、実は『取引』に必要な何か重要な物を荷物の中に隠したって
ことか。
警察が周りに居たって事は、何処からか取引の情報が漏れたんだな。それでこいつ等もマークされ
て、その取引に必要な物を持ってるとヤバイってんで室井さんの荷物に隠したって訳だね。
なるほど。…でも、そんな物、荷物の中にあったかな?
あれ?そう言えばあの時…。
思い出した!
あの時ソファーの下に転がっていったあれだ!
あれがきっと奴等の探してる物だ。
そうと解かれば、何時までもこいつ等に家捜しさせるわけにはいかないよな。なんとかこいつ等を
逮捕して…って。
ふと思ったけど、こいつ等、今自分が不法侵入してるのが警視庁のキャリアの部屋だって知ってる
んだろうか?
もし知らないとしたら、結構…マヌケだぞ。
何はともかく、逮捕だっ!
と言っても、今の俺は手錠も警察手帳も持ってない只の子犬なわけで。こんな俺が今出来る事とい
えば…。
寝室を飛び出してリビングに飛びこむ。
そして。
「うーっ!わんっ、わんわんわんわんっ!!」
吠えるっ!騒ぐっ!!
これだけっ!!
…ちょっと情けないかも。
でも、こうやって騒げばきっと誰か非番の奴が覗きに来る筈。
なんてったってここは警察官舎。
周りは頼もしい警察官達ばかり…のはず。
…たぶん。
それに万が一逃がしたとしても、証拠はばっちり残っている。
逮捕するのは簡単だろう。
呆れた事にこの二人、人の家に盗みに入っているというのに手袋してないんだもんなぁ。もうそこら
中に指紋ベッタベタ。
窃盗の心得がなってないんだよね。やれやれ。
「わんわんわんわんわんわんわんっ!!」
「な、なんだ!?」
「猿兄ぃ!犬だ、犬がいるっ!」
「なんだとぉっ!俺は犬が苦手なんだっ!」
あ、ラッキー。
そっか、こいつは犬嫌いなのかぁ。
それじゃ、遠慮無く!
「う、うわっ!こっちに来るなっ!!」
「猿兄ぃ、しっかり!」
「猫っ!てめぇ見てないで何とかしやがれ!!」
「えぇっ、やだよ!僕も犬は嫌いなんだもん」
成る程ね。それはますます好都合じゃない。
俺はますます大声を上げて、奴らを追いまわす。
「こ、こらっ!こっちに来るなぁ!」
来るなって言われてもね。
「助けて――――っ!」
駄目。助けてあげないっ!
しかし、小さな子犬に追いまわされて悲鳴を上げてる男が二人。これって本気で情けない。
自分でやっててなんだけど、もうちょっと緊迫した雰囲気とか行き詰まる展開とかにならないのかなぁ。
この二人相手にそれは…無理か。
…あ〜あ、どうでも良いけど部屋ん中ぐちゃぐちゃだよ。
もう、後片付け大変なんだからね!
それに、また室井さんにしかられたら如何するんだよ。
その時は責任とってよね!
その時だった。
つづく
あああ〜またしても妙なところで…。
どうもこの章はキリのいいところが無くってダメですね;;
さて!物語中盤になってようやく出てきた二人組!
実はこの二人は、私の密かなお気に入りだったりします(^_^;)
モデルは某有名アニメの脇役3人組の内の二人。
これで女性リーダー(女王様?)がいれば完璧なんですが…。
さて?モデルとなったアニメはなんでしょう??